(タイトル)
6月10日、神奈川・平塚で行われた日本学生個人選手権の男子100m準決勝、追い風参考(+4.5)の記録ながら9秒94という、電気計時では国内初となる9秒台をマークして、一躍注目を集めた多田修平(関学大3年)。決勝でも公認で世界選手権標準記録を突破する10秒08(+1.9)を記録。大会前に関学大の林直也コーチは「10秒0台を出す力は持っている」と話していたが、それを証明する形となった。
多田の最大の魅力は20mからの加速にある。日本学生個人選手権の2週間前に行われたゴールデングランプリ川崎では、隣のレーンを走ったアテネ五輪男子100m金メダリストのジャスティン・ガトリン(アメリカ)から60~70m付近までリードを奪い、ガトリンが「素晴らしいスタートを切った」と称賛したほどだった。
こうなると、“本当の”9秒台を期待したくなってしまうのはマスコミの悪い癖だが、その可能性はどれくらいあるのだろうか。
多田のフォームの特長は、脚がきれいに縦回転するところだと林コーチは解説する。力をロスすることなく推進力に変換できるため、多田の最大の魅力である20m付近からの爆発的な加速力に繋がるのだ。一方で課題はトップスピードを迎えた60~70m以降の減速をいかに抑えるか。そのためには筋力を付けることと、フォームの改良が必要になる。
多田自身、そして林コーチ共に感じているのが、「腿を上げ過ぎている」ということだ。「腿を高く上げれば、足を高いところから下ろすことになるので、地面からの反発を得やすく、スピードを出せます。しかし、腿を上げた分だけピッチが落ちてしまう。スピードに乗った後半は腿の上げ方を低くして脚をさばいていった方が良いかもしれない」と、林コーチは日本学生個人選手権での多田の走りを見て語った。
大会前に、林コーチが興味深いデータを示してくれていた。日本の現役トップである桐生祥秀(東洋大4年)と多田の100mを走ったときの歩数は、共に48歩だというのだ。ストライドは同じだから、差がつくのはピッチの部分。まずはそこを埋めていくことで9秒台と日本一へと近づいていく。
しかし、フォームの改良となれば一朝一夕でできることではない。まずは6月23日から開催される日本選手権でリオ五輪4×100mR銀メダリストの桐生や山縣亮太(セイコー)、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)にどれだけ通用するのか。そして最大3枚のロンドン世界選手権への切符を手にすることができるのか、注目だ。
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