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2018-11-30

福岡国際マラソン展望 世界の強豪に日本トップ選手が挑む!

12月2日に福岡・平和台陸上競技場発着で行われる第72回福岡国際マラソンは、東京五輪の代表選考のかかったマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズの今季第2戦目となる。世界から強豪が集まるなか、前・マラソン日本記録保持者の設楽悠太(Honda)ら日本のトップがどういう走りを見せるのか。

※写真上=12月2日に行われた共同記者会見に出席した設楽(後列左端)ら選手たち(写真・陸上競技マガジン/寺田辰朗)

記録、勝負とともにMGC出場権の行方にも注目

 今年も福岡らしく、世界のトップ選手たちが来日した。
 リオ五輪4位のG・ゲブレスラシエ(エリトリア)や15年北京世界選手権銀メダルのI・ツェガエ(エチオピア)ら、オリンピックや世界選手権で実績十分の選手たちが出場する。ツェガエは2時間4分台、V・キプルト(ケニア)は2時間5分台と、大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)が10月に出した日本記録(2時間05分50秒)を上回るタイムを持つ。
 レベルの高い海外勢に日本勢がどう挑むかが焦点だ。特に今年2月の東京マラソンで2時間06分11秒と、当時の日本記録をマークした設楽悠太(Honda)の走りが注目される。
 日本記録更新は16年ぶり。タイムに話題が集中したのはやむをえなかったが、設楽は並みいる世界レベルの選手のなかで2位に食い込んだ。本人も記録より勝負を重視して走ったという。
 ペースメーカーが先導するマラソンなら、勝負に集中してもタイムは出る。逆にいえば、タイムを出せば順位もついてくる。最終決定は明日(12月1日)だが、ペースメーカーは1km3分00秒、5km15分00秒のペース設定になる見込みだ。そのペースを最後まで維持してフィニッシュすれば2時間06分36秒になる。設楽はペースメーカーが外れた後に勝負を仕掛けられれば、自己記録更新も可能になる。
 福岡にしては出場有力選手の数が多いことも、今回の特徴だ。自国開催の東京五輪にマラソンで出場する意欲を持つ選手が増えたからだろう。最重要選考会で代表が2人決まるMGC(19年9月15日開催)の出場権を取りたい選手にとって、3月に再挑戦ができる福岡は時期的にもいい。これまではニューイヤー駅伝を走ってマラソンに向かう選手が多かったが、東京五輪へ向けたMGCシステムが行われていることで福岡に出たいと考える選手が多くなった。
 2時間8分台を持つのは野口拓也(コニカミノルタ)、川内優輝(埼玉県庁)、中本健太郎(安川電機)、佐々木悟(旭化成)で、4人とも30代。中本はオリンピックと世界選手権で入賞経験もある。川内は今年4月の寒さが厳しかったボストンで優勝。ワールド・マラソン・メジャーズの創設後では初の日本人優勝者になった。
 特に川内のレース展開に注目したい。福岡では30km以前に集団から後れるが、終盤で追い上げて順位を上げるパターンが多い。今年は30kmまで集団につきたいと意欲を見せている。
 8月のアジア大会で4位の園田隼(黒崎播磨)も29歳だが、元気の良い走りが持ち味。積極的なレース展開で沿道を沸かせるか。
 園田は2月の別府大分、荻野皓平(富士通)は2月の東京、福田穣(西鉄)は7月のゴールドコーストと、20代後半の3人は今年初めて2時間9分台をマークした。前回日本人3位の竹ノ内佳樹(NTT西日本)も、2時間10分01秒とサブテンに迫っている。
 4人の充実ぶりから2時間8分台も期待できそうだ。
 学生駅伝で注目された選手も多数出場する。
 服部勇馬(トヨタ自動車)は招待選手だが、一般参加で窪田忍(トヨタ自動車)、神野大地(セルソース)、市田孝(旭化成)、山岸宏貴(GMOアスリーツ)八木勇樹(YAGI RT)らが福岡を走る。服部は2時間9分台を出しているが、他の選手はまだマラソンで成功といえる走りができていない。窪田、市田は10000mで27分台、神野はハーフマラソンで1時間1分台と成功しているが、マラソンでも結果を出したい。
 また、駒大で同級生だった深津卓也(旭化成)と宇賀地強(コニカミノルタ)が、初めて同じマラソンを走る。深津はマラソンで成功と失敗を繰り返しながらも、長期的に見れば成長している。16年には2時間9分台もマークした。宇賀地は右脚大腿部の違和感に悩まされたが、18年シーズンは復調。東日本実業団駅伝4区で区間賞を獲得し、区間新もマークした。4年前の福岡で出した2時間10分50秒の自己記録を更新してくるだろう。31歳になった2人の走りにも注目したい。
 今大会でMGC出場資格を得るには、日本人3位以内なら2時間11分以内、日本人6位以内なら2時間10分00秒以内、7位以下なら2時間08分30秒以内の記録が必要になる。設楽、川内、中本、園田、竹ノ内の5人はすでに出場権を得ているが、他の選手は今大会でMGC出場資格を狙ってくる。
 上記条件以外でも、2大会平均タイムを2時間11分00秒以内にできればMGC出場資格を得られる。主な選手のMGC出場資格獲得に必要なタイムは以下の通りだ。
荻野皓平・2時間12分24秒
福田 穣・2時間12分08秒
田中飛鳥・2時間11分47秒
山岸宏貴・2時間11分46秒
野口拓也・2時間11分45秒
神野大地・2時間11分42秒
服部勇馬・2時間11分34秒
濱崎達規・2時間10分34秒
高久 龍・2時間10分15秒
深津卓也・2時間09分56秒
佐々木悟・2時間09分20秒

共同記者会見コメント

設楽悠太
「(日本記録は)正直、厳しいと思っています。それも頭に入れて走りますが、まずは大迫選手が昨年出した2時間07分19秒をターゲットタイムにしたい。集団で走るのは好きではありませんから、30kmまでは我慢するしかありません。そこを上手く走って、30km以降は他の選手たちも利用させてもらって走りたい」
川内優輝
「10月はコンディションが最悪で2本ともひどい結果でしたが、そこから調子が上がってきています。30kmでペースメーカーが外れるまでは、先頭集団についていくことに集中します。他の選手にとっては(30kmまでつくことは)当たり前のことですが、私が30kmまでついて行けたら順位も記録もついてくる。私が30km以降に失速することはありません」
服部勇馬
「4度目のマラソンですが、これまでにないくらいしっかり練習ができました。スタートラインに立てることに喜びがありますし、自信をもってスタートできたら自ずと結果はついてくる。目標順位やタイムは決めていませんが、自分の力を100%出してゴールしたい」
園田隼
「アジア大会でもメダルを取ることができませんでしたし、目標は順位をしっかりと取るレースをすること。いつも通りの練習をしてきましたが、40km走の最後10kmもしっかり上げられましたし、疲労感も違います。(20℃以上が予想されている)気温は気にせず、目の前で起きていることに対応していきます」
文/寺田辰朗

勝負にこだわる設楽がどんな走りを見せるのか(写真・陸上競技マガジン/寺田辰朗)

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