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2020-10-03

ダウン応酬! スリル満点の戦いを尾川堅一が制す

厳しい打ち合いを制したのは尾川(後方)の速さとキレ

スーパーフェザー級の世界ランカー対決、IBF3位、尾川堅一(帝拳)対同7位の西谷和宏(VADY)の10回戦は2日、東京・後楽園ホールで行われ、ダウンの応酬を含むスリリングな戦いの末に、尾川が3-0のスコアで判定勝ちを収めた。

 尾川のスピードがすごかった。最適なヒッティング・ポイントまでぴったりとステップインすると、右ストレート、左フック。どのパンチも突き立てるナイフのように鋭い。長身の西谷は反撃の手立てがない。この序盤戦を見る限り、このまま一方的な戦いになると誰もが思ったろう。

 だが、意外な展開が訪れる。3ラウンド終盤だった。まったくのいい意味で、『怪異なパンチ』がいきなり茂みの中から飛び出した。西谷の左フックだ。尾川の打ち終わりに互いの体が絡んだ瞬間を狙らった一撃。斜め下からの思いがけない角度、さらにタイミングもふた呼吸は遅い。尾川はヘッドワークでかわしきったに見えたが、左テンプルをズシリとめり込んだ。その体がころりとキャンバスに転がった。


3回、西谷の左フックで尾川はキャリア初のダウンを喫した

 キャリアで初めて喫したダウンのダメージは大きかった。立ち上がったものの、足元が定まらない。再開後は後ろに横にと逃げるばかり。西谷にとってはこれを追いかけられなかったのが、あまりに痛い。4ラウンドも、危うい足取りの尾川だったが、ラウンド終盤、左フックに続く右クロスで、今度は西谷が両手をフロアにタッチして、カウントが数えられた。

 西谷の勢いが途切れたわけではない。ときおり、サウスポーへとスタンスを踏みかえながら、危険な左フックを狙い続ける。尾川は距離をとって、スピード豊かなストレート、あるいは左フック、アッパーのボディブローでこれを制止しよう試みる。6ラウンドには西谷のパンチで右目上から流血するなど、厳しい戦いは続くが、ポイントはしっかりと押さえた。

 8ラウンド以降、尾川の攻撃にようやく鋭さがよみがえる。最終ラウンドの打ち合いにも打ち勝って、ジャッジ3者とも97対91とスコアする判定勝利を奪い取った。

「やり直します。パンチのつなぎがなく、一発一発で攻撃が終わってしまいま
した」

 尾川の試合後のコメントがすべて。それを承知できているのなら、このボクサー、32歳と言えども、もっと強くなる。ただし、その尾川の攻防にばらつきを作ったのも、西谷の強打によるもの。こちらの33歳が作る『危ないタイミング』のパンチは、これからも多くのボクサーの脅威になっていくはずだ。


梶(右)は2度のダウンを奪って大差の判定勝ち

梶颯は2度のダウンを奪って15連勝

 前座8回戦に登場した日本スーパーフライ級2位、梶颯(帝拳)は、矢島大樹(松田)から2度のダウンを奪い、さらに矢島にホールディングによる2度の減点もあって最大10ポイント差がつく判定勝ち。梶はこれで無傷の15連勝(9KO)となった。


パワフルな左フック。波田(右)は力で竹嶋の技巧を壊していった

 注目のホープ対決、スーパーフェザー級8回戦、波田大和(帝拳)対竹嶋宏心(松田)の一戦は、波田が3-0の判定勝ちを収めた。
 アマチュア102戦のキャリアを持つ竹嶋は巧みなペースメイクを見せたが、パワーでまさるサウスポー、波田が逆襲する。5ラウンドに右フックでダウンを奪った後は、一方的な展開になった。

 アマチュア出身のライトフライ級、岩田翔吉(帝拳)は、成塚亮(ワタナベ)との8回戦に7回38秒TKO勝ちで、プロ4連勝(3KO)をマークした。

 初回に右カウンターでダウンを奪った岩田は、飛びつくような右ストレート、左フックで長身の成塚を攻めつける。7ラウンド、左ほおから出血し、さらに厳しい戦況に立った成塚にレフェリーストップがかかった。


岩田(右)は飛びつくようなパンチで成塚を圧倒した

文◎宮崎正博 写真◎菊田義久

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