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2020-10-19

「自分が甲子園に連れていく」。早実エース・田和廉の決意表明

主将も「信頼を置いている」



早実のエース・田和廉(2年)は修徳高との東京都大会1回戦を7回2失点に抑え、チームの初戦突破に貢献した

 相当な覚悟で、背番号1を背負っている。

「この代で行かないと、今後の早実を考えてもつらい。後輩にも甲子園を経験してほしい」

 139キロ右腕エース・田和廉(2年)の決意表明だった。10月18日、早実は東京都秋季大会1回戦屈指の好カードとなった修徳との強豪対決を7回コールド(9対2)で、初戦突破した。背番号1を着ける田和が7回2失点と、試合を作った。

 序盤は全体的に硬かった。それには、2つの理由がある。早実・和泉実監督は明かす。

「ウチは昨秋、やっていない(複数部員の問題行動により出場辞退)。公式戦という名の下では、経験がない。ブロック予選も1試合(早実の練習拠点である王貞治記念グラウンド)しか戦っていないですから。グラウンドに立つまでの想像ができない。試合前にオヤジギャグを言っても、ほぐれませんでした(苦笑)」

 実戦での経験値に加えて、観衆の中でプレーするという、2つ目のプレッシャーと向き合わなくてはいけなかった。新型コロナ感染拡大により、今春の都大会は中止。夏の独自大会は「無観客試合」。主将・清宮福太郎(2年)、田和、一番・中堅の石郷岡大成(2年)らが経験した1年夏の西東京大会以来となる、この秋は「有観客試合」であった。

 独特なムードの中でも、田和は平常心を保った。持ち味のスライダーで相手打線を封じ、攻撃にリズムを与えた。兄の幸太郎(日本ハム)に続き主将となった清宮も「良いですね。マウンドで落ち着きがあり、信頼を置いている」と明かす。頼りになるエースが流れを呼び、3回の5得点で完全に主導権を握った。

 田和は京都府出身。早実の練習を見学した上で「早実の野球が魅力的。斎藤さん(佑樹、日本ハム)ら偉大な先輩にあこがれました。ノビノビと取り組んでおり、考えながら野球をやっている」と同校を志望。関西育ちだけに「甲子園」へのこだわりは、強いものがある。冒頭のコメントも、中心選手としての自覚の表れだ。厳しい1年間を過ごしてきただけに、チームを何とかしたい思いが、言葉にも出る。

「自分が甲子園に連れていく」

 来春のセンバツ甲子園出場をかけた貴重な資料となる東京都大会。和泉監督は「田和が抑えることが条件で、勝ち上がっていける。清宮とともにカナメ」とキーマンに指名する。清宮幸太郎が3年生だった17年春以来の出場へ、戦いは始まったばかりである。

文=岡本朋祐 写真=黒崎雅久

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