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2021-07-08

【ボクシング】名勝負! “未来のスター”対決、中垣対花田はドロー

中垣(右)、花田、若き精鋭の対決は決着つかず

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 8日、東京・後楽園ホールで行われた日本ユース・スーパーフライ級王座決定戦8回戦は、アマ8冠の中垣龍汰朗(21歳=大橋)、メキシコ帰りの猛者・花田歩夢(19歳=神拳阪神)がフルラウンドに渡って、痺れるような技術戦を展開。ジャッジ1人が78対74で中垣につけたものの、残る2人は76対76。いずれも規定の2者以上に達しないため引き分けとなった。

文_本間 暁 写真_馬場高志

 両者が交錯するごとに、互いの能力を高め合っていく。ボクシングの奥の深さ、崇高さを感じさせる、そんな名勝負だった。

インサイドに滑り込ませる中垣のフリッカー気味のジャブ。これは花田を困らせた
インサイドに滑り込ませる中垣のフリッカー気味のジャブ。これは花田を困らせた

 サウスポーの中垣。オーソドックスの花田。互いに前の手で間合い、タイミングを計り、リズムを取る。多様なフェイントを掛け合って、後ろ手のパンチを引き出させ、それをかわして自らの後ろ手ブローのカウンターを狙う。互いにそれがわかっているから手を出さない──のではない。勇気をもって仕掛け、勝利を握りしめるための一打を狙い合う。リング上の。ほんの数十センチの空間でのやり取りは、遠く離れたバルコニーの記者席にもその苛烈さをビシビシと伝えてきた。まばたきどころか、息をつくことさえ忘れてしまうような攻防が続いた。

見るからに重い花田の右。中垣はこれを食っても倒れない強さを示した
見るからに重い花田の右。中垣はこれを食っても倒れない強さを示した

 シャープな中垣のブローを、花田はすり足で築く距離と、カウンターパンチの威圧で防ぐ。安定した下半身から放つ花田の重厚なパンチの連続を、中垣はヒジ、腕、グローブで受け、流し、弾くという高等技術でしのいでいった。しかし、完璧主義の中垣は、顔を触られるだけで首を何度も傾げた。これはジャッジに対して印象が悪く、相手にも隙を見せていることになる。ここだけはまだプロキャリアの浅さを感じさせた。

シャープな中垣の左。しかし、花田はこれを警戒してハードヒットをほとんど防いだ
シャープな中垣の左。しかし、花田はこれを警戒してハードヒットをほとんど防いだ

「メキシコ仕込みのボディブローを披露したい」と語っていた花田がようやく左ボディを見せたのは6回。そして続く7回に、左フックで中垣のレバーを捉え、さらに右アッパーでみぞおちを襲う。急速に動きを止めた中垣は、ダウン寸前の様相となったが、ここで持ちこたえる。そして最終8回、先に仕掛けてアグレッシブさをアピール。花田の勢いを止めたのが大きかった。

メキシコで体得した花田の強烈な左ボディブローが、中垣の動きを止めた
メキシコで体得した花田の強烈な左ボディブローが、中垣の動きを止めた

「悔しい。とにかく悔しい」と、中垣はまるで敗者のようにうな垂れ、「花田選手は評判どおり、強い選手でした」と讃えた。そして、「アマのときも負けた後に僕はさらに強くなった。今日も、この悔しさをバネにさらに強くなります」と誓った。

「カウンターを警戒して、あそこは行けなかった。僕の甘さ」と、花田は7回のビッグチャンスを振り返った。しかし、「ジャブのスピード、タイミング、距離、出入り。中垣選手はすべてトップボクサー。勉強になりました」と、花田は、さばさばと語った。勝てなかったことよりも、高いレベルの選手とやり合えた喜びを感じさせる。

 あれだけ凄まじいやり取りをしたにもかかわらず、両者の顔には傷ひとつない。互いが高性能を備えているから、打ち合っても当てさせない。これがボクシングだ。

 この試合を観戦したわれわれは、ひょっとしたら“歴史的瞬間”に立ち会えたのかもしれない。中垣と花田。若き精鋭の未来は、あまりにも眩しく光って見える。

中垣:3戦2勝(2KO)1分
花田:7戦6勝(4KO)1分
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