
ラグビーで間合いを詰めると言えば、防御側が鋭く前に出て攻撃側に圧をかける様子が浮かぶ。
ところが早大のルーキー、村田陣悟は、攻撃で間合いを詰めるらしい。
4年生の下川甲嗣副将は、自身と同じようにLO、FL、NO8を務める村田と攻防練習でマッチアップ。ボールを受け取って攻め上がる村田へタックルしようとした際、「アタックの方から(間合いを)詰めるセンスがすごい」と感銘を受けたという。
「向こうの間に引き込まれるというか、フットワークで相手の軸をずらすのがうまいのだと思います。ディフェンス側は前に出ながら『だいたいこの辺で(相手ランナーとの)接点が起きるな』と予測しますが、(村田には)その予測した点よりも手前にぐっ、と来られる。その瞬間、加速がある」
身長185センチ、体重96キロの突破役は京都成章高出身。昨年度末から強化指定選手用の寮へ入り、将来を嘱望されてきた。
4月の一時解散前と6月中旬以降の再合流後は管理栄養士の助言で食生活を改善し、高卒時と比べ体脂肪率を約8パーセント削減。自粛期間中は権丈太郎コーチによるオンライントレーニングでスクラムの姿勢を取り続け、身体の幹を太くしている。
10月4日開幕の関東大学対抗戦Aで、早くも出番を獲得。18日に埼玉・熊谷ラグビー場でおこなわれる日体大との3戦目では、2度目の先発を飾る。権丈コーチは期待する。
「フィジカルも強いですし、スピードもあります。まだ遠慮しているところはあるかもしれませんが、楽しみです」
当の本人は、得意の攻撃よりもむしろ防御を磨きたい。そもそも高校3年時にいまの進路を決めた背景には、相良南海夫監督から「自らリーダーシップを張って、前線に出て、早大のFWを引っ張って欲しい」と誘われたこと、2018年度の早大の好守に惹かれたことがある。
自らに高いハードルを課す。
「ディフェンスのチームが好きなんですけど、ディフェンスがあまり得意じゃないところがあって。アタックも頑張りながら、ディフェンスも伸ばしていきたいです。早めにセットして、早めにスキャン(見る)。早めにコール。それが早大のディフェンスの生命線。コミュニケーションを取ることは、僕が目指しているリーダーシップを取ることにもつながると思う。向上心があります。ディフェンスができなかったら、日本代表にも入れないと思うので」
大学では高校に比べ、相手のコンタクトの強度が高いと実感。それでも「試合よりも練習の方が緊張する」。裏を返せば、「試合ではそれまでやってきたことをやるだけ。マインドを変えて楽しんでやる」とのことだ。何より、日ごろの不安の解消へも新たな習慣を採り入れた。
「夜に不安要素をノートに書いて、明確にする。そして(その内容を)先輩などに聞く。それで、気が楽になって」
同級生のユーティリティBKで高校日本代表だった伊藤大祐もノートをつけていたこと、メンタルトレーナーの布施努氏が「不安要素を明確にして、グラウンドで実行する」と謳っていたことを受け、シーズン開幕直前からこの取り組みを始めた。日々、自分を見つめ直すことで、早大のハイテンポな攻防へより能動的に参加したい。
当面の目標は20歳以下日本代表入りだ。
世代有数の突破役と目されながら、年度末に組まれた高校日本代表からは落選している。最終選考合宿の状況を「セレクションマッチがあったんですが、自分としてはいい結果じゃなかった」と認める。
挫折は相対化した。同じ失敗は繰り返さない。
「その頃はノートに書くことも何もやっていなかった。まだまだ甘かったです。終わったことは仕方がない。そこを、ひとつのモチベーションとして捉えています」
高校時代から憧れる日本代表の姫野和樹は、所属先のトヨタ自動車からニュージーランドのハイランダーズへの期限付き移籍を発表。村田はこのニュースにも「僕ももっと上を目指したい」と刺激されており、日体大戦へも「(攻撃では)どんどんボールを要求して、ディフェンス面では姫野さんのようなジャッカルも決めたい」。大学選手権2連覇を目指す強豪にあって、期待の新星がまだ見ぬ自分になろうとしている。
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