◆11月3日/全日本大学駅伝
 満を持しての学生三大駅伝デビューは、東海大の16年ぶりの優勝が懸かる大事な場面だった。しかしそんな重責にも、名取燎太(3年)は冷静に、自分を信じて19.7㎞のアンカー区間へと駆け出した。

※写真上=ケガで苦しんだ過去2年のうっぷんを晴らす走りで優勝に大きく貢献した名取。大会MVPも獲得した
撮影/JMPA

 1位の青山学院大と2秒差の2位でスタートした名取は、序盤こそ差を保って走っていたが、4㎞で前に出ると、そこからわずか200mほどで青山学院大を引き離した。仕掛けどころは、特に考えていなかった。ただ、「もう少し速いペースで押していきたい」という感覚が芽生え、自分のペースで自然に前に出たのだった。

 東海大は今大会に、メンバー外の選手も含めて4年生全員がサポートで現地に帯同した。名取は12㎞付近で、沿道にいた4年生から「青山学院大と40秒以上の差が開いている」と声を掛けられ、「いける」と確信したという。

 力強い走りは最後まで衰えることなく、両手を挙げてゴールテープを切ると、「優勝を狙っていたからうれしい」と笑顔を見せた。個人では57分46秒で、ルカ・ムセンビ(東京国際大1年)に次ぐ区間2位。「58分30秒くらいを目指していた」というから、満点の走りだった。また、チームを優勝に導いたことが評価され、MVPに輝いた。

 佐久長聖高(長野)3年時に全国高校駅伝1区、都道府県駅伝5区で区間賞の実績を誇るが、大学1・2年時はケガの繰り返しで、三大駅伝には出られなかった。しかし、昨年11月末からは両角速監督が立てた別メニューで復活を目指した。両角監督曰く、「再生工場」は、ウォークから始め、ジョグはペースを1㎞5分以内に上げないようにするもの。両角監督も名取と一緒に走った。じっくりと取り組んだことで、12月には月間800㎞を踏めるまでになった。

 今年の春はロードレースに積極的に出場。5月には関東インカレのハーフマラソンで5位に入賞した。両角監督と話し、駅伝は距離の短い10月の出雲駅伝を回避して、全日本大学駅伝から出場を目指すプランを年度当初に立て、長い距離の練習に励んだ。そのとおり、全日本では最長区間のアンカーで結果を残した。

 1月の箱根駅伝に向け、手応えをつかんだ名取。「これまで長い距離に合わせてきたので、箱根を走るなら復路(9、10区)だろうと思っていたのですが、今回の結果を見て、2区を走りたい気持ちが出てきました。自分が2区を走れば、他の区間が厚みを増すからです」と、チームのために“花の2区”を走る心構えができた。両角監督も2区起用の可能性を口にする。

 東海大の遅れてきたエースは、初の箱根にも臆することなく、各校エースとの2区での勝負を見据えている。

文/石井安里

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岡田正裕/著(元・亜細亜大学陸上競技部監督、前・拓殖大学陸上競技部監督)


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