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2020-05-29

シャラポワ、ラグビー日本、大坂なおみ、オカダ・カズチカ…報道写真展【BBMフォトギャラリー2】

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フォトギャラリー第2回は、「雑誌協会報道写真展」の受賞作品から。日本雑誌協会では会員社が雑誌やWeb記事に掲載した優秀な写真を集め毎年末に同展を開催。BBM写真部からスポーツ部門で選出された珠玉の写真を、撮影者の感想とともに、ご紹介します。

上写真=2012年6月9日「フレンチオープン女子シングルス決勝」マリア・シャラポワ(ロシア)6-3、6-2 サラ・エラーニ(イタリア)=フランス/スタッド・ローラン・ギャロス(撮影◎毛受亮介)

2013年入賞作品「マリア・シャラポワ グランドスラム達成!」

タイトルで使用した写真について…「シャラポワが生涯グランドスラムを達成した、まさにその瞬間を切り取った1枚です。私に与えられた撮影ポジションは、ベンチの真後ろでした。ここは選手がネット際へ出ると、ベンチが写り込んで画にならなくなってしまう角度なのです。イヤな予感…。
 迎えたマッチポイント、なんとかベースライン付近で終わってくれ、と願ってカメラを構えると、なんとシャラポワが前へ出ていったじゃないですか。つい「うわー、最悪や」と漏らしてしまったのですが、次の瞬間、カメラマンの私にも歓喜が訪れました。
 エラーニの返球がネットを越えなかったのか、シャラポワは喜びでその場に座り込んで、この恍惚の表情。無事に私のフレームの中に収まってくれたのでした」(撮影者◎毛受亮介)

2016年日本雑誌写真記者会賞「世界よ、見たか! 南アフリカ撃破。」

2015年9月19日「ラグビーワールドカップ2015イングランド大会・予選リーグ・プールB第1戦/日本 34-32 南アフリカ」=イギリス/ブライトンコミュニティースタジアム(撮影◎早浪章弘)

「『よし、こっち来い!』。心のなかで叫びました。このシーンの直前、ボールは右サイドに展開され、つまり私から遠ざかってしまいました。しかしリーチの突進が止められてラックになったのです。そのとき、「こっち来い!」の叫びとともに、600mm超望遠レンズから70〜200mmズームに持ち替えました。ファインダーの中で、左に展開しながらこちらに向かってくる選手を追います。マフィにボールが渡ったので、そのまま来るかと準備したその瞬間、マフィが左に視線を送ったのを見逃しませんでした。だから、ここではシャッターを押さなかったのです。
 マレ・サウを飛ばしてボールがカーン・ヘスケスに渡ったところから、私も勝負をかけました。画面中央から対象が外れないように、一気の連写! タックルからボールを守るように体をひねりながら、最後にダイブして、手を突き上げ立ち上がるまで、逆転トライをすべてパーフェクトに撮影できたという実感が、私の両手にずっしりと残りました。 
 試合後に画像を確認すると、やはり納得のいく写真ばかり。カメラの性能の高さに驚きながらも「やった」と遠慮なく自分を褒めないわけにはいきませんでした。こんな経験は二度とできないでしょう。歴史に残る写真を撮影させてくれた選手たちにも感謝しています。これは私のカメラマン人生のハイライトでもあります」(撮影者◎早浪章弘)

2015年9月19日「ラグビーワールドカップ2015イングランド大会・予選リーグ・プールB第1戦。南アフリカを撃破した日本の選手たち(撮影◎早浪章弘)

「日本が南アフリカをワールドカップで倒す奇跡――。スタジアムは興奮の坩堝と化していました。私はヘスケスの逆転トライの画像をカメラのモニターで確認することもせず、すかさず次の展開を考えました。カメラマンとしては、この勝利を喜ぶ全選手の集合写真を撮影する流れになると予想します。ところが私は抽選に外れて、ベンチ前まで入ることを許されたカメラマンに配られるビブスをもらうことができなかったのです。
 勝手に入って見つかったら怒鳴り散らされるか…一瞬、躊躇しました。しかし周りを見渡すとみんな興奮状態です。「ええい、行っちゃえ!」と覚悟を決めて、人を掻き分け掻き分け、サイドラインに向かいました。すると、どうでしょう。現地カメラマンがすでにジャパンの選手に声をかけて集めているではありませんか! これじゃあ、間に合わない、と思って目の前の広告看板を飛び越えると、スタッフらしき男性と目が合ってしまいました。「まずい、止められる」と思ったのもつかの間、そのスタッフが私に向かって「早く行け!」とニッコリ笑ってくれました。そして押さえたのが、このカット。今も、あの男性にはきちんとお礼を言いたい気分です。
 東京の編集部に写真を送る作業をしていると、編集部員から「やっぱり集合写真は撮れませんでしたよね」と確認されました。待ってましたとばかりに「ありまっせ」と言えたことは誇らしい思い出です。しかしよく見ると、この集合写真にリーチがいないんです。撮影は、彼がテレビのインタビューを受けている最中でした(泣)」(撮影者◎早浪章弘)

2018年入賞作品「大坂なおみ 涙の表彰台」

2018年9月8日「USオープン女子シングルス決勝」 大坂なおみ(日清食品) 6-2 6-4 セレナ・ウィリアムズ(アメリカ)=アメリカ/USTAビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センター(撮影◎毛受亮介)

「準決勝までに落としたセットは一つだけ、という快進撃で、初めて決勝まで上がってきた大坂選手。試合が始まると、あのセレナをも圧倒していきます。しかしその後、意外な展開に…。第1セットを取り、第2セットも逆転でリード。そしてセレナへの3度目の警告で1ゲームが大坂に与えられ、ゲームカウントは突如、大坂の5-3に。一気に優勝が近づき、ここから日本人カメラマンたちが急にそわそわし出したのを思い出します」(撮影者◎毛受亮介)

2018年9月8日「USオープン女子シングルス決勝」 大坂なおみ、表彰台に立つ(撮影◎毛受亮介)

「初優勝の大坂選手から大きな喜びがあふれるはずが、会場は異様な雰囲気につつまれ、悲しい顔でフィナーレを迎えることになりました。映像を目にした方も多いと思いますが、優勝スピーチ中にブーイングが起こりました。せっかくの初優勝なのに…何とも切ない気持ちになりましたが、あのまっすぐなスピーチ、そして続くセレナのスピーチで次第にブーイングはやむことになります。なんだかファンの壮大な自作自演を見せられたようで、不思議な気持ちになったものです。ともかく、本当に大坂選手は強かった。祝福の思いを込めてシャッターを切りました」(撮影者◎毛受亮介)

2018年9月8日「USオープン女子シングルス決勝」 大坂なおみ、初優勝(撮影◎毛受亮介)

「表彰式のあと、優勝カップを掲げての記念撮影に移ります。私に与えられたのは、大阪選手の背景にちょうど日の丸と星条旗が映るポジションでした。なんという幸運…と思って、大阪選手に目をやると、まだ悲しい表情が消えていません。ならば、やるしかありません。「なおみちゃーん!」。声を張り上げてこちらに向いてもらいます。「笑ってー! ほらっ!」と口角を上げる仕草をして、笑顔を取り戻してもらおうと必死で伝えます。こうして撮ったのが、このカット。まだ少しぎこちないままだったけれど、心からの笑顔の写真はこれからまた何回も撮れるはず、これはこれで一つの思い出やな! と思い込むことにしました」(撮影者◎毛受亮介)

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