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2021-07-23

【TOKYO2020ボクシング】メダル候補、岡澤セオンの初戦はアジア予選で敗れたビカシュ

初戦から雪辱戦となる岡澤(右)。栄光への苦難の道を切り開くことはできるのか

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 東京オリンピックのボクシング競技(東京・両国国技館)は24日からトーナメントがスタートする。日本チームにとって初日から勝負の1日となった。男子では最大のメダル候補とされるウェルター級の岡澤セオン(INSPA)は、昨年のアジア予選2回戦で敗れているクリシャン・ビカス(インド)と対戦する。また、同じリングには女子フェザー級の入江聖奈(日体大)も上がる。そのほかの日本選手も最初の3日間で代表6選手すべてが出そろうことになっている。

24日 イブニングセッション(17時~)
女子フェザー級1回戦
入江聖奈(日体大)対ヤミレス・ソロルザノ(エルサルバドル)
男子ウェルター級1回戦
岡澤セオン(INSPA)対クリシャン・ビカス(インド)

25日 イブニングセッション(17時~)
女子フライ級1回戦
並木月海(自衛隊)対キャセリン・ナンジリ(ウガンダ)
男子ライト級1回戦
成松大介(自衛隊)対フィストン・ムバヤ・ムルンバ(コンゴ)

26日 モーニングセッション(11時~)
男子フライ級1回戦
田中亮明(中京学院大中京高教)対ヨエル・フィノル(ベネズエラ)
男子ミドル級1回戦
森脇唯人(自衛隊)対ダニヤル・シャバフシュ(イラン)
※試合は『Gorin.jp』でライブ・ストリーミング中継が行われる予定。

まずは雪辱。岡澤はそれから強敵ばかりが潜む森に突入する

 岡澤にとっては最初から試練の戦いだ。ビカスには16ヵ月前の対戦で敗北を喫している。その一戦、まずまずの立ち上がりながら、2ラウンドにまき返され、勝負の3ラウンド目に焦りから攻防のバランスを崩してしまった。ビカスは岡澤と同じ同じサウスポーで馬力があり、飛び込んでの左強打、離れた距離からの右ジャブ、ストレートも強い。また、プロとしてアメリカ・ニューヨークのマディソンスクエア・ガーデンで戦った経験も持つ。いきなりの難関だが、スピードやセンスそのものでは岡澤が上回る。一度、負けた相手だけに、対策も立てやすいはずだ。

 もし、雪辱を果たしても、岡澤が次に対戦するのはロニエル・イグレシアス(キューバ)。2008年の北京五輪銅メダル。続くロンドン五輪では金メダル、そして32歳の今もトップ戦線を往く超絶技巧のサウスポーだ。プロの世界でもそうだが、アマチュアでもこのクラスはきわめてレベルが高い。ただし、「(
オリンピックスタイル・ボクシングの)ルールなら、世界のだれにも負けない」と語る岡澤が、挑戦者の気持ちを忘れないなら、打ち破れない壁ではない。岡澤の能力にはそんな期待をかけていいほどの可能性が確かに宿って見える。

 入江の初戦の相手は中米の小国エルサルバドルからやってくるヤミレス・ソロルザノ。すべての要素で入江のほうが一枚も二枚も上回る。実際にソロルザノに国際的な実績はほとんどない。実は日本選手としての一番手になるのは入江。緊張や無用な力みで、無駄な打ち合いに巻き込まれなければ、怖いライバルではない。
タフで力強いビカシュ(左)の攻めを、岡澤はいなしきれるか
タフで力強いビカシュ(左)の攻めを、岡澤はいなしきれるか
日本選手のトップバッターは入江聖奈(左)。まずはチームを勢いづけてほしい
日本選手のトップバッターは入江聖奈(左)。まずはチームを勢いづけてほしい

