6試合を戦った鹿児島大会では1試合平均失点が1.5と主戦の田中瞬太郎を中心にした守備力が光る。加えて準々決勝の大島戦は9回に3点差をひっくり返してサヨナラ勝ち(4対3)を収めると、そこから3試合連続の逆転勝ちで2年ぶり5回目の甲子園出場を決めた。掲げる「守備からリズムをつくる粘りの野球」を実践するにあたっての一つの取り組みが「座禅」だ。
「座禅」のきっかけは2016年秋の鹿児島大会準決勝で鹿児島実に4対5で敗退したことだった。5失点中4失点はエラーが絡んだもので、その敗戦に「精神的な弱さ」を見た小田大介監督はメンタル強化の一環で取り入れることを決めた。メンタルが左右する要素も大きい野球というスポーツにおいて、守備にもかかわる精神状態のあり方を説く。
写真/ベースボール・クリニック
「高校野球はトーナメントの一発勝負。試合を優位に展開するためには相手より先に点を取るに越したことはありません。逆に考えれば、相手に簡単に先制を許してしまうような守備力しか有していないようでは、勝つ確率は上がりません。それが先制点の重要性として語られる部分だと考えています。だからこそ、試合の入りが重要になります。
その試合の入りに最も気を使うのが投手で、立ち上がりはどれほどレベルの高い投手であっても難しいものだと思います。重要性を知るからこそ意識する部分でもあるのですが、いかに普段どおりの精神状態で投げられるかが問われるところです。守備でも『取れるアウトを確実に取ることが大事』だとされますが、普段どおりの精神状態でいられなくなったときにミスが起こります」
「座禅」は常に普段どおりの精神状態でプレーするために必要なものと考えている。17年の春季大会前、いちき串木野市の冠嶽山鎮國寺で座禅を組んだ。約1時間弱、正座をして呼吸法に集中し、「覚悟を決める」。これが「社会環境の変化で軽視しがちなガマンや忍耐を学び直す、絶好の機会になった」という。
初めて座禅を経験した選手からも「強くなれた気がします」という声が聞かれ、それから継続して普段の練習前や試合前に数分間、座禅を組む。選手の中には試合の5回のインターバルなどにも自ら座禅を組んで精神統一している選手が現れた。
「さまざまなことが起こり得る野球の試合では、中には自分たちの力ではどうすることもできない不測の事態に出くわすこともあります。そうしたとき、過去を顧みず、目の前のことに集中して覚悟を決める。そうした心の持ち方を学んでいるようです」
8月2日の甲子園練習前にも座禅を組み精神統一を図った神村学園ナイン。大会初日の8月6日、第2試合で同じ九州勢の佐賀北(佐賀)と対戦する。
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