ドーハ世界選手権大会2日目、新谷仁美(NIKE TOKYO T.C.)が女子10000mに出場。メダル獲得を目標に掲げ、臨んだ今大会だったが、31分12秒99のシーズンベストをたたき出しながら、出場24名(途中棄権2名含む)中、11位にとどまった。ミックスゾーンで新谷が報道陣に語る言葉の端々から、日本を代表するトップアスリートとしての覚悟、プライドを感じた。

写真上=2013年以来となる3度目の世界選手権。女子10000mに出場した新谷は11位(撮影/中野英聡・陸上競技マガジン)

過程なんて誰も見ていない

 今大会、ここまで悲壮な雰囲気に包まれたミックスゾーンはなかった。

 同時に、新谷仁美(NIKE TOKYO T.C.)ほど、日本代表としての覚悟を言葉で発信した選手もいない。

 メダル獲得を目標にし、結果は31分12秒99の11位。9000m通過時点まで入賞ラインの7位につけたものの、最後は圏外に弾き出された。

「ただただ日本の恥だと思いました」

 レースを振り返って開口一番、そのように言い切る。

『恥ではないだろう。よく頑張ったじゃないか』。こちらの胸の内を見透かすように新谷が言葉をつないだ。

「もちろんメダル取らなきゃ恥でしょう。だって、過程なんか誰も見ていないじゃないですか。頑張っているかどうかは自分が決めることではないし、他者が認めて初めて頑張ったという言葉になるだけで。世界大会は参加して意味があるものでなく、各国の超人たちが集まって、結果を誰が取るか。その結果が取れない以上、期待する方が無駄だと思う。自分が見ている側だったら、誰も私に期待しない」

 参加することに意味がないとは思わない。ただ、新谷は世界選手権に勝負をしに来た。

画像: 入賞圏外に後退しても「一つでも上の順位を」と最後まで奮闘した(写真/中野英聡・陸上競技マガジン)

入賞圏外に後退しても「一つでも上の順位を」と最後まで奮闘した(写真/中野英聡・陸上競技マガジン)

やれないという言葉は私にはない

 2011年テグ大会5000mでは13位、13年モスクワ大会10000mでは5位入賞を果たした。2014年にいったん現役引退を表明し、昨年6月に復帰後は、再び世界の超人たちと伍して戦うために日々を過ごし、しっかりその舞台へと駒を進めてきた。6年ぶりの世界選手権への感慨も他と一線を画す。

「私に走る喜びはありません。だからこそ、結果が必要なんです。走る楽しさを伝えることもできないし、私には結果で伝えるしかない。その結果が出せなかった以上、何も伝えられなかったということです」

 これからは東京五輪に向けた戦いが始まる。抱負を聞かれた新谷は「腐らずにやっていきたい」と語る。「すぐ腐ってどこかに行ってしまうので」とユーモアを交えつつ、「何よりも社会人になって初めて信頼できる指導者である横田(真人)さんのため、もちろん自分自身のためにも結果を出したい」と言う。現所属のNIKE TOKYO T.C.には中距離選手が多く、スピードをつける練習に取り組んでいく。

「やらなければいけないというか、それが仕事ですから。それでお金をもらっている。やれないという言葉は私にはないです」

 東京で超人たちと繰り広げる4度目の戦いのために。新たな宣戦布告のように聞こえた。

文/石井 亮(陸上競技マガジン)

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