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2021-05-05

【アメフト】NFLのIPPプログラム 選出に漏れた李卓「どんなに打ちのめされてもすぐに立ち上がる」 

オービック・シーガルズのRB李卓=撮影:小座野容斉

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 米プロフットボールNFLは現地5月4日、世界的な選手育成システム「IPPプログラム(International Player Pathway Program)」に、今季選出された欧州やメキシコの4選手を発表した。4選手はNFLの同地区の4チームに配属となり、チームに1シーズン帯同する。日本から挑戦していたRB李卓(オービック・シーガルズ)は選ばれなかった。


 李卓は自身のツイッターで
「全てを懸け、全てを尽くした結果は簡単には受け入れ難く、とても悔しいですが、プログラム期間中は応援してくださる方の想いが力になり、日々力強く戦う事ができました。本当にありがとうございました。」
「真の勝者はどんなに打ちのめされてもすぐに立ち上がり、前に進み続けることをこれまでのフットボール人生を通して学びました。」
とコメントを発信した。

NFLのIPPプログラムの選に漏れた李卓のメッセージ(日本語)

李卓がツイッターを通じて発信したメッセージ

名伯楽・ピオリ氏が高い評価

 李卓は昨年末に他の8カ国10人の選手と共に、日本人として初めてIPPプログラムの候補選手として選出された。1月末に渡米し、米国フロリダ州のIMGアカデミーで、10週間のトレーニングを重ねてきた。
 2月下旬には、NFLネットワークアナリストのスコット・ピオリ氏が、番組の中での「IPPプログラムの選手として、覚えておくべき2人の名」の1人として李卓を取り上げた。
 ピオリ氏は「26歳だが、タクはワークアウトすべてを時速100マイルでやるんだ。スピードとクイックネスがあって、パスキャッチは本当に上手い。とても賢くて、ブリッツもきっちりピックする。タクをぜひ実際に見てほしい」と賞賛した。
 ピオリ氏は、2000年代のペイトリオッツで人事担当副社長を7年務め「王朝」を築いた。その後はチーフスでゼネラルマネジャー(GM)、ファルコンズでアシスタントGMを務めた、いわば「名伯楽」。そのピオリ氏の評価が高かったことで、道が開けたかに思われていた。
 3月31日にフロリダ大学で開催されたプロデイ(NFLドラフトに向けた、候補選手の体力・実技測定会)で、李卓らIPP候補生も測定に参加した。その際にもピオリ氏は李卓について「他の追随を許さないワークエチックと習慣を持った、スピード以上に俊敏なバック。この春、何度も彼に会いに行ったが、信じられないほどの働き者だった」とツイートした。


NFLのチームとFA契約の可能性 CFLへ進む道も

 李卓の今後だが、NFLの各チームとUDFA契約を結ぶ道は残されている。今回、同じIPPプログラム候補生の中からは、ワシントン・フットボールチームがバスケットボール出身のサミス・レイエスとFA契約をしている。また、李卓は、4月中旬のカナダ・CFLのグローバルドラフトでも、モントリオール・アルエッツの指名を受けており、こちらに進むことも可能だ。
 ピオリ氏は、IPPプログラム選出の4人が決まった4日、自身のツイッターアカウントで、4選手に祝福のメッセージを送ったが、そのツィートの後半で、李卓について言及し「If I'm a team looking for developmental/PS RB- I would JUMP on Taku Lee @TakuLee29 (もし私が、成長性のあるRBあるいは、プラクティススクワッド用のRBを探しているチームだったら、タク・リーに飛びつくだろう。)と再び賞賛の言葉を送った。
 今回選に漏れた6選手の中で、ピオリ氏がわざわざ名前を挙げたのは李卓だけで、ピオリ氏の評価がよくわかる。李卓も即座に「I’’m ready.」とリツィートして、NFLの各チームにアピールしている。

【解説】NFLのIPPプログラムとは 

 IPPプログラムは、NFLが、北米以外の海外の選手に、米国で通用する技術を磨き、高いレベルで競争する機会を与え、最終的にはNFL選手となるような育成システム。2017年から始まった。米国のカレッジフットボールか、カナダのCFLを経由する以外に、選手となる方法が事実上なかったNFLが、国際的な選手発掘のパイプラインを強化する狙いがある。
 今回の場合、11人の中から4選手が合格。その後NFL8地区の中から、無作為に選ばれた1地区の4チームが、この4選手を1人づつ受け入れる。
 サマーキャンプにフル帯同し、開幕時には各々のチームで海外出身プラクティススクワッド(PS)として登録される。これは、通常のPSの外側にある。
 シーズン開幕後、海外出身PSのままではロースター(正選手)昇格はできないが、チームが一般PS枠で登録し直せば、正選手になる資格が生じるという。
 NFLは、2020年にはIPPプログラム出身の3選手が、公式戦に出場したとしているが、このうちの2人はドラフト指名やルーキーFAでNFLチームに入団している。
 純粋なIPPプログラム出身選手としては、ペイトリオッツのRBジェイコブ・ジョンソン(ドイツ)だけとなる。

【小座野容斉】

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