close

2025-10-14

東京を終えてオフに入った田中希実の次なるテーマは野生と自然体。来季は世界のレースで自己ベスト更新へ

「モスグリーンみたいな淡い色が好き」とお気に入りのウェアに身を包んだ田中希実(ニューバランス)

1週間前に東京世界選手権の5000mファイナルを走った田中希実(ニューバランス)が、9月27日、明治神宮外苑で行われたニューバランスのランニングフェスティバル 「Run your way. Park」に参加。国立競技場を臨む都立明治公園の「Runner's Park TOKYO」で取材に応じた。

東京世界選手権後、オフ期間に入ったという田中は、「静かになった国立競技場を見て少し不思議な気持ちがします」と満員の観衆に沸いた日々を振り返り、「改めてあの時、あの場所っていうのは特別な空間だったと再認識しました。こうやってランニングイベントにたくさんの方々が来てくださるということは、世界選手権であったり、そこまでに陸上文化を根づかせようという方たちの努力が実りつつあるのかなというふうに感じています」と関係者やファンに感謝を示した。


「New Balance GAIEN 5K」を走り終えたランナーとグータッチ

自身がキャラクターを務める銀杏をモチーフに日本の陶芸から着想を得たデザインが特徴の「Ginkyo Collection」のウェアとシューズに身を包み、ニューバランス初の公道レース「New Balance GAIEN 5K」と「Run your way. Relay 10k」でスターターを務めた田中。トラックで勝負に向かう厳しい表情から一転、笑顔を絶やさず、参加者と交流した。

「父(健智コーチ)がランニングイベントの企画や計測の仕事をしてたので、こういう場でチョロチョロしてるのが幼少期の良い思い出というか。市民ランナーの方々と身近に触れ合ってきた経験があるので、その頃のことを思い出しました。逆に自分が今はトラックの陸上選手としてやってることがちょっと不思議な気持ちになってきます。友達と誘い合ってこういうイベントに参加するっていうのは本当にいいなって改めて感じました」


「New Balance GAIEN 5K」の女子の部を制した沼田夏楠さんは田中のファンで「会えただけで気持ちが高ぶりました」とレースを快走

自身の原点である市民ランナーとの交流を通じ、ランニングを楽しむ気持ちを再確認していた。

田中にとって4大会連続4回目の出場となった東京世界選手権は、1500mで予選敗退を喫し、決勝に進んだ5000mは残り1周まで入賞争いをしたものの、失速して12位。2大会連続の入賞を逃した。今季は東京に向けて、ダイヤモンドリーグや今季創設されたグランドスラム・トラックなど海外のレースを転戦しながら勝負を意識してきたというが、「怖さ」や「不安」が立ちはだかった。

「世界選手権でも(怖さを)拭いきれませんでした。レース終盤だけじゃなく、レースが始まってから中盤にかけても、ワクワクできなかったり、一緒に走れている時間そのものを楽しめていないと感じました。決勝も楽しいというより、とにかく目の前のことに必死になって、最後まで無我夢中で駆け抜けられたわけではなく、最後、足が止まってしまった。恐怖が足を止めてしまったのかなと思います」

世界選手権に向けて1年間努力を続け、実力がついたことを実感しつつも、それがレースで出せなかったらという「不安」にとらわれた。東京五輪では出せた「底力」を追い求め、世界の舞台で自らを奮い立たせようともがいたが、東京世界選手権で世界のトップ選手から学んだのは、普段のレースと変わらない「自然体」で臨むからこそ力を発揮できるということだった。

「気合いを入れないと出てこないとか、条件が整わないと出てこないとか、自分が自分に感じている底力は、本当の底力じゃない。トップ選手のように自然体がそれになるように、これからは、野生の感覚を取り戻していきたい」

11月には、オフの一環としてケニアに渡り、約2週間、「野生」と向き合う。

「オフという扱いになるので、ケニア選手の練習につきたいときはついて、自分1人で走りたいときは走ってというふうに、気の向くまま、野生の感覚で走る生活を送ってみたい」


都立明治公園内に7月にオープンした「Runner’s Park Tokyo」は、ランナーのための施設。取材日にはヨガクリエイターayaさんの教室などが開催されていた。今後もランニング関連のイベントが行われる予定だ

そして迎える2026年シーズンは、21年の東京五輪から5年間続いた世界大会も一区切り。9月には愛知県名古屋市でアジア競技大会が開催され、東京世界選手権で盛り上がった陸上への熱を絶やさないことも、陸上選手として自身の役割と考えている。

「日本の方々の陸上を見るのが楽しい、やるのが楽しいという気持ちをもっと根づかせていくために、まずは来年、アジア大会が軸になってくるのではと思っています。それだけじゃなくて、今季は勝負を意識して海外レースを転戦しましたが、来季は純粋に自己ベストが出したいという気持ちで調整するような海外レースの機会も増やしていきたいと思ってます」

野生と自然体、そして自己ベスト。ニューバランスのランニングキャンペーン「Run your way. 見つけよう、あなたの道を」の通り、2026年シーズンも田中は、自らが見つけた道を切り拓き、走り続ける。



「Runner’s Park Tokyo」にFuelCell SuperComp Elite v5やFuelCell Rebel v5の試し履きエリアも。田中はエリートを世界選手権のアップ時に着用。「アップ場とメイン会場が離れていたので、感覚をしっかり入れておくっていうことがエリートでできたのはよかった」

田中希実選手が着用している
FuelCell SuperComp Elite v5やFuelCell Rebel v5、Ginkyo Collectionの情報はこちらから

写真/幡原裕治

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事