未知の力を持つアフリカ勢と戦う並木、成松

 25日の夕方からのセッションに出場する女子フライ級の並木月海(自衛隊)、男子ライト級の成松大介(自衛隊)はともにアフリカ勢と戦う。並木はキャセリン・ナンジリ(ウガンダ)、成松の相手はフィストン・ムバヤ・ムルンバ(コンゴ)だ。ナンジリ、ムバヤ・ムバンバともにアフリカ予選の準決勝、ボックスオフで敗れながら、最終選考で出場権を与えられた選手である。

 ナンジリは大きく跳ね飛ぶように接近戦してきて、ビッグパンチを狙ってくる。積極果敢で、右のパンチはフック中心ながらも複数の角度があるが、攻めは単調に見える。ふんだんに動き回るサウスポー、並木が本来の力が発揮できれば、それほど難しくなく打ち破れるはずだ。

 成松が対するムバヤ・ムバンバはペースを与えると、いささか厄介かもしれない。力感こそないが、軽快にワンツーから左アッパーとフォローしてくる。クロスレンジでの展開になっても、左右アッパーを中心に手数は多い。ただ、ここまで確認できた映像を見る限り、サウスポーとの対戦では消極的になる傾向もあった。ベテランらしく巧みに間合いを作り、さまざまなフェイトで切り崩しにかかる成松としては、その術中にすっぽりとはめて攻略していきたいところだ。

 注意すべきは、アフリカの選手は技術面で粗削りでも、身体能力はとても高い。ナンジリ、ムバヤ・ムバンバともに短期間で大きく力をつけている可能性もある。決して油断はできない。
田中亮明(左)は初戦から大きな勝負になる
田中亮明(左)は初戦から大きな勝負になる
田中の対戦相手はフィオル。リオ五輪の銅メダリストだ
田中の対戦相手はフィオル。リオ五輪の銅メダリストだ

リオ銅メダリストと対戦する田中亮明

 男子フライ級の田中亮明(中京学院大中京高教)も、いきなり試練の一番となった。対戦者はヨエル・フィノル(ベネズエラ)。リオ五輪銅メダリストである。しかも、このフィオルはあのエドウィン・バレロの義弟にあたる。

 バレロと言えば、日本のリングでも大活躍し、27戦オールKO勝ちという記録を残して非業の死を遂げた元WBA世界スーパーフェザー級、ライト級チャンピオン。フィオルも同じサウスポー。バレロのような爆発力こそないが、センス豊かなアウトボクシングを見せる。軽いフットワークで身を翻し、鋭い左ストレート、さらにこれまたよく切れる右フックもある。すでにプロでも3戦しており、すべてに勝利している(1KO)。

 経験豊かなサウスポー、田中にとっても難敵である。思い切って距離をとるか、逆に強引に打ち合いに引きずり込むか。なかなかむつかしい選択になるが、とにかくフィオルの速い動きを封じたい。そして、こちらは実の弟でになるプロ世界3階級制覇の恒成(畑中)のような一撃強打を決めて、初戦突破を狙いたい。

 男子ミドル級の森脇唯人(自衛隊)はサウスポーのダニヤル・シャバフシュ(イラン)と対する。森脇も身長188センチの立派な体格の持ち主だが、ジャバフシュも大柄で典型的なパワーパンチャーだ。力の込もった左パンチは重い、もっとも、自分の戦いたい距離を乱されると雑になる。2019年、ところも同じ両国国技館で行われた五輪テストマッチで、アメリカ・チャンピオンのトロイ・イスリーから金星を挙げている森脇だけに、連打速攻の持ち味を出し切れば、十分に突破できる相手に思える。

 もし、勝てばオレクサンドル・ヒズニャク(ウクライナ)が待っている。自国では“ロマチェンコ2世”と呼ばれているが、こちらは典型的なスラッガー。「3度の五輪経験でメダルを」と望みを語っている森脇にとって、この大会で絶対王者と拳を交えることは、実り多き経験にもなるはず。ぜひとも、この1回戦を突破してほしい。

文◎宮崎正博 写真◎ゲッティ イメージズ、善理俊哉
Photo by Getty Images, Shunya Seri

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