2年時から「花の2区」を任されてきた駒大きっての実力者だ。最終学年を迎えた今年度は出雲駅伝、全日本大学駅伝といずれも区間上位の快走でチームをトップ3に押し上げた。学生最後の駅伝でもスタンスは変わらない。山下一貴は普段どおりに自分の力を出すことだけを考えている。

写真上=3年連続アンカーを務めた全日本大学駅伝は区間3位の快走で総合3位に貢献。長距離区間は山下の指定席だ
撮影/中野英聡(陸上競技マガジン)

 駒大の"笑う男"は外さない。柔和な顔でタスキをつなぎ、走り終えてもすぐ笑みがもれる。4年生の山下一貴が、レース後に憮然した表情を見せることはほとんどない。大八木弘明監督も「安定している」と信頼を置き、今季もコンスタントに結果を残す。出雲駅伝の1区で区間2位、全日本大学駅伝では8区で区間3位と好走。レースにピークを持ってくる"調整力"は目を見張る。

「きつかったら休むし、体が軽ければ、練習をする。それだけです。なぜか調整はうまくできますね。得意なのかな」

本人はあっけらかんとしているが、結果がすべてを物語っている。学生最後の箱根駅伝が迫ってきても、心も体もいつもと変わらない。大八木監督に「練習では山下の調子がいい」と褒められても、おごることはない。

「特別にいいわけでもないと思います。とはいえ、悪くもないですよ。いつもと変わりません」

 山下にとっては、普通が一番なのだ。2年連続で「花の2区」を走っており、区間のイメージもすでにできている。

「2区ならば前回同様、権太坂までにパワーを使わず、最後の下りで頑張ろうと思っています。1km2分55秒ペースで押していくつもり。実際は2分56秒くらいになると思いますけど。前回よりも走りの質を上げて、村山謙太(現・旭化成)さんが持つ2区の駒大記録を超えられるようにしたいです。自信はあります」

 村山の駒大記録は1時間07分46秒。前回は1時間08分09秒と23秒差まで迫っているが、「1年間練習してきたので、20、30秒くらいは縮めないと。それくらい強くなっていないと困りますから」と笑う。

村山謙太の持つ2区駒大記録更新が目標と語る山下。静かな口調のなかにも自信がみなぎる
撮影/田中慎一郎(陸上競技マガジン)

 慎重にレースを運び、周囲のペースに惑わされずタイムを刻んでいくのは持ち味の一つ。2年時に初めて2区を任され、無理に突っ込んで失敗した経験が糧となっている。涙に暮れた過去は忘れたことはない。

「チームに迷惑をかける走りは、もう二度としたくないので」

 あのレース以来、駅伝では安定感のある走りを見せているが、気になることもある。フィニッシュ後に余力を残してしまうのだ。2年連続でアンカーを務めた伊勢路でもそうだった。

「毎回、もうちょっとやれたと思うんです。出し切れていないんでしょうね。箱根では出し切ってみたい。倒れるくらい走ってみたいです」

 1月2日の戸塚中継所で笑う余裕がないほど力を使い切り、そして3日の大手町で思い切り笑うのが理想。大八木監督は総合3位以内を目指すというものの、山下ら選手たちの目標は一つ。12年ぶり7度目の総合優勝だ。

やました・いちたか◎1997年7月29日生まれ、長崎県出身。滑石中→瓊浦高(長崎)。171cm、54kg。自己ベスト10000m28分31秒89(大3)、ハーフマラソン1時間02分36秒(大3)。

文/杉園昌之

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