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2018-03-06

[高校野球] タイブレーク制度 無死一、二塁の戦術②

攻撃プラン編
再確認したい
基本技術の重要性

 3月23日に開幕する選抜高校野球大会ではタイブレーク制度が採用される。同点のまま延長13回を迎えた場合、その後は無死一、二塁からイニングを始めることになる(決勝を除く)。そこで、無死一、二塁の攻防について、同制度を採用する国際大会で日本代表チームを率いた小枝守氏(日本高等学校野球連盟技術・振興委員会副委員長)とともに考えていく。

 無死一、二塁からの攻撃では、より多くの選択肢から得点を狙える一死二、三塁をつくろうと、ほとんどの監督が考えるものだろう。作戦を駆使して1点を確実に取りにもいければ、ワンヒットで2点を狙うこともできる。そのケースをつくるためのオーソドックスな戦術にバントが挙げられる。

「かつては無死一塁であればバントで送るのが定石であったのですが、金属バットを使用するようになってパワーもつき、無死一塁からバントで送るのと強攻するのとでは、得点の可能性に大差はないとのデータも見られます。そうであれば、より多くの得点が期待できる強攻策を採る傾向にあるチームも増えています。しかし、無死一、二塁から得点を狙うのであれば、バントはかなり重要な作戦です。いかにバントにこだわれるかがタイブレークではモノを言うことになると思います。

 バントを使わずに走者を進めることができなくても、一発長打が出れば挽回できるのが野球ですが、フォア・ザ・チームに徹し、高い確率でできることでつなぎながら、チームとして得点を狙えるのも野球です。チームに適した手法を考える機会になるのではないでしょうか。監督の立場としては、他チームの模倣ではなく、自チームにできることを追求し、それを浸透させたいものです。そうした取り組みが強固なチームワークを構築することになるでしょうし、高校野球のさらなる魅力につなげてほしいとも思います。

 通常のチャンスではサインなどなく、信頼して打たせるだけの中心選手であっても、タイブレークで一死二、三塁とし、1点取れば勝利が決まる局面で、犠打やスクイズができるに越したことはありません。そのような選手にも自己犠牲の姿勢を持たせることができるか、戦術のバリエーションを豊富にそろえることとともに大事になってきそうです。

 また、基本練習を見直す機会にもしてほしいと思います。無死一、二塁から走者を進めようとすれば、バントがオーソドックスな方法ですが、よりチャンスを広げようとするのであれば、セーフティー気味に仕掛けることも選択肢に挙がります。そのとき、仮に2ストライクに追い込まれても、確実にゴロを転がす技術を持ち、少なくとも2走者を残せる打者であれば、ストライク2球をチャレンジに使うことができます。

 甲子園で勝ち上がるチームの高い打撃力がクローズアップされ、多くのチームがスイング量を増やし、パワーアップを図っている現状があります。一方で、私の実感として基本とされてきたトスバッティングを疎かにするチームが増えています。ミートポイントを確認しながら緩い球を狙った個所に意図した軌道で打ち返していくトスバッティングは、バットコントロールを身につける恰好の方法です。こうした昔から野球界にあり、いまに残っている練習方法を徹底することは、実戦で生きるものだと思うのです」

こえだ・まもる/1951年7月29日生まれ。東京都出身。日大三高、日大を経て、76年から日大三高監督を務める。79年夏の甲子園に出場。81年に拓大紅陵高(千葉)の監督に就任し、春夏通じて9度、チームを甲子園に導いた。92年夏に全国準優勝など、甲子園通算10勝。2014年限りで勇退し、15年からは日本高等学校野球連盟技術・振興委員会副会長。侍ジャパンU-18代表監督として16年アジア選手権(台湾)優勝、17年U-18ワールドカップ(カナダ)3位の成績を収めた。

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