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2020-09-28

衝撃! チャーロ弟、ボディジャブで一撃KO

最後は痛烈KO。チャーロ弟(右)が王座統一(Amanda Westcott/SHOWTIME)

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プロボクシングはパンデミックに負けない。9月26日(日本時間27日)、世界中で好カードが組まれた。なかでも、アメリカ・コネチカット州アンキャスビルで行われたスーパーウェルター級のWBAスーパー。WBC、IBF王座統一戦では、ジャーメル・チャーロ(アメリカ)がボディに打ち込んだ左ジャブ一撃でKOする衝撃の幕切れとなった。

3度倒しても危機一髪の勝利:チャーロ弟

 WBCのジャーメル・チャーロとWBAスーパー・IBFのジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)のチャンピオン対決は、結果としてチャーロが3度のダウンを奪ったが、決して一方的ではなかった。評価の高かったジュリアン・ウィリアムス(アメリカ)を番狂わせのKOに破った噂の新鋭ロサリオのパンチは見るからに破壊的だったのだ。

 初回、左フックをよけそこねてバランスを崩したロサリオが倒れ、レフェリーはカウントをとったが、このときはダメージはない。2回から、ロサリオのかけてくる強烈なプレッシャーと、左フック、右クロスにチャーロが追い立てられる。逃げ切れないとみると、すかさず抱え込みに出る。いかにも見栄えは悪かった。

 流れが一変するのは、ロサリオの攻撃がややラフになってきた5回終盤、チャーロの左フックがクリーンヒット。ドミニカ人の足もとが大きく震えて倒れこむ。立ち上がったが、ロサリオはグラグラで、何とか終了ゴングに逃げ込んだ。

 チャーロは7回、再び慎重に戦ったが、8回開始早々のエンディングはすさまじい。ボディに送り込んだ左ジャブ一撃だ。仰向けに倒れこんだロサリオは腹を波打たせてけいれんを起こしている。レフェリーはそのままカウントアウトした。

「私が単なるパンチャーではなく、ビッグパンチャーであることを証明できたと思う。コーチの言うとおりに戦えたと思う」と語ったチャーロは、「ロサリオが回復して、カムバックしてくることを願うよ」と敗者を気遣っていた。

強烈な右で挑戦者を弾き飛ばすチャーロ兄(右)(Leo Wilson/Premier Boxing Champions)
強烈な右で挑戦者を弾き飛ばすチャーロ兄(右)(Leo Wilson/Premier Boxing Champions)

難敵に快勝のチャーロ兄は統一戦を望む

 ジャーメルの双子の兄、2階級制覇で30戦全勝(22KO)のジャモール・チャーロ(アメリカ)は、ここまで慎重なマッチメイクが目立っていたが、この日のWBAミドル級タイトル4度目の防衛戦に迎えた相手は難敵だ。セルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)はダニエル・ジェイコブス(アメリカ)、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)に敗れているとはいえ、いずれも僅差判定によるもの。老練な技巧派ファイターで、ハイテンポでバラエティに富む攻撃力とタフネスを併せ持つ。ビッグマッチを望むチャーロにとっては、大事なテストマッチと言えた、

 そして「ゲームプランどおりに戦えた」と言うように、試合はほぼ、チャーロのペースで進行する。ロングレンジからのジャブで、小柄な挑戦者の接近を阻んだ。3回には鋭い左フックで、相手をダウン寸前に陥れる。デレビャンチェンコも5回からようやくピッチが上がり、チャーロを追い込んだが、長続きはしない。急激なギアチェンジで消耗したか、あるいはチャーロの強打でダメージを受けたが、終盤戦はスローダウン。チャーロが楽々と逃げ切った。

「ロニー(シールズ・トレーナー)に、今日は合格点だと言われたよ。着実に学び、成長してきた。“そのとき”が来たと思っている」

 チャーロはしっかりと強味を見せ、サウル・アルバレス(メキシコ)やゴロフキンとの統一戦が現実味を帯びてきた、

パワーショットを連発し、豪快TKO勝ちのカシメロ(右)(Amanda Westcott/SHOWTIME)
パワーショットを連発し、豪快TKO勝ちのカシメロ(右)(Amanda Westcott/SHOWTIME)

ネリ(右)はアラメダの長い射程に苦しみながらも判定勝ち)(Leo Wilson/Premier Boxing Champions)

ネリ(右)はアラメダの長い射程に苦しみながらも判定勝ち)(Leo Wilson/Premier Boxing Champions)

