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2021-01-24

【ボクシング】岩佐亮佑のライバル王者、一気にふたり誕生

接近戦から強烈なアッパーを突き上げるフルトン

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 23日(日本時間24日)、アメリカ・コネチカット州アンキャスビルでWBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチが行われ、挑戦者1位のスティーブン・フルトン(アメリカ)がチャンピオンのアンジェロ・レオ(アメリカ)に12回判定勝ちし、新王者となった。セミファイナルで行われたWBA暫定スーパーバンタム級王座決定戦では、同級2位のライース・アリーム(アメリカ)が8位のビック・パシリャス(アメリカ)を11回1分0秒TKOに下し、暫定タイトルを手に入れた。

うまさを見せたフルトンが大差判定で王座奪取

 活況のスーパーバンタム級世界戦線に、フルトン、アリーム、ふたりのつわものが新たに名乗りを上げた。

 フルトンは仕切り直しの世界初挑戦。当初はエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)が返上して空位となったWBO王座を、昨年8月にレオと争うはずだった。が、新型コロナ陽性が判明し、試合3日前に無念の撤退。急きょの代役トレメイン・ウィリアムス(アメリカ)に判定勝ちしてタイトルを獲得したレオへの指名挑戦を約束されていたわけだ。もともと8月の時点で有利を予想されていたスピーディーな技巧派フルトンは、「過去最高のコンディションがつくれた」と自信をみせていたが、チャンピオンとして臨むファイター型のレオも当然、「まだ自分のすべてを見せていない。証明したいものはたくさんある」と意欲満々。開始ゴングから無敗のふたりはトップギアの攻防を展開する。

 立ち上がりはレオのアタックが目を引いた。フルトンの攻撃の軸であるジャブに右をかぶせて牽制。初回のうちに左まぶたが切れたことでよりペースを上げ、得意のボディブローで押し込んでいく。しかし、フルトンはレオの土俵であるはずの接近戦に応じ、そこでも防御技術とショート・コンビネーションの巧さを披露。中盤にはレオの顔面を血まみれにしてしまった。終盤はアウトボクシングでレオの前進をさばき切り、ジャッジ2者から119対109、残る1者も118対110という大差の判定を勝ち取った。

「接近戦も練習ではよくやったんだ。相手の得意とするところで自分の方が優っていることを示そうと思った。そのとおりできたね」と、傷ひとつ見えない顔でフルトンは語った。戦績は19戦全勝8KO。初防衛ならず、大事をとって病院へ直行したレオは、21戦20勝(9KO)1敗。

注目の不敗対決はアリーム(左)がパシリャスから4度のダウンを奪って快勝

不敗対決をアリームが制す

 セミファイナルでWBA暫定王座を獲得したアリームは、勝利のインパクトとしてはフルトンを上回るかもしれない。

 もともと、8月にフルトンとレオが戦っていれば、アリームは今回その勝者に“挑戦”するとみられていた。が、予定は変更。パシリャスとの無敗対決で、空いているWBA暫定王座を争うことに。PBCプレミアム・ボクシング・チャンピオンのプロモート下に集うスーパーバンタム級プロスペクトとしては、アリームはひときわ年長の30歳。肩の故障で2年のブランクを作り、2018年に拠点をラスベガスに移してからキャリアを再構築してきた。対するサウスポーのパシリャスは、かつてトップランクから鳴り物入りでデビューした巧さと強打を兼ね備えるホープで、薬物中毒による長い闇から復帰。昨年9月にPBC興行でハビエル・エンカルナシオン(ドミニカ共和国)を番狂わせの6回KOに下し、今回のチャンスをつかんでいた。

 そんな、遠回りしてきたふたりの興味深いカードは、ふたを開ければアリームのワンサイド。プレスをかけるパシリャスに、長い腕で器用に組み立てるアリームのコンビネーションが次々突き刺さる。2回にはアリームが右カウンターでダウンを奪う。パシリャスの左強打が当たってきたかと思うと、アリームがカウンターをとる。6回に左フックでダウンを追加し、9回にも左フックでカウントを聞かせた。

 柔軟な上体、ステップの巧さでパシリャスの空振りを誘いながら、左右自在の攻め口で戸惑わせるアリームは、11回、右カウンターから左をフォローしてまたもパシリャスをフロアに落とし、試合を終わらせた。「今日の勝利は、自分がこの階級の本物の脅威であることを示すことができたと思う。フルトンとレオの勝者に限らず、どのチャンピオンとも戦う」というアリームは18戦全勝12KO。パシリャスは17戦16勝(9KO)1敗。

日本勢にも新たな脅威が出現

 IBF暫定王座を持つ岩佐亮佑(セレス)を筆頭に、元IBF王者の小國以載(角海老宝石)、東洋太平洋王者の勅使河原弘晶(三迫)ら日本にも多数の世界ランカーが控えるスーパーバンタム級。岩佐との統一戦の正式発表が待たれるWBAスーパー、IBF正規王座を持つムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、WBC王者ルイス・ネリ(メキシコ)、WBA正規王者ブランドン・フィゲロア(アメリカ)らが形成するトップサークルに、今回加わったフルトンもアリームもまた、日本選手たちにとっても、かなり厳しい存在になりうる難攻の試合巧者だ。

 この日の前座では、WBA暫定世界ライト級チャンピオン、ローランド・ロメロ(アメリカ)が、エイブリー・スパロー(アメリカ)を7回43秒TKOで下し、8月に獲得した王座の初防衛に成功している。

 試合前日の計量で挑戦者ジャスティン・ポールド(アメリカ)がドクターストップとなり、急遽の代役を務めたスパローを、ロメロは初回に左ダブルでノックダウン。その後もロングの強打で一方的に試合を進め、相手陣営に棄権を決意させた。戦績は13戦全勝11KO。

文◎宮田有理子 Text by Yuriko Miyata 写真◎アマンダ・ウェストコット Photos by Amanda Westcott/SHOWTIME

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