2019年度の全国高校サッカー選手権大会で、初となる単独優勝を果たした静岡学園高校。川口修監督は、「テクニック」を重視した指導を続けた名将、井田勝通前監督の教えを受け、その伝統を踏まえた指導で選手たちの力を伸ばし、日本一に導いた。川口監督に、テクニックとの向き合い方と適切な指導法を聞いた。

出典:サッカークリニック2020年7月号

取材・構成/松尾祐希 写真/松尾祐希

どの年代でもボールに触り続ける

――川口監督が考えるテクニックの定義を教えてください。

川口 サッカー選手である以上、試合で使えるテクニックが必要になります。試合で使えないスキルについても練習で取り組んでいますが、最終的には試合で使えるレベルまで持っていきます。選手はチームや自分のために技術を使い、ゲームを組み立てたり、個人で仕掛けたりします。さまざまなスキルがありますが、組み立てたり、仕掛けたりするための技術を細かく磨いていくべきです。

 口で言うと難しくなりますが、いかにナチュラルにボールを持てるかが重要です。ただ、日本人の場合、小学生までに身につけておくべきものがなかなか備わっていません。ですから、中学生や高校生になっても、その部分に取り組む必要があります。ある程度のトレーニングで身につく部分なので、ナチュラルなテクニックを備えた上で、どんどん大きな技術にしていきます。静岡学園高校は創部から45年間かけ、そこのところを突き詰めてきました。

――「(今は)中途半端なテクニックを(この先の)試合で使えるようにしよう」と、練習で声掛けしていました。使える技術と使えない技術をどのように線引きしていますか?

川口 試合で使えないというジャッジをする上で大切なのはフィーリングです。相手がいない場所でボールに触ったり、狭い場所でボールをコントロールしたりする作業がかなり大事になります。そこでボールフィーリングを養った選手が判断力を獲得していきます。つまり、細かいテクニックだけになって視野が狭まってはいけません。

 そうならないためには技術の発展が大事になります。試合で使えるか、使えないかではなく、フィーリングを身につけたら、今度はそれを試合で使えるように指導者たちがアプローチしていくのです。「ヘッドダウンしてボールを失ってはいけないよ」と言うだけで、選手が試合で使えるテクニックを習得できるわけではありません。指導者が気を配りながら細かく取り組ませ、「ヘッドアップしなさい」、「味方と共有しながらスキルを使いなさい」、「状態が良い味方を使えるようにしなさい」と伝えるべきです。

 そうした概念を踏まえながら試合で使えるテクニックを身につければ、上のステージでさらに成長を続けられます。そういう技術を身につけさせて高校から送り出したいと考えています。

――判断や戦術は次のステージで学べるが、技術は早い段階でやっておくべきということになりますか?

川口 私の考えとしては、技術は12歳までに身につけられれば最高です。仮にこの時期を逃しても、高校1年生までであれば間に合いますし、伸ばせます。ただ、17歳、18歳になると、なかなか難しいでしょう。ある程度は引き上げられますが、高校から技術をやった子は、小学生時代からやってきた子に対して、どうしてもかないません。現状を維持しながら感覚をキープする作業になってしまいます。

 だからこそ、どの年代でもボールに触り続けることが大事なのです。シュートに関しても、打てば打つほどうまくなります。とにかくボールに触り続けて欲しいと思います。それが早い時期であればあるほど良いのです。

――静岡学園が技術にこだわる理由を教えてください。

川口 テクニックに対するこだわりは、井田勝通前監督(現在は総監督)の時代から代々続く伝統です。私の師匠も井田さんで、「テクニックを持っていないと世界では戦えない」、「日本人が世界で勝負するのであれば、テクニックだよ」と高校生のときから教わりました。その教えは今も変わっていませんし、私の考えも同じです。

 フィジカルレベルに関して言えば、ある程度までは世界との差を縮められますが、追い付くとなると、なかなかできません。しかし、テクニックは違います。日本人は小さく、ヨーロッパ勢に比べると、身体的に劣るかもしれません。ただ、細かいタッチ、瞬間的な速さ、グループによるコンビネーションなどで、相手を素早く崩すことができます。世界で通用するためにはテクニックを身につけなければならないという発想です。

画像: ――静岡学園が技術にこだわる理由を教えてください。

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