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2021-08-24

【泣き笑いどすこい劇場】第3回「あのとき、あの発言」その2

平成17年九州場所の表彰式。無理なお願い(?)も言ってみるものですね

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あのとき、あんなことを言ったばかりに、と後で後悔したことはありませんか。“口は災いの元”、いいえ“口は幸運の元”でもあります。思い切って口に出して言ったおかげで、思いもしなかったいいことや、ときにはその反対のことも起こったりします。この際、腹の中にしまって置かず、堂々と言ってみてはいかがです。今回の悲喜劇ポイントは、あのとき、あの発言のおかげで――です。

総理を呼んだひと言

平成17(2005)年1月24日、前日に終わったばかりの初場所で全勝優勝した横綱朝青龍は首相官邸で小泉純一郎総理から総理大臣賞を授与された。このとき、朝青龍は、

「総理、ぜひ相撲を見にきてください」

と要請。小泉総理もこれに応えて、

「よし、わかった。(1年間)全部優勝したら、見に行こうじゃないか」

と大きく頷いた。どうして小泉総理が年間制覇にこだわったかと言うと、この前年、朝青龍は秋場所だけ大関魁皇に優勝をさらわれて史上初となる年間完全制覇を逃し、

「今年はリベンジする」

と意気込んでいたからだ。

そして、その年の納めの九州場所、朝青龍は中盤から独走状態を築くと千秋楽を待たず、14日目に優勝を決め、ついに待望の年間完全制覇と7連覇、さらに翌千秋楽には年間最多の84勝とトリプル新記録を達成した。国会議員は公約が命だ。こうなると、小泉総理も約束を違えるワケにはいかない。

「今日は(初場所後の)約束を果たすためにきた」

と千秋楽、わざわざ日帰りで東京から福岡に飛んで来て幕内の取組を見た後、土俵に上がって自ら朝青龍に総理大臣杯を手渡し、

「新記録、大記録、みごとだ。おめでとう」

と声を張り上げた。小泉総理の土俵登場は、総理就任直後の平成13年夏場所千秋楽、横綱貴乃花が右ヒザを痛めながら優勝決定戦で横綱武蔵丸を破った“鬼の形相優勝”以来、2度目。この最初のときも、

「痛みに耐えてよくがんばった。感動した。おめでとう」

とアドリブで優勝した貴乃花を称え、観客の大拍手を受けている。

自分のひと言で総理の大相撲観戦が実現した朝青龍は、

「本当にありがたい。うれしいですね」

と二重、三重の喜びに浸っていた。やっぱり声はかけてみるものですね。

月刊『相撲』平成23年1月号掲載

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