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2021-01-15

【ボクシング】これが井上拓真のボクシングだ! 強打の王者・栗原をコントロールし、OPBF王座獲得

栗原(右)に攻めさせてカウンター。拓真の技術が凌駕した

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 14日、東京・後楽園ホールで2021年最初のボクシング興行がスタート。注目の東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦は、元WBC世界同級暫定王者の井上拓真(25歳=大橋)が、王者・栗原慶太(28歳=一力)を、ほぼ完封。9回2分25秒負傷判定勝ち(90対81、89対82、89対82)し、スーパーフライ級に続きOPBF王座2階級制覇を果たした。

 まさにマタドールと闘牛の戦いだった。右ストレートに一撃必殺の威力を備える栗原が、雰囲気を醸し出したのは初回だけ。2回からは、井上のスピードと防御スキル、カウンターが冴え渡った。一見、栗原がプレスを強めて前に出ているように見えるが、主導権を握り続けるのは井上。敢えて引き寄せながら、栗原に右を打たせる。これをひらりひらりとかわしながら、得意の左フックをカウンター。栗原が躊躇すれば、右から左の逆ワンツーで飛び込み、インサイドから右アッパーカットをショートで突き上げた。


栗原の猛烈な連打も、拓真はロープ際で巧みにかわしていった

「絶対に冷静さを失わない」。それを固く誓って臨んだ。大晦日、4階級制覇を狙ったものの、井岡一翔(Ambition)に翻弄された田中恒成(畑中)の姿を胸に刻んだ。田中はアマチュア時代からのライバルにして拳友。その田中が、KOを狙うあまり強引に攻めすぎてコントロールされ、冷静さを失っていった。逆に、基本に忠実なスタイルを徹底し、冷静さを保ち続けた井岡の戦いぶりに思うところもあっただろう。

「相手の土俵に乗らず、徹底的に自分のボクシングをする」。6回、逆に栗原が引きながら井上を誘ったが、決して自分の距離を崩さずに、ジャブをビシビシとヒットさせていった。

 栗原は初回にバッティングで左目上をカット。回を追うごとに出血も酷くなり、ドクターチェックも再三。この影響ももちろんあっただろうが、前に出ていても、ハードヒットを奪えない。だからさらに振りが大きくなる。かわされてカウンターを合わされる。さらに焦る……。その沼から抜け出すことができなかった。


右カウンター! 拓真の右が1枚上手だった

 8回は井上のベストラウンド。ベースの戦いは変えず、クリーンヒットを奪いまくる。それまでの流れから見ても、この回でレフェリーがストップしてもよい展開だった。

「少しでも自分のボクシングを出せたのはよかった」。はっきりとした決着をつけられなかったところが不満なのだろう。しかし、限りなくTKOに近い勝利。兄・尚弥とは違う、自らの骨格となる戦い方を披露できたことは大きな収穫。これが“井上拓真のボクシング”だ。

 リングサイドで弟のボクシングを見つめた尚弥は「1年2ヵ月ぶりの再起戦で不安な気持ちもあったけれど、結果はパーフェクトゲーム。これが拓真のボクシングで拓真の強さ。あとは倒すまでの流れを掴めばもっと伸びる」と賛辞を贈った。

 ナックルパートで捉える、重心を下げてタメて打つなど、攻撃の細部に課題はあるが、この日のようにベースのボクシングをしっかりと保てば、それらは順次可能となっていくはずだ。


試合後、拓真の父・真吾トレーナーが赤コーナーに駆けつけ、中村隆トレーナー(右端)と固い握手。真吾さんをかつて指導したのが中村さんだった

 ふたたび世界の頂点を目指す井上拓真。いよいよ目指すべきボクシングが定まり、真の姿を発揮する──。その光明が見えた試合だった。

 井上の戦績は15戦14勝(3KO)1敗。2度目の防衛がならなかった栗原は21戦15勝(13KO)6敗。

文_本間 暁 写真_小河原友信

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