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2020-10-09

【連載 名力士ライバル列伝】横綱初代若乃花編 宿命のライバル、横綱栃錦清隆

立ち合いがっぷり四つとなった両雄の全勝相星決戦は、若乃花が宿敵を向正面に寄り切り、8回目の優勝を初の全勝で飾った

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同じ小柄で常に目標だった栃錦。
何度も激闘を繰り広げた千代の山……。
「土俵の鬼」若乃花が
角界のスターとして輝いたのは
彼ら好敵手たちの存在があってこそだ。
※平成28~30年発行『名力士風雲録』連載「ライバル列伝」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

黄金期のクライマックス
春の大阪「栃若決戦」

 小柄な力士が大型力士を倒す。そんな相撲の醍醐味を体現する男たちが頂点に立つのだから盛り上がらないわけはない。昭和34(1959)年春、夏場所には何と民放テレビ4局が生中継する空前の大ブーム。その中心にいたのが宿命のライバル「栃若」だった。

 小兵のハンディを克服するために人一倍の猛稽古に励んできた若乃花にとって、同じ境遇ながら不断の努力で先に上位進出していた栃錦は、目標となり、心の支えとなるに十分な存在だった。昭和26年夏場所の初顔合わせからライバル意識を抱き、栃錦の元結が切れる死闘など(28年春場所、栃錦編参照)数々の名勝負。その切磋琢磨により、33~34年、12場所中9場所で2人が賜盃を分け合うこととなる(栃錦3、若乃花6)。

 そして迎えたクライマックス、昭和35年春場所、両横綱による史上初の千秋楽全勝相星決戦。ここまで7度美酒を味わった若乃花だが全勝はゼロ。難題クリアへの最後のハードルが最高のワザ師を倒すことだ。「勝ち負けはともかく、いい相撲を取りたい」。館内異様な盛り上がりの中、がっぷり四つに組んだ両者。最後は若乃花が栃錦を力強く寄り切り、宿願を達成した。

 栃錦はこの一戦で出し尽くしたかのように翌場所引退。その後の若乃花の“失速”を見れば、最大のライバルの存在がいかに大きく、「土俵の鬼」の人生に張りと潤いを与えていたかが分かるだろう。

『名力士風雲録』第6号若乃花掲載 






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