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2021-05-09

【ボクシング】ストップが早すぎた? 高山勝成、TKO負けで5年ぶり王座復活ならず

チャンピオンのパワフルなショットが高山を襲う。パワーの差は段違いだった(Getty Images)

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 WBO世界ライトフライ級11位の高山勝成(寝屋川石田)が5月8日(日本時間9日)、テキサス州アーリントンのAT&TスタジアムでWBO同級チャンピオン、エルウィン・ソト(メキシコ)に挑戦したが、9回2分44秒TKOで敗れた。サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)対ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)の世界スーパーミドル級王座統一戦の前座、7万3126名の大観衆の前で、ソトは3度目の防衛に成功。ミニマム級で世界4団体のタイトルを獲得した高山の世界2階級制覇はならなかった。

 38歳の誕生日まで4日。世界戦オファーからわずか3週間という短い期間で「できうるかぎりの準備」をしてリングに上がったという高山は、高いKO率を誇る24歳のチャンピオンに果敢に挑み、中盤はボディ攻撃で苦しめたが、こつこつと被弾を重ねてレフェリーに試合をストップされた。

 キャンプを張る時間的余裕はなく、コロナ禍下で感染予防の観点からもスパーも回避せざるを得ない。困難きわまりない挑戦に向かうことを決めた理由のひとつとして陣営が挙げたのは、昨年末の前戦の出来のよさだった。東京五輪出場というチャレンジを終え、 2016年8月以来のプロ復帰戦となった6回戦で、元日本ミニマム級、WBOアジアパシフィック・ライトフライ級王者の小西伶弥(真正)に大差判定勝ち。そこで見せた体のキレが印象的だったという所属ジムの石田順裕会長は、「尻上がりにペースあがっていった。練習に対する姿勢も素晴らしい」とベテランを評価する。4月30日に契約書にサインをし、5月3日に現地入りという強行軍の中で、0.4ポンドアンダーの107.6ポンド(48.8キロ)の体重をつくった高山は、「これまでの経験が生きた」と言った。

 そうして迎えたリング。ゴングとともに走り出た高山は、早々とハイピッチの攻防にチャンピオンを巻き込んだかに見えた。が、その忙しい動きに見栄えのいいパンチを合わされた。左右フックによるパワフルな攻撃が持ち味の王者ソトは、この日はパンチが鋭く走る。右カウンターに上下への左ダブルで、高山の凄まじい手数を凌駕する。

 チャンピオンの試合映像を入念に研究していた中出博啓トレーナーは、「うまくなっていました。以前はもっとシンプルな選手だったけれど、強くなっていたことは認めます」と試合後に語っている。そんな成長のあとをみせるソトに対し、高山は4回に左ボディを効かせ、5回には攻め来るところへ右ボディアッパーを差し込んでみせる。

 少しずつ疲れを感じさせる王者の前で、古豪チャレンジャーのステップは止まらず、8回には右クロス2発をクリーンヒット。手数も落ちない。が、ソトの右ストレート、右アッパーを被弾していたこともたしか。レフェリーはストップのタイミングを注意深く見ていたのだろう。9回、ソトが下がりながら3連打を出したところで両者の間に割って入り、試合終了を告げた。
その手数は驚異的。高山は懸命にソトに迫ったが、ダメージを与えることはほとんどなかった(Getty Images)
その手数は驚異的。高山は懸命にソトに迫ったが、ダメージを与えることはほとんどなかった(Getty Images)

 凝縮した準備期間を映画『ロッキー』にたとえ、試合では「アリのように、蝶のように舞い蜂のように刺す」と誓って臨んでいた高山は、ラウンド中に“アリ・シャッフル”を見せたり、ストップ後に全力シャドーで観客の拍手を誘ったり、敗れたものの大観衆の印象に訴えたことはたしかだ。

「前半はペースをもっていかれたかもしれないけれど、中盤で自分の攻撃も冴えてボディが効いてきたのもわかっていました。残りの3ラウンドでスパートをかけようと言っていたのに、その前のラウンドで止められてしまいました」、と悔やむ高山は42戦32勝(12KO)9敗1無効試合。「この3週間、死にもの狂いでやってきたので、まずは体をしっかり休めたい」と話した。

 2019年にアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を最終回KOの番狂わせでWBO王座に就いたソトは、これが3度目の防衛戦だった。戦績は20戦19勝(13KO)1敗。ソトと契約を結んでいるマッチルームのエディ・ハーン・プロモーターは、同じく契約選手である日本のWBAスーパー同級チャンピオン、京口紘人(ワタナベ)との統一戦を、「今夏にも」実現させたいという。

文◎宮田有理子 Text by Yuriko Miyata

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