難民アスリートのヨナス・キンディが初来日し、3月1日の東京マラソンを走る。レースに向けて早稲田大学で練習を積んできたヨナスは、2016年リオ五輪に続き、2大会連続オリンピック出場を目指している。

リオ五輪では難民選手団の一員として男子マラソンに出場したキンディ(写真/和田悟志・陸上競技マガジン)

 3月1日(日)開催の東京マラソンで、ぜひ注目してほしい1人のランナーがいる。難民アスリートとして初めて東京マラソンに出場するヨナス・キンディ(IOCスカラシップ)だ。

 ヨナスは、もともとはエチオピア出身だが、政治的な理由からルクセンブルクに避難し、現在は同地で生活している。2016年のリオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピックでは、IOC難民五輪選手団が史上初めて結成されたが、ヨナスもまた、その一員としてリオ五輪の男子マラソンに出場した(89位)。そして、国連UNHCR協会の支援を受けて、今年の東京マラソンへの出場が実現した。

 2月25日に来日したヨナスは、来日期間中は早稲田大学競走部合宿所で生活を送り、同大所沢キャンパスで東京マラソンに向けて調整を行なっている。メディアに向けた公開練習は、ヨナス一人で走っていたが、朝練習では競走部のメンバーとともに汗を流したという。

「コンディションは非常に良い。当日は天気が良いように願っている。自己ベストを出したい」
と調整は順調のようだ。

画像: 東京マラソンに向けて早大で調整中。その真摯な取り組みで競走部のメンバーにも刺激を与えている(写真/和田悟志・陸上競技マガジン)

東京マラソンに向けて早大で調整中。その真摯な取り組みで競走部のメンバーにも刺激を与えている(写真/和田悟志・陸上競技マガジン)

 学生とのコミュニケーションも積極的にとり、簡単な日本語も習得。また、食事面では最初は箸の持ち方に苦闘したというが、短期間ですっかり使いこなせるようになっていた。学生にとっても、ヨナスとの交流は貴重な機会になっているだろう。

「テレビのドキュメンタリーでヨナス選手のことは知っていました。“1秒でも速く走ろう”という思いを共有しているアスリートとして、逆境に立ち向かう姿勢は共感を覚えているし、彼の生き様に刺激を受けました」と、3年生の住吉宙樹は話した。

 ヨナスは今年5月に40歳になるが、昨年は2時間17分12秒の自己記録をマークしており、まだまだ伸び盛り。そして、今夏の東京五輪に出場するために、トレーニングに励んでいる最中だ。

「2016年の難民五輪選手団は希望を象徴していると思う。その一員になれたことは誇りに思っています。東京オリンピックでも選手団の一員に選ばれたら、雰囲気や環境に適応できるようにしっかり準備をしていきたいと思っています。

 難民には自分で進んでなるわけではない。また、いつ誰でも、難民になる可能性はあります。世界中で、難民の子供が苦しんで、そして死んでいくのを目にしています。ですので、“難民に手を”とお願いしたいと思っています」

 2大会連続オリンピック出場を目指す難民アスリートは、我々にメッセージを残した。

●プロフィール
ヨナス・キンディ(Yonas KINDE)/1980年5月7日、エチオピア生まれ。ルクセンブルクに避難した5年後、リオ2016オリンピック・パラリンピックの難民選手団の一員に選出。男子マラソンに出場した。避難先のルクセンブルクでは、フランス語の授業を受けながら生計を立てるためにスポーツマッサージ師として働き、日々記録の更新を目指して努力を続ける。自己ベストは5000m14分32秒69(2013年)、ハーフ1時間03分22秒(14年)、マラソン2時間17分12秒(19年)。

文/和田悟志

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