
今シーズンで勇退する関西学院大学アメリカンフットボール部の鳥内秀晃監督。選手たちの「負けない強さ」を育んだ指導力と、軽妙な大阪弁の語り口、厳しくあたたかい人柄で、多くの人たちを魅きつけてやまない監督の魅力を、長く取材してきた担当記者たちが綴ります。Vol.2は、選手と指導者の関係でもあった朝日新聞大阪スポーツ部の大西史恭記者に寄稿していただきました。
(上の写真:高塩隆)
忘れもしない。鳥内秀晃監督に初めて会った時のことだ。私がアメリカンフットボールを始めてすぐの関西学院高等部1年の時。当時、大学は高等部のすぐ隣のグラウンドで練習していて、鳥内監督がわざわざ高等部のグラウンドに来たのだ。高等部の監督に「RB(ランニングバック)の大西くんってどの子や」と聞き、私が呼ばれて近づくと、「君か? お母さんと高校の同級生やねん。そういうのは言うてくれな」と言われた。
まだ高等部の先輩ですらまともにしゃべれない時期に、大学の監督に声をかけてもらったことは鮮明に覚えている。だが、なんて返答したかは全く覚えていない。怖いとか、そういう感情すら湧かなかった不思議な感覚だったと思う。
鳥内監督にはたくさんのアドバイスを頂いた。私は高等部でRBとキッカーを兼任していたが、大学では2年まではほぼRBだけだった。大学3年の時、上級生のキッカーが卒業し、キッカーがいなくなった。そこで、監督から「小笠原(先輩キッカー)がおらんくなって、他おらんねん。お前も蹴っとけ」とキッカーへの転向を告げられた。
鳥内監督もキッカーで、フォームで助言をもらった。蹴る前のモーションでどうしても自分が納得できないやり方の時、少し抵抗したが、「口でごちゃごちゃ言う前に、まずやってみろ」と強く言われた。最初は嫌々だったのが、習得すると、最後はそのフォームが心のよりどころになった。
大学を卒業し、朝日新聞の記者になってからの方が、圧倒的に話す機会は増えた。監督行きつけの居酒屋で飲んだこともある。大学から駅まで車で送ってもらったこともあった。普通に会話していても、突然、「ん?」と思うようなギャグを挟んでくる。どちらかと言うと近寄りがたいイメージだった「監督」が、だんだんと「めっちゃええ大阪のおっちゃん」に変わりつつある。
高校から7年間アメフト選手で、記者になって11年。計18年で最も心に残っている言葉は大学4年の時の1対1のミーティングで言われた。「別にな、俺は勝たんでもええと思ってるねん。それより、お前が男としてちゃんとするかどうかや」。自分で「日本一のキッカーになる」と言うなら、責任もってやれ。自分で言うたことはやりきれ。それが男や、という教えは今でも心の中に宿る。
18年前、まさか、鳥内監督最後のシーズンを記者として取材するとは思わなかった。感謝も込めて、最後まできっちり、やりきりたいと思う。(朝日新聞大阪スポーツ部・大西史恭)
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