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2021-06-08

【ボクシング】26日、ロマチェンコと対戦の中谷正義。「勝って世界戦につなげたい」

淡々とした口調で対ロマチェンコ戦への抱負を語る中谷(Photo:帝拳ジム提供)

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 26日、アメリカ・ネバダ州ラスベガスで現代ボクシングのビッグネーム、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と対戦する中谷正義(帝拳=WBO世界ライト級5位)は8日、オンラインによる会見を行った。「体の優位を活かして戦いたい」、そして「勝って、その次の世界戦につなげたい」と淡々と語った。

 まさに淡々と。もしかすると飄々(ひょうひょう)と。でも、決して「のらりくらり」と質問をやり過ごすのではなく。話せる範囲の全部をしっかり語ってくれる。こういう応答こそに、ボクサー、というより本来の魅力が見える。

 気負いひとつない。拳を交える相手は、生きる伝説と言っていい超大物だ。アマチュアでは五輪2連覇。396勝1敗。プロ3戦目で世界王座奪取。史上最短12戦目で3階級制覇。至高のテクニックで世界中を驚嘆させてきた男と戦うのだ。

「試合の話があるのを聞いたのは2月でしたか。それから意識してロマチェンコの試合を見るようになりました。穴が少ないボクサーだと思いました」

 中谷はそう語ると、勝つために何をするべきか、と今、考えていることを明かす。

「たぶん。相手はライト級がベスト(の階級)ではないと思うんです。戦う上でその階級がベストであるかないかというのはすごく大きい。そのアドバンテージを活かして戦いたいですね」

 ロマチェンコの身長は公称170センチ。中谷よりも12センチも低い。それに中谷のジムメイトでもあるホルヘ・リナレスを逆転KOに破って3階級目の王座を手にした後の戦いでは、たしかにかつてのような「人知を超える」強みは見せていない。

「接近しての戦いになると、サイドへの動きとか、驚異的な強さがあります。だから、なるべくそこで戦いたくない。ロングレンジを守りながら、ときには自分から打ち込んでいきたいと思っています」

 この破格のテクニシャンがサウスポーであることも不安材料にはなっていない。プロで左構えの選手と対戦するのは2度目になるが、「スパーリングをやっても最初から違和感はないですね」。過去の取材では「サウスポーは得意」とも言い切っている。今回もアマチュア10冠の藤田健児(帝拳)を始め、優秀なサウスポーをパートナーにスパーリングを重ねてきた。

 さらに昨年10月には、かつて中谷も対戦しているテオフィモ・ロペス(アメリカ)に敗れて、名誉タイトルであるWBCフランチャイズを含めてメジャー3団体のタイトルを失っている。ロマチェンコがそのカムバック戦であるのも、有利にことを運べるキーワードになると考えるという。

 昨年12月、世界のベストホープと呼ばれたフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)を逆転KOに破って世界を驚かせた。あのときは急な対戦話で準備期間1ヵ月ほど。自身も1年半近いブランク明けだった。今回は自分の力を高める時間は十分にある。

 もっと驚くべきは、中谷にとって打倒ロマチェンコこそが成すべき最大のテーマではないことだ。勝てばそれだけで、とんでもない偉業になるはずなのだが、その次のことを考えている。世界戦実現への道筋を作りたいという。

「この先の人生を考えれば、ロマチェンコに勝ったということより、世界チャンピオンになったほうが絶対に有利だと思うんです」

 これも別の取材のときの言葉。驚きの発想ではある。それから、今回。それから聞いたこの話も、おもしろすぎる。

「19日くらいにアメリカに出発します。練習はそれまで。ラスベガスでは減量だけですね。ほかにやりたいことですか? 試合の前に日本への土産を買いたいと思っています。試合後はバタバタしますから」

 試合は日本時間27日。日本でもWOWOWで生中継される。

文◎宮崎正博

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