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2020-12-19

【箱根駅伝の一番星】東京国際大学・内田光が積年の思いを込めて最初で最後の大舞台へ「必ずシード権を残したい。それが恩返し」

チームのために走ることを誓う内田 写真/JMPA

陸マガの箱根駅伝カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。長く、苦しい3年間を経て最終学年でチャンスをつかんだ東京国際大学の内田光(4年)は、多くの思いを胸に、最初で最後の箱根駅伝に挑もうとしている。

高校時代の栄光と苦しんだ大学3年間

「都大路で区間賞を取ったので、浮かれて入学したかもしれません」

 高校長距離界における晴れ舞台、都大路(全国高校駅伝)。2016年12月、内田光(東京国際大4年)は名門・佐久長聖高(長野)の5区を任され区間賞を獲得、優勝には届かなかったが2位入賞に貢献した。高校駅伝界の最たる栄光をつかんだ内田は、まだ箱根初出場を果たしたばかりの東京国際大の未来を背負う主役になる夢をはっきりと描いていたに違いない。

 だが、大学入学後の内田に待っていたのは、活躍する場をつかめない厳しい現実だった。しかもそれは約3年もの間、続くことになる。

「ケガで走れない時期が続くなか、2年生と3年生のとき、全日本大学駅伝の関東予選会に出られるチャンスが回ってきました。でも、練習内容を重視する大志田(秀次)監督の信頼を得られず、ずっと出場機会は得られなかったんです」

 大きな挫折だった。そして、「情けなくなり、もう陸上は辞めよう」と思ったこともあっという。

 しかし、そんなとき、支えてくれたのが家族であり、前を向かせてくれたのが佐久長聖高時代の同期たちの活躍だった。

「東海大の名取燎太もケガで苦しんでいましたけど、3年生のとき、頭角を現して黄金世代の4年生に食らい付いていた。筑波大の相馬崇史も箱根駅伝に出場し、高いレベルで頑張っている。僕も同期として、恥ずかしくないようにやっていきたいと思うようになったんです」

 そこで、練習でも生活面でも自己管理を徹底。するとケガは減り、今年の夏合宿では計画通りにメニューをこなした。何より監督からの信頼を勝ち取り、11月の全日本大学駅伝にも出場した。

 結果は、3区区間14位と振るわないものだった。もちろん反省点は多いが、一番肌で感じたのは、やはり高速化だった。

「高校時代以来の駅伝は、自分が知っていた駅伝とは違いました。今は最初から突っ込んで入らないと勝負できないんだな、と。守りすぎて失敗したので、箱根駅伝では、玉砕覚悟で突っ込んでいきたいと思っています」

 もちろん、本当に玉砕するつもりはない。箱根本戦を約2週間後に控えた今、どう走るべきか、さまざまな場面を想定しながらシミュレーションしている。今年度の東国大には、前回3区で驚異的な区間新を出したイェゴン・ヴィンセント(2年)やスピードが魅力の丹所健(2年)ら、実力ある下級生がそろう。そんななか、内田が思い描くのは復路8区から10区のいずれかで、成長著しい下級生が築いてくれるであろう往路の良い流れを、がっちりと守り抜く責任感のある走りだ。

「大志田監督は夏からずっと『8区から10区は4年生だよ』と期待してくれていました。以前は、言われた区間ならどこでも全うしたい、でも走るなら4区が一番かなという思いがありました。でも今は4年生として復路でチームを引き締める走りをしたいと思っています」

 創部10年目を迎えたチームの目標は、まずは「連続シード権獲得」。大志田監督は2021年の箱根で足元をしっかり固めれば、近いうちに往路優勝や復路優勝、その先に総合優勝も見えてくると語っている。内田はこの思いをしっかり理解しているはずだ。

「箱根では後輩たちに必ずシード権を残したいです。それが監督に対する4年間の恩返しでもあるので。それに今回が最初で最後になるので、悔いを残さないように走りたいです」

 長いトンネルの先に見えた「光」の向こう側には大学進学の動機となった大舞台が――内田は多くの思いを背負って、初めて箱根路に挑戦する。

 うちだ・ひかる◎1998年9月8日、埼玉県生まれ。160cm・42㎏、A型。杉戸東中(埼玉)→佐久長聖高(長野)。自己ベストは5000m14分21秒17(2016年)、10000m29分02秒34(2019年)、ハーフ1時間04分25秒(2020年)。高校時代は全国高校駅伝5区で区間賞を獲得。大学駅伝デビュー戦となった今年11月の全日本大学駅伝3区で14位。内田にとっての箱根駅伝とは「大学に進学した理由」(箱根駅伝2021完全ガイドアンケートより)。

 

陸上競技マガジン 1月号

箱根駅伝2021完全ガイド(陸上競技マガジン1月号増刊)

文/鈴木快美

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