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2021-08-11

【女子ボクシング】プロも負けてない! 大阪のリングで女子パワー躍動。

左でコントロールし、右を当てる成田

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 11日、エディオンアリーナ大阪第2競技場で行われたOPBF東洋太平洋女子ライトフライ級王座決定戦8回戦は、同級2位で日本ミニマム級チャンピオンの成田佑美(32歳=姫路木下)が、日本アトム級6位の伊賀薫(28歳=真正)を3-0判定(79対73、79対73、78対74)で下し、新王者となった。

写真_松村真行

すべての面で成田に一日の長

多彩だった成田(左)の左

多彩だった成田(左)の左

 4月の世界挑戦のために、緒方汐音(寝屋川石田)が返上した王座の決定戦は、階級こそ違えど日本王者・成田の巧さが際立った。体格で劣り、引きのボクシングで待ち構える伊賀に、自信満々の様子で迫り、多彩な攻撃でポイントをピックアップしていった。特に目を惹いたのは左ジャブ。あるときはリズムを取り、あるときは伊賀の右を誘い、そしてあるときは深く強く差し込む。これがあるから、続けて放つ右ストレート、左フックもヒットする。

引いて右を合わせる伊賀。しかし、成田は即座に対応した
引いて右を合わせる伊賀。しかし、成田は即座に対応した

 フィジカル面での劣勢を感じた伊賀は、うまく距離をとって成田を誘い込み、右カウンターをヒットして対応した。成田の連打の合間に入れる右は、ときに効果を発揮したが、成田はそれを感じ取ると、いきなりの右で入ったり、ジャブで撹乱したりと攻め口を自在に変化させる。かと思えば、中盤以降は体の力を生かして接近戦を挑み、中から右アッパーカットを突き上げるなど、バリエーションが豊富だった。

 伊賀はバランスが良く、ストレート系ブローも実に整っている。だが。中盤以降は心の余裕を失い、体のバランスも乱れた。変化を加えようと左右フックも見せたが、気が急いて放つ連打のため、確実性を欠いた。体の正面もガラ空きとなって、成田にそこを突かれるところもあった。伊賀にとってのフック系ブローは、かえって自らリズムを失った理由にも見えた。

元日本ミドル級王者・江口啓二トレーナーと成田
元日本ミドル級王者・江口啓二トレーナーと成田

 すべての面でリードしていた成田は、おそらくストップまで持ち込みたかっただろう。伊賀は、自ら仕掛ける形や、サイドへ回りながら相手を誘うやり方など、まだまだ学ぶことがある。それだけ伸びしろがある。

 成田の戦績は13戦6勝(1KO)4敗3分。伊賀の戦績は7戦4勝2敗1分。

格闘戦士・赤林檎は元全日本王者下す

ナチュラルタイミングを持つ赤林檎の右

ナチュラルタイミングを持つ赤林檎の右

 総合格闘技『DEEP』から転身し、4月にデビューした赤林檎(本名:中井麻美、26歳=真正)は、2018年全日本ウェルター級王者(アマチュア)で、これがプロデビュー戦となるサウスポーの菊池真琴(34歳=山木)とのスーパーバンタム級6回戦で3-0勝利(58対56、58対56、58対56)。2勝目(1KO)を飾った。
 初回はリングを大きく使った菊池が、赤林檎をうまくかわしたが、2回開始早々、赤林檎は半身から左、1拍おいて素早いワンツーをヒット。これが菊池の心を揺さぶった。奥の手の同時打ちでも赤林檎の右が優る。さらに、右から返す左フックが普通の軌道とは異なり、菊池はこれにも手を焼いた。
 ボクシングキャリアに優る菊池が、これまで体験してきたものとの違い──。ナチュラルなものでもあり、ボクシングにはない格闘技経験によるものでもあろう。赤林檎の大きな武器だ。

終盤、菊池(右)も意地を見せた
終盤、菊池(右)も意地を見せた

 しかし、菊池も踏ん張った。先手で踏み込んで左を当てる。強打を浴びても決して退かない。全日本王者、五輪を目指した選手の強烈な意地だ。赤林檎は疲れもあっただろう。瞬間瞬間で気を抜く場面もあり、これは今後改善すべき点である。
 クリンチ際の腕の使い方や、体の強さも赤林檎のストロングポイント。パンチのナチュラルタイミングを失わず、伸びていってほしい素材だ。

巧くて強い! 山中菫は3連勝

まだ4回戦ながら、実力はトップクラスの山中(右)
まだ4回戦ながら、実力はトップクラスの山中(右)

“元WBO世界ミニマム級王者(竜也)の妹”という肩書は、もうそろそろ必要ない。そう感じさせるほど、日本アトム級9位・山中菫(やまなか・すみれ、19歳=真正)のボクシングは安定感抜群で、洗練されている。デビュー4戦目(3勝1KO)でまだ4回戦ながら、国内女子の中でも突出した技術を持っているように思う。
 アトム級4回戦で、同級10位・村井理(むらい・りん、36歳=グリーンツダ)とのサウスポー対決となったが、身長で11cm上回る村井の攻撃を、すいすいとヘッドスリップ、ウィービングでかわしながら容易に潜り込む。下半身主導のボディワークは実に滑らかで、攻撃にも即、直結していけるのだから、相手はたまらない。入り際の左カウンター、入りながら左、入り込んで死角から突き上げるようにして打つ右フック……。もちろん、グローブ、腕、体のちょっとした動き、前足の動作など多彩なフェイントを入れる“入る前段階の動作”も多様。見ていて実におもしろい。
 おそらく本人はストップしたかっただろうが、これだけ自在に動き、様々な局面に対応出来、主導権を握っていけるのだから、自然とそういう勝ち方はできていくはずだ。
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