カシメロは豪快にTKO勝ち。ネリは冴えない王座復活

 この日はSHOWTIMEのペイバービュー(PPV=有料放送)。75ドルもの視聴料を取るだけに、2部構成、12回戦6試合、うち世界戦が5試合という大盤振る舞い。日本のファン注目のカードも多かった。

 決まっていた井上尚弥(大橋)との統一戦をキャンセルしたWBO世界バンタム級チャンピオン、ジョンリール・カシメロ(フィリピン)は、デューク・ミカー(ガーナ)を3回TKOで粉砕して、初防衛を飾っている。

 3年前のアメリカ進出以来、パッとしないミカーだが、ここまで24連勝19KOのレコードを持つ。カシメロは無駄な被弾も多かったが、持ち前のパワーショットで圧倒した。2回には左フックで痛烈なダウンを奪う。なんとか試合続行を許されたミカーをさらに打ちのめしていった。3回、左アッパーをきれい決めると、ミカーの体が大きく踊って、ここでレフェリーがストップをかけた。

 快勝に上機嫌のカシメロは「オレこそがホンモノのモンスター。イノウエはオレを恐れているんだ。オレと戦わないというのなら。ギジェルモ・リゴンドーかルイス・ネリとやりたいね」と吠えた。

 10月31日(日本時間11月1日)に本格的なアメリカ・デビューとなる井上の戦いは、この日のカシメロと比較されることになる。

 おなじみ“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)は、同じメキシカン、同じサウスポーで、これまた同じく不敗のアーロン・アラメダとWBC世界スーパーバンタム級王座決定戦を行い、判定勝ちで2階級制覇に成功している。

 後で「1年間のブランクが響いた」と言い訳したネリだが、これまでの凄味は見えなかった。アラメダの強い右ジャブに阻まれて、強打の集めることができない。ジャブ、左ストレート、右フックと鋭さはあるアラメダが最後まで守備的に戦い、攻勢をアピールしたネリが何とかポイントをかき集めた。

「スーパーバンタム級にもライバルはいる。誰と戦っても大丈夫だ」とネリは強気だった。

 そのスーパーバンタム級のタイトルマッチがもうひとつ。WBA世界同級タイトルマッチでは、チャンピオンのブランドン・フィゲロア(アメリカ)が、ダミアン・バスケス(プエルトリコ)を10回TKOで破り、3度目の防衛に成功した。力の差は明らかで、フィゲロアは手を痛めながらもボディ攻撃でプエルトリカンを弱らせ、ストップに追い込んだ。

 また、同じスーパーバンタム級のWBA世界チャンピオンとして、2度、日本で戦っているダニエル・ローマン(アメリカ)は、WBC挑戦者決定戦で、ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)と戦い、判定勝ちを収めた。ムロジョン・アフダマリエフ(ウズベキスタン)に敗れ、WBA・IBF王座を失ってからの再起戦となるローマンは、動きのいいサウスポーのパヤノに手を焼いたが、最後まで攻撃的な姿勢を保って3-0の判定を手に入れた。。

ボディショットで初回KO勝ちしたテイラー(Queensberry Promotions)
ボディショットで初回KO勝ちしたテイラー(Queensberry Promotions)

ヨーロッパではテイラーが初回KO勝ち

 WBAスーパー・IBF世界スーパーライト級チャンピオンのジョシュ・テイラー(イギリス)はロンドン・ベスナルグリーンのヨークホールで、IBF1位アピヌン・コーンソーン(タイ)と防衛戦を行い、初回KO勝ちした。

 昨年のWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)でも優勝しているサウスポー、テイラーは、粗さが目立つコーンソーンを難なく攻め崩す。左ショートを肝臓に深々と差し込まれたタイ人はあっさりと沈んでいった。

 テイラーはWBC・WBO王者ファン・カルロス・ラミレス(アメリカ)との対戦を強烈にアピール。「ラミレスがWBOから指名防衛戦をこなすように指令を受けていることは知っている。だが、わがままでも、私はラミレスと戦いたい」。

 WBSS第2シーズンで最後に残ったクルーザー級決勝はドイツ・ミュンヘンのプラザ・メディアスタジオで、IBFタイトルマッチを兼ねて行われ、マイリス・ブリエディス(ラトビア)が、ユニエル・ドルティコス(キューバ)に2-0のスコアで判定勝ちし、優勝を飾っている。

 このカードはラトビアで開催される予定だったが、新型コロナウイルス流行の影響で、延期に次ぐ延期。大会をプロデュースするカレ・ザウアーラントが引き取る形でドイツで行われたもの。

文◎宮崎正博 協力◎宮田有理子

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