新旧スターに東京五輪代表ふたりも参戦したボクシングイベント『LEGEND』は11日、東京・代々木第一体育館で開催され、7組のスパーリングマッチが行われた。最大の注目はやはりメインイベントのWBAスーパー。IBF世界バンタム級チャンピオン、井上尚弥(大橋)対元WBC世界フライ級チャンピオンの比嘉大吾(Ambiton)の対決で、井上の圧倒的な強さばかりが目立った。比嘉の強烈な右ストレートをすんでのスリッピングでかわす井上。その表情にはまだ余裕が見える
スパーリングでもガチで勝ちに行く 日本国内で井上尚弥の“戦い”が、一般ファンに公開されて行われるのは、一昨年11月のノニト・ドネア(フィリピン)戦以来15ヵ月ぶり。もちろん、“試合仕様”ではなかったにせよ、その強さばかりが光った。強打の比嘉と終始クロスレンジでわたり合い、ロープ際に誘い込んでのカウンター、たくみなディフェンスワークだけでの組み立て、あるいは本番の試合では1度しか披露していないサウスポースタイルなど、『試用品』をさまざま盛り込みながらも、比嘉を圧倒していった。ふたりがヘッドギアを外した3回には、ショートの右アッパーだけで、今は同じバンタム級で戦うライバルをさばいてみせた。クイックネス、高速のリズム、パワーショット、そのいずれも、井上が格段に上回っていることを証明した。
「以前、比嘉選手とスパーリングしたときと差は変わらないと思いました」という井上は、「差を縮めさせることは絶対にできない。もっと引き離さなければならない。互角だったら評価を下るだけ」と「真剣度100%」ガチのスパーリングだったことを強調していた。
引退して4年を越えた内山高志(後方)だが、急ごしらえとは思えない歯切れのいいパンチを見せる多彩なマッチメイクが光る この日は全部で7つのスパーリングが行われた。“セミファイナル”では元WBAスーパー世界スーパーフェザー級チャンピオンの内山高志(ワタナベ)が、現役の日本同級チャンピオンの坂晃典(仲里)と対戦した。「20日間準備して、現役を辞めてから初めて10日間断酒した」という内山が、右のタイムリーショットに、左のボディフックを決めて、観客を沸かせていた。
岡澤セオン(右)はアマチュア世界トップクラスの技術でプロの新星、佐々木にレッスンをつけた 東京五輪ウェルター級代表に内定している岡澤セオン(鹿児島県体育協会)は、10戦全勝9KOの19歳、佐々木尽(八王子中屋)を実力どおりに翻弄していった。途中にはロイ・ジョーンズ・ジュニア(1990年代の無敵のライトヘビー級チャンピオン)ばりに、両手を後ろ手に組んで戦ってみせ、センスとテクニックをアピールした。「このルールではだれにも負けません。プロのアマチュアボクサーとして活躍します」との心意気が、心地よく響いた。
アメリカ・デビューを控える京口(左)は八重樫のアタックをいなしきった イギリスの大手プロモーション、マッチルームと契約し、3月13日にアメリカ・デビュー(テキサス州ダラス)が決まっているWBAスーパー世界ライトフライ級チャンピオン、京口紘人(ワタナベ)は元3階級制覇チャンピオン、八重樫東(大橋)相手に無難な3ラウンドを戦ってみせ、順調な仕上がりを感じさせた。
また、オープニングマッチには、K-1世界チャンピオンからプロボクシングに転向した武居由樹(大橋)が、元WBO世界フライ級チャンピオンの木村翔(花形)を、サウスポースタイルからの大胆なアッパー、右フックで攻め立てていた。3月11日に予定されるデビュー戦が楽しみだ。
文◎宮崎正博 写真◎福地和男