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2018-03-07

[高校野球] タイブレーク制度 無死一、二塁の戦術③

守備プラン編
バントシフトの確立と
バッテリーの配球

 3月23日に開幕する選抜高校野球大会ではタイブレーク制度が採用される。同点のまま延長13回を迎えた場合、その後は無死一、二塁からイニングを始めることになる(決勝を除く)。そこで、無死一、二塁の攻防について、同制度を採用する国際大会で日本代表チームを率いた小枝守氏(日本高等学校野球連盟技術・振興委員会副委員長)とともに考えていく。

 無死一、二塁の守備では、相手チームの攻撃の選択肢が多い分、それに対応するだけの準備が必要になる。

「バントで二、三塁に走者を進めようとする可能性が最も高いと考えられるので、そのためのバントシフトの確立は必須です。まずは1点を防ぐための守備のバリエーションを持つことです。攻撃力に自信があり、これまで細かな守備を追求せずに無死一、二塁なら簡単にバントをさせて1点は仕方がないと割り切っていたチームは、その考え方では1点がモノを言うタイブレークで勝つ確率を上げることは難しいと思います。

 1球目は相手の仕掛けを探るためにボール気味の球から入ることで、根拠を持って守る隊形を決める必要があります。そこに捕手からの牽制を組み合わせるなどして、走者のリードオフを狭めたり、スタートを遅らせたりする工夫も必要です。フォースプレーですから、そうすることで、三塁でアウトを取る可能性が高まります。配球でも右打者であれば内角、左打者であれば外角のボールを中心に攻め、バントなら三塁方向に転がすように仕向ければ「1-5」での三塁封殺につなげやすくなります。そこで相手が打つ作戦に出た場合にも左方向に打球が飛ぶ可能性が高く、三塁封殺のチャンスが広がります。

 一死二、三塁と一死一、二塁では失点のリスクは大きく違いますから、相手が確実にバントをしてくると決めつけられるのであれば、バント処理に秀でた投手をワンポイントで起用するようなことも考えられます。また、2017年のU-18ワールドカップ(カナダ)のオーストラリア戦(スーパーラウンド第1戦)はタイブレークの延長11回に田浦文丸(秀岳館高、現ソフトバンク)が犠打と四球で招いた一死満塁のピンチを連続三振で切り抜けたように、三振が最もアウトを安全に取る方法です。左投げやサイドハンド、アンダーハンドなど、変則的で打者がボールを線でとらえづらい軌道のボールを投げる投手がいれば、短いイニングしか投げられなくても重宝する存在になります。

 後攻で先に守るのであれば、最少失点で切り抜ける意識を常に持つでしょう。一死二、三塁とされればオーソドックスには内外野とも前進守備で、内野ゴロによる1点を防ぎ、内野を抜かれても二走の生還を許さない。その際、後続の打者まで見極めた満塁策も選択肢の一つですが、さらに失点するリスクを負います。先攻であれば自分たちの得点によって許せる失点のラインを引き、その走者をかえさない守備を選択していくことになります。

 攻撃にも共通することですが、実際にタイブレークとなれば選手は相当な重圧を感じながらプレーすることになります。練習からいかにワンプレーの重みを感じながら取り組めるか、これまで以上に重要になってくるでしょう」

こえだ・まもる/1951年7月29日生まれ。東京都出身。日大三高、日大を経て、76年から日大三高監督を務める。79年夏の甲子園に出場。81年に拓大紅陵高(千葉)の監督に就任し、春夏通じて9度、チームを甲子園に導いた。92年夏に全国準優勝など、甲子園通算10勝。2014年限りで勇退し、15年からは日本高等学校野球連盟技術・振興委員会副会長。侍ジャパンU-18代表監督として16年アジア選手権(台湾)優勝、17年U-18ワールドカップ(カナダ)3位の成績を収めた。

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