正代(突き落とし)遠藤ここまで2勝7敗と苦しんでいた貴景勝が左足首の負傷を理由に休場。3日目の北勝富士戦で痛めたそうで、たしかに最後は左足から変な形でコケている。来場所は綱取り一転カド番となってしまうが、まずはケガを治すのが先決。今場所はいい勉強になったことだろう。
優勝争いの先頭を走る大栄翔は、前日の反省を生かした相撲で、右に回り込んで逃げる北勝富士をよく見て慌てず追いかけて突き出し。1敗を守って残り5日に初優勝の夢を懸ける。
追いかけるただ1人2敗の正代は結びで相撲巧者の遠藤と対戦。立ち合い、遠藤が左ノド輪で突き起こし、正代の左腕を手繰って崩すとすぐにモロ差し。正代が左を巻き替えたが、遠藤は右上手出し投げで泳がす。そのまま体を密着させて寄っていったが、正代も左掬い投げで応戦。構わず出る遠藤を正代が土俵際で右から突き落とし。両者、ほぼ同時に倒れ、軍配は正代に。物言いがつき、協議の結果、遠藤が早く落ちており、正代の勝ち。相撲の流れは完全に遠藤だったが、正代が執念で勝ち越しを決めた。
「余裕はなかったんですけど、自分が勝ったかなあとは思っていました。最後まであきらめなかったことが勝ちにつながって、勝ち越しができたので、ここでひと息つけるかなと思います」
ひと息ついてもらっては困るのだが、それだけカド番のプレッシャーはきつかったのだろう。「場所前から追い込まれた感じだったので、今は安心しています」と肩の荷が下りた。これからは大栄翔を追いかけてほしいが、「あとは星を落とさないようにやっていくだけです」とようやく大関らしい言葉が聞けた。
敗れた遠藤は東5枚目の地位で5勝5敗。次から次へと技を繰り出す流れるような攻めは見事だったが、相手をねじ伏せるだけのパワーがない。昔、貴乃花が背中を痛めて力が入らなかったとき、「横綱には技があるじゃないですか」と言ったら、「相撲は力ですよ。力がなかったら、技も効きません」と語っていたことを思い出した。
文=山口亜土

大相撲初場所10日目 幕内取組結果
令和三年大相撲力士名鑑(「相撲」編集部/編)
相撲 1月号 初場所展望号(No.917)