今春のセンバツを区切りに指導者人生に一つの区切りをつけた。報徳学園の永田裕治前監督である。有終の美を飾るベスト4の結果に「秋までとのチームとは明らかに違います。23年、監督をしてきましたが、ひと冬の高校生の成長にあらためて驚かされました」と自身の想像の域を超えるチームに仕上がったことに感慨もひとしおの様子だった。
94年4月から伝統校を率い、春11度、夏7度の甲子園に出場。02年春は優勝に導くなど、甲子園で通算20勝16敗の戦績を残した永田前監督。就任時から10年ほどは野球部の指導にあたるのは一人だけ。「だからこそ好きなようにやれた」と言うが、苦労も多かったはず。野球の指導に加えてスカウティング、進路のルートも独自で切り開いてきた。
報徳学園の野球を語る際の大きなキーワードに「全員野球」がある。原点は就任間もない1995年に起きた阪神大震災。「被害が甚大でアクセスが途絶えて学校に来るのにも3、4時間かかっていました。野球をするどころではない状況なんですけど、日が経つにつれ笑いながらキャッチボールをしている生徒の姿を見るようになったんです。うまい、ヘタじゃない。純粋に野球が好きで楽しみたいから野球部に入ってきているんだ」。技術の巧拙にかかわらず、部員全員が同じように野球に取り組める環境づくりに努めてきた。
高校生を指導するにあたり、念頭に置いていたのが「4つのC」だと言う。
Chance
Challenge
Change
Champion
「若い人の目の前にはチャンスが数多く転がっているでしょう。それをつかんで、次のチャンスにつなげるのはその人次第。われわれはその姿を見ています。そしてチャンスに対してチャレンジしてほしい。しかし、チャレンジし続けても結果が出るとは限りません。そのとき、そこでやめるのではなく、やり方をチェンジすればいい。アドバイスを受けながら試行錯誤することです。そしていずれチャンピオンになってもらえれば。個人としてレギュラーだったり、チームとして優勝だったり、いろいろと目指すものがあるでしょう」
目指すのは野球の勝利者ではなく、人生のチャンピオン。その礎づくりが永田前監督が報徳学園で目指した野球である。そのバトンは教え子でもある大角健二新監督に引き継がれている。
永田前監督のインタビューはベースボール・クリニック6月号に掲載。
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