学生最後の箱根駅伝でも気負うことはない。国士舘大の主将を務める鼡田章宏は、地に足をつけて走ることが、目標達成への近道だと信じている。
写真上=主将として、自らの走りでチームを引っ張る決意を固める鼡田
撮影/田中慎一郎(陸上競技マガジン)
「淡々と自分のペースで刻むことが大事だと思っています。それが最後までタスキをつなげことにつながります」
入学してから3年連続で繰り上げスタートの悔しさを味わってきた。10人のうちひとりでもミスすれば、取り返しはつかない。前回は2区でケニア人留学生のライモイ・ヴィンセント(2年)が8人を抜く爆発的な走りを見せたものの、10区の手前で涙をのんでいる。だからこそ、主将として一丸となって戦うことを強調する。
「全員が自分の走りをしないといけません。ひとりでも目立ってやるとか、自分の力以上のものを出してやろうと思えばダメです」
2年連続で5区を任され、前回は区間12位と奮起している本人も私欲は一切捨てている。今季も山上りに意欲を燃やしているが、それは区間へのこだわりではなく、あくまでチームにとって、最善の選択だからだ。
「僕が5区を走ったほうが、経験を生かせると思います。それが、みんなのためになる。それだけです」
タフで厳しいコースではあるが、あくまでマイペースを貫く鼡田流の走り方があるという。
「周りの走りは気にしないこと。自分が設定したタイムで刻んでいけばいい。僕は無理をしないので、みんながきつくなる後半にも力が残っているんだと思います。そうすれば、落ちてくる大学を抜けますから」
もちろん、それだけではない。後半の粘りは地道な練習で培ったもの。厳しい勾配でも頼りになる主将の脚は止まらない。10000mのタイムもチーム内では日本人トップ。新チームが発足してから周囲に気を配りながら、自らも追い込んできた。思うように後輩たちを引っ張れずに悩んだ時期もあったが、同期の仲間に支えられた。練習では頼もしい後輩たちにも助けられた。箱根を前にして、これまでにないほどチームの雰囲気はいいという。
「ミーティングでは僕から何も言わなくていいようになりました。一人ひとりがやるべきことをやってくれています」
今回こそは1月3日の大手町で笑って終わる--。鼡田は静かに闘志を燃やしている。
ねずみだ・あきひろ◎1997年4月17日生まれ、福島県出身。常葉中→田村高(福島。自己ベスト10000m29分28秒17(大4)、ハーフマラソン1時間04分09秒(大3)。
文/杉園昌之
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