「ボールを奪える」ことは、チームにどんなメリットを与えるだろうか? ここでは、ジュニア年代での「ボール奪取」を掘り下げて学んでいく。技術の成熟と戦術の基礎的要素の習得を目指す東京武蔵野シティフットボールクラブU-15を2016年から率い、15年まで指導したジュニア・チームでは世界大会でも実績を残すなどカテゴリーを問わず活躍している戸田智史・監督に解説してもらう。その1回目は「ボール奪取」の総論をお届けする。※5回(各回、前編・後編あり)に分けて掲載予定

(出典:『サッカークリニック』2015年4月号)

上のメイン写真=1回でかわされないように、粘り強く対応することは大切。だが、ボールを奪えるチャンスを減らしていないかを考える必要はある (C)gettyimages

ボールを奪わないと
攻撃は始まらない

 まずは「なぜ、ボールを奪う技術を身につけるといいのか」という点について考えてみましょう。

 ボールを奪うのは自分たちが主体的にサッカーをしていくためのものです。ボールを持っていなければ攻撃はできません。ですから、ボールを奪う技術を高めることは相手に奪われた攻撃権をできるだけ早く奪い返すためとも言えます。それができれば、失点の可能性が減り、自分たちがゴールを奪う可能性が高まります。

 そもそも「いい守備」とは何でしょうか? 戦術によっても答えは違ってくるのでしょうが、守備に対する私の考えは「ゴールを奪うために守る」ということです。ですから、攻撃にうまくつなげることのできる守備が「いい守備」だと思っています。

 その点で考えると、ボールを奪う位置は相手ゴールに近いほうが望ましくなります。ボールを奪われたらすぐに奪い返すことも必要です。さらに言えば、「いい守備」とは「自分たちで仕掛けて奪いに行く守備」と言うことができると思います。

 これらは積極的な守備で主体的な守備とも言えるでしょう。私は守備においても攻撃においても、自分たちが常に主体的にパフォーマンスできるように選手たちに促したいと思っています。

 ここで、サッカーでよく言われる「守備の3原則」(下の表)を思い出してみましょう。

1:インターセプトを狙う

2:相手に前を向かせない

3:相手を遅らせる、追い込む

 この3つが「守備の3原則」と言われています。まず、1つ目の「インターセプトを狙う」は、相手にボールが渡る前にボールを奪える可能性があるのなら奪いに行く動きのことです。しかし、インターセプトできないと判断したら、次にすべきは2つ目の「相手に前を向かせない」ことです。ボールを持った相手の背後などにつき、自由を奪い、前を向こうとする瞬間のコントロール・ミスを誘うのです。また、相手にボールを持った状態で前を向かれてしまったら、次にすべきは3つ目の「相手を遅らせる、追い込む」ことです。プレスバックして相手から自由を奪い、サイドのスペースに追いやるなどし、味方のサポートを待ちます。3つ目は特に、チームでボールを奪い返す可能性を高める動きです。

「守備の3原則」とは、すべて「待ちの姿勢」ではありません。ボールを奪い返すための積極的な守り方と考えることができます。

 一方で忘れてはいけないこともあります。「簡単に抜かれない」、「裏をとられない」ということです。この2つは守備をする上で絶対に避けなければいけないことです。この2つを許してしまうと、相手に数的優位をつくられてしまうからです。

 そのため、「簡単に飛び込んではいけない(簡単に飛び込んで相手に抜かれて入れ替わられてはいけない)」と指導することになると思います。しかし、この指導がいきすぎてしまうと「待ちの姿勢」の守備になってしまう恐れがあります。もちろん、「待つこと」も守備の1つではあります。しかし、極端に言えば相手のミスを期待しなければボールを奪えないということになってしまいます。

画像: 3:相手を遅らせる、追い込む

奪いに行くリスクを
負わせる仕組みづくり

 ボールを奪いに行く動きは、1つ間違えると相手に抜かれてしまうことと表裏一体と言えます。相手に抜かれることを避けなければいけないと考えると、奪いに行く動きをしにくくなるでしょう。しかし、それでは「ボールを奪える可能性」をつぶしてしまいかねません。主体的な試合運びを行なっているとも言えません。

 指導者にとっては、子供たちに「抜かれることを怖がらせずに、チャレンジさせること」が大切だと思います。チャレンジしなければ分からないことや身につかないことがたくさんあるからです。言い換えれば、失敗し、相手に抜かれることで、学び、ジュニアユース以降にもつながっていくということです。

 では、具体的には何をすべきでしょうか? 

 相手との距離を感じ、奪いに行けるタイミングをつかむことです。ボールを持っている相手、自分がマークすべき相手、そして自分という「3者の距離」をどうとるかがポイントです。

「どのくらいの距離ならばインターセプトできるか」、「どのくらいの距離ならば相手がコントロールした瞬間に奪いに行けるか」といった点での感覚をつかむのです。もちろん、ボールとの距離やパススピード、相手のスピードなどによっても違ってきます。また、「相手に体をどう寄せて行くのか」、「ボールがどんな状態で、相手がどんな体勢のときに奪いに行けるか」といった2点も、相手のレベル、自分との体格差やスピード差などに応じて判断していきます。

 もちろん、ジュニアの選手にとっては「奪える感覚」をつかむのは簡単なことではないでしょう。失敗も少なくないはずです。それでも、試合の中で何度もチャレンジし、「奪える感覚」をつかむのです。経験を積ませ、時間をかけてでも養っていきましょう。

 指導者としては、子供たちが失敗しても、何度でもチャレンジするようにさせたいものです。同じチャレンジの仕方では、同じように失敗してしまうでしょう。その際に指導者の声掛けがあれば、タイミングや距離を試行錯誤して変えてみたり、駆け引きしたりと工夫が出てくると思います。

 選手は経験を積んでいきながら、自分の能力を把握し、ボールを奪う技術を身につけて成長していくのだと思います。

(取材・構成/長沢潤)

画像: 奪いに行くリスクを 負わせる仕組みづくり

解説者プロフィール

戸田智史(とだ・さとし)/1976年8月19日生まれ、東京都出身。2002年から横河武蔵野フットボールクラブのスクールコーチ、ジュニアユースコーチを歴任し、08年からジュニア監督を務めた。09年に全日本少年サッカー大会で3位に導き、14年にはダノンネーションズカップ世界大会に日本代表として出場し、初優勝をもたらした。16年から名称を変更した東京武蔵野シティフットボールクラブのU-15で監督を務めている

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サッカークリニック 2019年8月号

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