箱根駅伝から1カ月、学生長距離界はすでに来季に向け始動している。1月20日に行われた全国都道府県対抗男子駅伝では福島が初優勝。その原動力ともなった東洋大・相澤晃と明大・阿部弘輝の二人は、学生長距離界をけん引する存在となりそうだ。
※写真上=全国都道府県対抗男子駅伝を制した福島チーム。相澤(後列右端)と阿部(前列右から2人目)は学生長距離界の中心となりそうだ(写真/太田裕史・陸上競技マガジン)
第24回全国都道府県対抗男子駅伝は、福島県チームが東北勢として初めて優勝を果たした。
福島県チームの社会人・大学生区間の3区、7区を担ったのが、今年の箱根駅伝でも活躍した阿部弘輝(明大)と相澤晃(東洋大)の2人だ。
「今回は優勝できるチャンス。一般区間を走る僕たちが引っ張らないと優勝できないと思ったので、“頑張って優勝しようぜ”とお互いに励ましていました」と相澤は振り返る。
3区の阿部でトップに立ち、4区の横田俊吾(学法石川高3年)でリードを広げて、以降は逃げ切るというのが、福島県チームの安西秀幸監督(安西商会)が思い描いていた青写真。その通りのレース運びとはいかなかったが、7区の相澤が逆転劇を演じた。
初優勝の快挙にも、この駅伝での阿部と相澤の走りは対照的だった。
最長区間の7区を担った相澤は、箱根駅伝4区区間新の勢いそのままに、区間記録にあと5秒に迫る力走を見せた。区間2位の服部勇馬にも36秒の大差を付けた。
レース運びも見事で、同時にスタートした長野県の中谷雄飛(早大)を7㎞過ぎに引き離すと、7.5㎞ではついに群馬県の牧良輔(SUBARU)を捕らえ、一気に突き放した。何段階ものスパートは圧巻だった。
「38分を切れればいいと思っていたので、目標よりもだいぶ速く、手応えをつかめました。優秀選手賞もいただいたので、その名に恥じないように、大学長距離界だけでなくて、実業団選手も含めて、しっかり勝負できるように頑張っていかなければいけないなと思います」
と相澤自身にとっても会心のレースだった。
一方、阿部は、5位でタスキを受けると、2㎞過ぎに先頭集団に追いついたが、3㎞過ぎに後方から追い上げてきた塩尻和也(群馬県、順大)にかわされてからは、じわりじわりと後退した。
なんとか粘り阿部は7位に踏みとどまったが、区間12位は、10000m27分台の実力者にとっては物足りないものに映った。
「疲労困憊で、前に出たときに体が全然動いていなかった。力を出し切るという能力が、僕には足りていなかったと思います。素直に今の実力を認めて、トラックシーズンに向けてタメを作りたい」
チームの優勝は素直に喜んでいたものの、阿部の口からは、自身の走りについての反省ばかりがついて出た。
ロードが得意の相澤は最終7区で逆転し、福島を初優勝へと導いた(写真/太田裕史・陸上競技マガジン)
彼らの今回の結果は、それぞれのランナーとしてのタイプが、結果に反映されたと言えるかもしれない。
ロードを得意とする相澤は、箱根後も5日間のオフを挟んで、この大会に向けてしっかり練習を積むことができたという。
一方の阿部は、トラックで力を発揮するタイプ。3区の8.5㎞という距離は、阿部には苦ではない距離だが、箱根後は練習でも「全然動かなかった」と言うように、かなり疲労が蓄積していた。11月に10000mで27分台のタイムを狙いに行って成し遂げると、箱根駅伝では、チームの出遅れを取り戻そうと3区で快走した。だが、箱根のレース中に両脚を攣っており、疲労の兆候はこの時からあった。「気持ちでカバーしました」と阿部は言うが、かなりのタフさが要求される連戦だった。
とはいえ、タイプの異なるこの2人は、学生長距離界の新シーズンの中心になるだろう。
今年はユニバーシアードが開催されるが、相澤は学生ハーフに出場予定で、ハーフマラソンで同大会の日本代表を目指す。阿部は、次戦は4月の金栗記念で5000mに出場予定で、トラックでユニバーシアード出場を目標に掲げる。
また、ともに新チームでは主将の重責を担うことになる。学法石川高出身の選手では他にも、中大の田母神、日体大の小松力歩も、それぞれ長距離ブロックの主将に就任する。
「“ガクセキ”の同期の活躍は、良い刺激になりますし、意識します。やるべきことは変わりませんが、個人として負けられません」とは阿部。
昨年末の全国高校駅伝で学法石川高は3位入賞を果たしたが、もともとは、阿部、相澤らが最強世代と呼ばれた学年だった。大学ラストイヤーを迎えた学法石川高OB勢が、学生長距離界を盛り上げてくれそうだ。
文/和田悟志
トラックを得意とする阿部(中央)は10000mでユニバーシアード出場を目指す(写真/太田裕史・陸上競技マガジン)
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