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2021-07-14

【陸上】寺田明日香「追い込んで落ちるところまで落とす」57年ぶりの五輪ファイナルを目指す“賭け”【連載#0】

東京オリンピックに出場する寺田明日香(ジャパンクリエイト)

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陸上競技からの引退、結婚、出産、7人制ラグビーへの挑戦を経て、陸上界に復帰した女子100mハードルの寺田明日香選手。東京オリンピックでは日本女子短距離で57年ぶりのファイナルを目指しています。7月31日の女子100mハードル予選まで、陸上競技マガジンに掲載された寺田明日香選手の連載を毎日公開!

※このコラムは『陸上競技マガジン』2021年8月号に掲載されました。

今、追い込んでいます

 日本代表発表からの数日間は、本当にいろんな方からおめでとうの連絡をもらって、オリンピックってすごいなとじわじわと思えてきています。

 私自身は、東京五輪が決まって、ホッとした部分がすごく大きかったです。第一次陸上選手期に一度オリンピックを逃していて、もう行けないと思って陸上をやめて、また目指して戻ってきているので、もっと「うわーっ」と湧き上がるものがあるのかと思ったのですが、「入ってた、良かった……」というのが正直な感想です。

 ロンドンのときにオリンピックに行けていたら、すごく喜んでいたと思うんですよね。今はもっと先に行かなければいけないという気持ちがあるので、「ゆっくり休んでね」というメッセージもいただいたのですが、いやいや休めないです、と(笑)。

 日本選手権から戻って、翌日から追い込んでいます。ここで疲労を取らずに落ちるところまで落として、オリンピックのレース前の調整期間に入ったときにガツッと休んで、リバウンドを狙うプランです。

 結構な賭けではあるのですが、せっかくなのでチャレンジしたいと思っています。オリンピックが終わってから、「やっておけば良かった」となるのが一番よくないので、技術面もフィジカル面も、かなりガツガツやっている状況です。

落ち状態で迎えた日本選手権

 日本選手権を振り返ると、青木選手(益未、七十七銀行)が負傷で欠場すると分かった時点で、緊張感が薄れてしまう部分もあるだろうなとは思っていました。ギリギリのレースにはならないだろうし、記録との戦いになると。青木選手とは、ずっと一緒に走ってきて、今季は3戦で2勝1敗だったので、日本選手権で一緒に争ってオリンピックの参加標準を切りたいね、と話していました。欠場の連絡をもらって「残念だね。でも、ワールドランキングに入ると信じて、無理しない方がいいよ」と伝えました。

 日本選手権では、青木選手も見ているので、ふがいないレースはできないですし、もしかしたらジャマイカ選手権のオマー・マクレオド選手(リオ五輪の男子110mH金メダリスト)のようにハードルにぶつけて転んで、ダメになるかもしれない……。また別の緊張感がありました。結果、ランキングで3人が東京五輪のメンバーに入れて、青木選手には「治しておいて良かったじゃん」と話しました。

 タイムに関しては参加標準の12秒84を突破できず、残念な部分が大きいです。ただ、木南記念、布勢スプリントを走ってきて、かなり“落ち状態”になってきていたのは自分もスタッフも分かっていたので、落ちている状態のなかでも標準記録を突破するには何をどう変えたら良くなるかというのを、予選から決勝まで一本一本考えながら走っていました。

 自分ではハードルにアタックしているつもりでも、客観的に見たら浮いていた。主観と客観がズレたなかでも、準決勝・決勝と13秒0台(13秒06、13秒09)を出せて、最低ラインがそこになっているというのは、全体としてはレベルアップできているということではありますが、その最低ラインから、どう上げていけるか。日本選手権が終わってからまたすぐ考え始めて、今は疲労困憊です(笑)。

 コンディションに関しては、本当に難しいなと久々に感じました。山縣選手(亮太、セイコー)とも話したのですが、「ここで記録を出したい」という状態をつくってきて、それを3カ月間、キープし続けるのは難しいよね、と。自分の体は同じように動かしているし、同じように調整もしているのにズレていくというのは、人間がやっているんだなという感じがします。

 なんだかんだ悩んで、考えて、ブツブツ言いながらも、ちゃんと練習場に行って、ちゃんと練習をやっているので、そういうことも含めて、今は陸上を楽しめているのかなとは思っています。


11年ぶりの日本選手権トロフィーを受け取る

写真/中野英聡

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