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2021-07-22

【陸上】寺田明日香が陸上に復帰して10年前の記録を超えられた理由【連載#8】

東京五輪女子100mH代表の寺田明日香(ジャパンクリエイト)



万人に好かれなくとも近くの人を幸せにする

 陸上をやめて表舞台から降りたとき、“選手というフィルター”がなくなった私はどんなふうに人から見られるんだろうと怖くて仕方がありませんでしたが、周りの人たちはフラットな目で、一人の人間としての寺田明日香を評価し、お付き合いをしてくれました。

 そういった経験が、「他人にどう思われようと自分は自分であり、万人に好かれなくても、近くの人たちを幸せにできる人間でありたい」と、強く思えるようにさせてくれました。

 なので、身体が変わろうが、走りが変わろうが、勝とうが負けようが、自分の想いを強く持てるようになりました。

 第一次陸上選手期から私を知っていた関係者の方々に会うたび、「なんか変わったよね〜!」と、言っていただけることも多くなりました。

 うれしく思う反面、「以前の私は、どれだけ迷惑をかけていたんだ……?」と思ってしまいますが、その分を少しずつお返ししていけたらと思っています。

 また、ほかの選手とのコミュニケーションも取れるようになりました。競技をしている一選手として正解なのか分かりませんが、困っている選手、頼ってくれる選手は同じ種目であろうと力になれることがあるなら力になりたいと思うようになりました。これは、ラグビーのときに仲間に教えてもらったことです。

 割り切りと切り替えとあきらめ。

 若いときには備えられなかった心理的な装備を持って復帰できたことが、人間的な成長と10年越しの自己ベスト更新につながっていると信じています。


文◎寺田明日香 写真◎BBM


Profile
てらだ・あすか
1990年1月14日、北海道生まれ。柏丘中→恵庭北高→北海道ハイテクAC(以上、北海道)→パソナグループ→ジャパンクリエイト。小学生時代に全国で活躍し、中学では伸び悩むも、高校では100mHでインターハイ3連覇、3年時は100m・4×100mRとの三冠。2008年の日本選手権では100mHで史上最年少優勝を飾り、10年まで3連覇。09年のベルリン世界選手権に出場。13年に引退し、大学進学・結婚・出産を経て、16年8月に7人制ラグビー転向。18年12月、陸上競技に復帰し、19年9月に12秒97(+1.2)を出し、19年ぶりに日本記録を更新。ドーハ世界選手権に出場。東京五輪イヤーの今季、4月に12秒96(+1.6)、6月に12秒87(+0.6)と立て続けに日本記録を更新。11年ぶりに日本選手権優勝。東京オリンピックでは決勝進出を目指す。

文◎寺田明日香 写真◎BBM

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