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2021-07-17

【ボクシング】佐々木尽が大逆転! 2度ダウン食うも、湯場海樹を2回KO

この瞬間を待っていた! 佐々木はワンチャンスを見逃さなかった

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 これまた興奮のるつぼ! 17日、東京都・八王子市富士森体育館で行われた日本ユース・スーパーライト級8回戦は、チャンピオン佐々木尽(19歳=八王子中屋)が初回終盤と、2回早々に、1階級下(ライト級)のユース王者・湯場海樹(22歳=ワタナベ)にダウンを喫したものの、左フック一撃で倒し、2回2分3秒、大逆転KO勝利を遂げた。

文_本間 暁 写真_小河原友信

佐々木が左フックを打ち出す瞬間を、湯場は完璧に把握していた

 わずか5分の間に、ボクシングの醍醐味と怖さ、そのすべてがギュッと凝縮された。

佐々木の左フックを、湯場はかわし続けていた
佐々木の左フックを、湯場はかわし続けていた

「湯場選手の左は全然見えなかった」と佐々木。日本王座5階級制覇の父・忠志さん譲りの左を披露した湯場

「湯場選手の左は全然見えなかった」と佐々木。日本王座5階級制覇の父・忠志さん譲りの左を披露した湯場

 長身サウスポーの湯場は、佐々木が左フックを打ち出すタイミングを完璧に把握していた。頭で考えるよりも早く、全身の感覚で、だ。初っ端から左フックを振り回す佐々木を、悠然とかわし、左右アッパーカット、左ストレートとショートで放ち、回り込む。体ごと突っ込んで密着し、クリンチ際にガシガシと左右をねじ込む佐々木をやりすごすと、佐々木が左フックを打とうと体を開いた瞬間に、左ストレートを突き刺して、尻もちをつかせた。

 ラウンド終盤だったこともあり、終了ゴングになだれ込んだ感。続く2回、どちらが仕掛けるかが注目だったが、劣勢を取り戻そうと先手で攻めたのは佐々木だった。
 が、ふたたび左フックを打ち出す瞬間、湯場は左ショートストレート一閃。またしてもキャンバスに身を落とした佐々木、「1度目はダメージがなかったけれど、2度目はありました。湯場選手のパンチは、これまでもらったことがないくらい硬かった」

 立ち上がった佐々木を、湯場は一気に攻め上げる。青コーナーに詰めて強打の連打を降り注ぐ。だが、「立ったとき、足はもうしっかりしていたし、湯場選手のラッシュも全部見えていたのでガードで防ぎました」と佐々木。湯場が連打をやめると、「もっと来い!」と両グローブで誘い、元気アピールをしてみせた。
「あの連打で、レフェリーストップに持ち込みたかった」と湯場が悔やんだシーンだ。

2度のダウンが両者の“立ち位置”を入れ替えた

2回早々、佐々木が2度目のダウン。これは効いていたはずだった、が…

2回早々、佐々木が2度目のダウン。これは効いていたはずだった、が…

 中央でのやり取りにシフトした両者、ラッシュで仕留めることはできなかったものの、流れは完全に湯場のものだった。あとはもう1度、自分のボクシングを立て直し、佐々木の左フックとクリンチ際だけを警戒すればよかった、はずだった。

 佐々木に左フックを打たせ、そこを左ストレートで捉える。相手を動かして絡め取る。それが奏功しかけた湯場。対して、右は届かず、左リードを打つ気も端からなく、ただひたすら必殺の左フックを決めにかかって罠に落ちかけた佐々木。この両者の“立ち位置”が、佐々木の2度のダウンで入れ替わった。

 左ストレートを当てれば倒せる、という頭にチェンジした湯場、左を打たせてそこに左フックを合わせるという佐々木。両者のポジショニングは、2度の交錯とは異なってもいた。湯場が左を放つ。そこへ佐々木の後出し左フックがズドン。右顔面をハードヒットされた湯場がぐにゃりとキャンバスに落下する。這いつくばりながら辛くも立ち上がったものの、足元が定まらずロープへ突っ込み、レフェリーが10カウントを数え上げた。

 ボクシングの間合い同様、ほんのわずかの気持ちの揺れ、移ろいで、勝者と敗者が明暗を分ける。あまりに残酷で、だからこそ美しい。一瞬の開きを切り取った22歳も、そして、あんな瀬戸際からあの瞬間を支配した19歳も恐ろしく、そして見事だった。

 佐々木は11戦11勝(10KO)、湯場は10戦7勝(5KO)1敗2分。

「いい試合をしよう!」と健闘を誓い合った平岡(右)と佐々木
「いい試合をしよう!」と健闘を誓い合った平岡(右)と佐々木

 勝者・佐々木は、今秋、日本同級1位でIBF8位にもランクされる平岡アンディ(24歳=大橋)との日本王座決定戦に駒を進めた。
 リングに上がり、佐々木を祝福した平岡、佐々木ともに「日本王座も通過点」と声をそろえた。
 昨年2月にスパーリングしている両者。防御技術に長け、カウンターも巧妙なサウスポー平岡が、ひらりひらりとかわしながら、プレスをかけ続ける佐々木にカウンターを決めてグラつかせ、途中ストップというシーンを見た。トップランク・プロモーションと契約し、ラスベガスですでに2戦。さらに進化を遂げて自信を見せる平岡に対し、佐々木も「僕も伸びているし、試合になれば自信がある」と豪語。対サウスポーへのバリエーション、左フックを当てるための方策が課題となろうが、いずれにしてもスリリングな試合になること必至だ。

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