東京マラソンに出場する設楽悠太(Honda)が1月23日、宮崎市で練習を公開。兄の設楽啓太が所属する日立物流のメンバーと一緒に4.3kmのコースを8周する距離走を行い、その後の会見では、変わらず独特なマラソン観を披露した。

写真上=設楽悠は練習後の会見では、ブレない独自のマラソン観を披露した。その真意は?
撮影/寺田辰朗

 設楽にとって東京マラソンは2年前に2時間06分11秒の日本記録(当時)を出した大会。午後の会見では「2時間4分台で走らないと東京五輪を走る資格はないと思っています。2時間5分台なら日本記録でも五輪代表は辞退すると思う」と、2時間4分台への挑戦を明言した。

 設楽の価値観は五輪至上主義ではない。暑さの中での行われる駆け引き重視のマラソンよりも、スピードを求めて突っ走るマラソンをしたいと考えている。

「みんな守りに入ってしまってやらないだけなんです。それでは見ている人はつまらないと思う。前半から勝負をしていかないと、(世界には)絶対に勝てない。東京で2時間5分台を出しても、自分では(世界と戦えると)納得できないというか、暑さに強い選手ならたくさんいると思う。2時間4分台なら少しは勝負できるのかな」

 Hondaの小川智監督は設楽の思いを次のように代弁した。

「夏のマラソンでは期待されるパフォーマンスを出せないと思って言っているのでしょう。夏のレースで一度でも上手く走れたら変わると思いますが、夏なら自分よりも強い人がたくさんいる、と言いたいのだと思う」

 ただ2時間5分台でも、五輪代表入りの条件をクリアしたときは設楽と話し合うという。

 設楽は以前に本人も言っていたことがあるが、現在の気持ちをストレートに話してしまう性格なのだ。現時点では五輪に出て期待を裏切るよりも、自分が理想とするマラソンを追い求める方が、日本のマラソン界にとってもプラスになると考えている。

画像: 宮崎で練習を公開した設楽悠太(左)。兄・啓太(左から2人目)とともに汗を流した 撮影/寺田辰朗

宮崎で練習を公開した設楽悠太(左)。兄・啓太(左から2人目)とともに汗を流した
撮影/寺田辰朗

 2時間4分台を出せなければ、「東京が国内最後のマラソンになります」と明言。海外の速いペースのマラソンに絞って挑戦していく覚悟を決めた。

「日本のマラソンが成長する方法は、海外マラソンにどんどん挑戦すること。少しでも日本のレベルを上げて盛り上げたい」

 自身の理想に向かって突っ走ることを表明した。

 東京マラソン出場の目的が五輪代表切符でないことは、小川監督も設楽と話をしている。「優勝や日本記録を目指す大会」という師弟の共通認識だ。「彼はそれ(2時間5分台)より上を絶対に出したい。そう考えていることの裏返しだと思います」

 気になるのは設楽が、日本記録を出した2年前と比べてどんな状態にあるのか、という点だ。

 前年9月にマラソンを走ったのは2年前と同じだが、秋の出場試合は違う流れになった。11月の東日本実業団駅伝には今回出場したが、状態としては7割くらいでニューイヤー駅伝に臨むことになった。「試合が少なくて気持ちが上がらなかった」と設楽は自己分析している。

 1月のニューイヤー駅伝4区と全国都道府県対抗男子駅伝7区への出場は、2年前と同じである。2年前は両駅伝とも区間賞だったが、今年は区間2位と区間3位。だが、タイムはニューイヤー駅伝4区が1時間04分19秒と1時間04分36秒、都道府県駅伝7区が37分12秒と37分20秒で、それほど変わらない。タイムだけ見れば2年前と同じ流れになってきた。

 だが設楽本人は、自分の身体の感覚に神経を集中させるタイプ。タイムが同じだから良い、違うから悪い、とは少しも考えない。

「昔のタイムと比較したりはしません。日に日に調子は変わってくるものなので」

 この意識はHondaの練習スタイルも影響している。小川監督も「2時間5分台、4分台を出すための練習、という考え方はしません」と話す。結果から逆算して練習メニューを決めるのでなく、個々の選手の今の状態を見て、どうしたら本番に向けて調子が上がっていくかで決める。これは設楽に限らず、これまでのHondaのランナーもそうだった。

 駅伝2大会のタイムが同じレベルでも、やってきた練習は2年前とは「まったく違う」(小川監督)。

 今後は2月2日の丸亀国際ハーフマラソン、同16日の熊日30kmに出場して東京マラソンに向かう。2年前は丸亀、唐津10マイルを経て東京に合わせたが、もちろん2年前との比較は設楽にとって意味をなさない。

 今日(23日)の練習メニューは35kmの距離走。1km3分半くらいで走り始めたが、タイムにこだわらず走った。設楽は「時計は付けないのでペースはわかりませんが、良い感じで消化できました」と言い、小川監督は「見ていて、余裕度があるのはわかる」と話した。

 2年前の丸亀国際ハーフマラソンは、1時間01分13秒(2位)だった。それと同じタイムを目指すわけではないが、現在の感覚から「最低でも1時間0分台を出して、熊日30kmにつなげたい」とイメージしている。熊日30kmの目標タイムは、丸亀を走ってからイメージしていく。

 小川監督は熊日30kmのタイムを「本気で走ったら1時間28分台になりますけど、どう走るのがいいか…」と、こちらもまだ細かく決めていない。

 五輪代表は目指さないが、五輪代表条件以上のレベルを求めた設楽流の連戦が、今年も続いていく。

文/寺田辰朗

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