昨シーズン、大学三大駅伝すべてで5位と、存在感を示したのが帝京大だ。高校時代に全国区で活躍した選手はおらずとも、大学入学後に泥臭く練習を積み重ね、他の強豪校と渡り合ってきた。そのチームカラーは今季も健在だ。

※写真上=10月の出雲駅伝5区で区間賞を獲得した小野寺
撮影=佐藤真一(陸上競技マガジン)

 20㎞超の距離で真価を発揮するチームだが、今季はさらにトラックのスピードも磨かれた。10月5日、6日の日体大長距離競技会では5000mで13分台が続出。自己記録をマークした選手も多く、帝京大勢が他の強豪校をさしおいて、席巻した組もあった。10000mでも、最終組で平田幸四郎(4年)が日本人2位(組6着)と好走を見せた。

 昨年以上の勢いに乗って、駅伝シーズンに突入したはずだった…。

 しかし、10月14日に行われた大学駅伝開幕戦の出雲駅伝は、前年を下回る7位という結果に終わった。

「不完全燃焼です。デコボコはなかったんですけど、区間9番、10番ぐらいで安定してしまった。小野寺(悠、3年)の区間賞が効いて7番になったんだろうけど、勝負に対してのしつこさがなかった。1週間前の好記録がぬか喜びになってしまった」と、中野孝行監督が総括するように、日体大記録会で勢いづいたつもりが、駅伝に結びつけることができなかった。

 1区は好調の平田が務めたが、スローペースにはまり、「彼のスピードを生かすことができなかった」(中野監督)と区間9位だった。その後も9〜10位で推移し、上位争いには全く加われなかった。

 5区では、小野寺が区間賞の快走で3人を抜き6位に浮上したが、優勝争いをしていた上位5校とはすでに約2分もの差がついていた。そして、最終区で一つ順位を落とし、7位でフィニッシュした。

 ただ、昨年度よりも順位は悪かったものの、総合記録は1分13秒も速かった。もちろん気象条件が異なるので単純比較はできないが、小野寺の区間賞とともに、プラス要素としてとらえることができた。

 また、5000m、10000mの自己記録がチームトップの島貫温太(4年)を「温存」(中野監督)し、主将でエース格の岩佐壱誠(4年)は貧血の症状でエントリーを回避。前回箱根駅伝10区区間賞の星岳(3年)も夏に故障があり、不出場だった。本来走るべき選手を欠いての結果だけに、出雲の成績だけで、今季の帝京大を占うことはできない。手の内が明かされなかっただけに、むしろ、いっそう不気味に思っているライバル校の指揮官もいるのではないだろうか。

画像: 5000、10000mの自己記録でチームトップの島貫。そのスピードで上位校と渡り合う力は十分備えている 撮影/高原由佳(陸上競技マガジン)

5000、10000mの自己記録でチームトップの島貫。そのスピードで上位校と渡り合う力は十分備えている
撮影/高原由佳(陸上競技マガジン)

画像: 5000m13分台の自己ベストを持つ田村 中野英聡(陸上競技マガジン)

5000m13分台の自己ベストを持つ田村
中野英聡(陸上競技マガジン)

 そういえば、出雲のレース前、中野監督はこんな言葉を口にしていた。

「落合博満(プロ野球・中日ドラゴンズの元監督)が言っていたみたいに、開幕戦に合わせるんじゃないんだよ。だから、今回は『自分流(自身の著書のタイトル)』じゃなくて『オレ流』で挑みます。優勝はそんなに簡単じゃない。ただ、今回は区間賞を取れるところがあるから、面白いレースをしてくれたらいい」

 もちろん出雲でも上位を狙っていたが、指揮官はその先をも見据えてオーダーを組んでいた。

 全日本大学駅伝には、岩佐、島貫、星がそろってエントリーされた。さらに、5000m13分台の田村丈哉(4年)、10月の札幌マラソン(ハーフ)で自己ベストの1時間3分10秒で2位に入った吉野貴大(4年)といった選手も加わる。

 今季は前評判が高かっただけに、出雲路ではやや期待はずれの印象を残したが、伊勢路では上位戦線をかき回す存在になりそうだ。

文/和田悟志

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