close

2021-03-28

【ボクシング】元世界王者・久保隼がTKO勝ちで再起2連勝

勝負の決めたのは左ストレート。久保は再起2連勝を飾った(写真:石井愛子)

全ての画像を見る
 元WBA世界スーパーバンタム級チャンピオンで現在、日本フェザー級3位にランクされる久保隼(真正)は27日、兵庫県の神戸市中央体育館で、佐伯瑠壱斗(岐阜ヨコゼキ)とスーパーフェザー級8回戦を行い、3回2分59秒TKO勝ちを収めた。久保は昨年9月、14ヵ月ぶりに再起して以来、これで2連勝となった。

 長身サウスポーの利点を活かし、ストレートの切れ味を見せつけた。一方、中途半端に接近して、不用意なパンチの危険にさらされる。短い試合時間の中に、久保の長所短所がくっきり色分けされた。

 終了直後のリング上、久保は「精神的にこれまでで一番苦しい試合でした」と明かしたうえで「さまざまな人に応援されているのだから、それに応えられるだけの練習、姿勢がなければいけません」とマイクをとおして語った。それだけの覚悟はあるか、と自分に問いかけ、そして上った今回のリングだったのだろう。

 対戦者の佐伯は好素質を認められながらも、1引き分けを挟んで3連敗中。最後の勝利を探すには2017年にまで遡らなければならない。『勝って当然』はむろんのこと、『圧倒的な内容』でなければならない。そんな思いが、久保の使命感を揺さぶっていたのだろうか。プロ12戦目で不敗のまま世界一になりながら、初防衛戦で陥落。中国で世界王座復帰を目指した戦いは、いいところなくTKOに打ち取られた。それでも戦い続けるとなれば、どの試合でも新しい可能性を示さなければならない。それは確かだった。

 立ち上がりの久保は、ことのほか好調に見えた。左ストレートのボディブローが、それこそぐさぐさと決まっていく。そのパンチがいかに見えにくく、効率的な距離を飛翔していたのかは、どのパンチにも佐伯がほとんど無反応だったことからもうかがわれる。

 ところが、2ラウンドの久保は、きわめて危なっかしい。中途半端な位置で漠然と立ち止まり、佐伯の右アッパーの5連打にさらされもした。

 その後がなかなか展望できないまま2ラウンドを終えたのだが、ただの一撃から、久保のほうへと勝負の流れは急転する。3ラウンド、アゴを捉えた左ストレートだった。佐伯はもんどりうってダウンする。立ち上がったものの、その足もとにはダメージの余韻がはっきりと見てとれた。急追する久保に対して、佐伯も右を一発ヒットするのだが、左ストレートをもろに浴びて棒立ち。レフェリーはすかさずストップをかけると、佐伯は2歩3歩と後方にたたらを踏んだ。

「たまたま途中で終わったという感じです。いい内容ではなかったが、ひとつひとつを切り取れば、いいところもあったと思います」

 勝者に満足はない。もっと安定した戦いができなければ、明暗を経た30歳が戦い続けるだけの、高い目標地点は見えてこない。その志があればこそ、安易に笑顔を見せることはできなかったろう。17戦15勝(10KO)2敗。佐伯は13戦7勝(1KO)5敗1分。

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事