高校野球でも2018年シーズンが幕を開ける。鹿児島は春季大会が3月21日に開幕。注目の神村学園は大会初日、枕崎と初戦を迎える。2017年、春夏秋の主要大会だけでなく、NHK杯、1年生大会でも優勝。鹿児島県内で無敗を誇ったチームがどのような一歩を踏み出すか。
昨夏出場した甲子園でクローズアップされた神村学園高の取り組みの一つに「座禅」がある。2016年秋の鹿児島大会準決勝で鹿児島実に4対5で敗退し、その戦いぶりに「精神的な弱さ」を見た小田監督がメンタル強化の一環で取り入れたものだ。
「高校野球はトーナメントの一発勝負です。試合を優位に展開するためには相手より先に点を取るに越したことはありません。逆に考えれば、相手に簡単に先制を許してしまうような守備力しか有していないようでは、勝つ確率は上がりません。それが先制点の重要性として語られる部分。だからこそ、試合の入りが重要になります」
試合の入りに最も気を使うのが投手。立ち上がりはどれほどレベルの高い投手であっても難しいものだ。「重要性を知るからこそ意識する部分でもありますが、いかに普段どおりの精神状態で投げられるかが問われるところです」。通常でない精神状態がミスを引き起こす。
16年秋の鹿児島大会準決勝、鹿児島実に4対5で敗れた試合は、5失点中4失点に失策が絡んだ。通常では考えられないミスの応酬だったが、選手の声を聞くと「捕れていた打球だと思いますが、なぜ捕れなかったか分かりません」「体が固まってしまいました」と普段どおりにプレーできていない様子がうかがえた。
「気持ち」について考えていくうちに、行き着いた取り組みの一つが「座禅」。年が明けた17年春季鹿児島大会前にいちき串木野市にある冠嶽山鎮國寺に赴き、座禅を組んだ。
約1時間弱、正座で教わった呼吸法での呼吸に集中。僧侶からは「覚悟を決める」ことを説かれた。「社会環境の変化で軽視しがちなガマンや忍耐を学び直す、絶好の機会になりました」。初めて座禅を経験した選手からも「強くなれた気がします」との声が聞かれた。
さまざまなことが起こり得る野球の試合の中には、自分たちの力ではどうすることもできない不測の事態に出くわすこともある。そうしたとき、過去を顧みず、目の前のことに集中して覚悟を決める。そうした心の持ち方を学んだととらえている。
県内無敗で終えた2017年、その要因は一つではないだろうが、勝者のメンタリティーの何たるかを知ったことはそれに少なくとも影響している。試合前やイニング間のベンチ裏で自ら座禅を組み、精神を集中させる選手の姿があるのはその効果を実感していることの証明だろう。土台を築いた神村学園、飛躍の予感が漂う。
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