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2020-09-27

【相撲】編集部が選ぶ秋場所千秋楽の一番

緊張感が拭えない大一番で、正代が翔猿を突き落としで降し初優勝を決めた

正代(突き落とし)翔猿

 協会関係者から新たなコロナ感染者を出さずに、千秋楽を迎えることができた。結びの一番前で横綱不在の場所を大いに盛り上げた正代と翔猿の直接対決。正代が勝てばすんなり優勝、翔猿が勝てば決定戦となる。

 仕切りを繰り返す両者。正代は緊張の色が隠せない。翔猿は気合の入った表情。軍配が返り立ち上がると、正代にいつもの踏み込みがない。棒立ちのまま翔猿に下から押し上げられ土俵際まで後退。何とか残すも、慌てて前に出ていくところをイナされて泳ぎ、モロ差しを許す。土俵に詰まり絶体絶命の正代だが、懸命に粘って右から突き落として逆転。正代の初優勝が決まった。

「優勝は信じられないです。相撲人生で一番緊張しました。相手が新入幕でやりづらさがあった。体がよく反応してくれました」と汗をぬぐう正代。

 熊本県出身として初めての優勝。母校の東農大からも初優勝だ。「地元の応援とか大学の先生方の応援が力になりました」と目を潤ませる。

 正代の優勝決定後、審判部は八角理事長に大関昇進を諮る臨時理事会の招集を要請。正代の新大関昇進が事実上決まった。「大関ですか。実感がわかないですね。入門したときから憧れの地位ですから信じられないです」と正代。

 直近3場所の合計は32勝だが、今場所の相撲内容なら文句はないだろう。貴景勝の押しに下がらず、朝乃山を吹っ飛ばした地力なら、十分にやっていける。今後は3大関で次の横綱を競ってもらいたい。

 最後に今場所の三賞についてだが、受賞したのは正代と翔猿の2人だけだった。14日目まで優勝の可能性があった若隆景、筆頭で10勝して来場所新関脇が濃厚な隆の勝など、相撲内容がよかっただけにあげてほしかった。特に未受賞の力士には厳しくしないでほしい。8枚目で11勝の若隆景は技能でも敢闘でも、どちらでもよかったはずだ。

文=山口亜土

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