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2021-10-03

【ボクシング】福永亮次が梶颯をきわどくかわし、3つのタイトルを守る

中盤戦の不利にしぶとく対応した福永(右)が最後に梶を突き放した

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 東洋太平洋、WBOアジアパシフィック、日本スーパーフライ級の3本のベルトがかけられたタイトルマッチ12回戦は2日、東京・後楽園ホールで行われ、チャンピオンの福永亮次(35歳=角海老宝石)が、梶颯(24歳=帝拳)に2-0の判定勝ちを収めた。福永は試合後、世界挑戦の希望を明かしている。

梶は中盤戦につかんだ流れを保ち切れず

 すべての戦評は結果論になってしまうのだろう。ただ、この試合、たったひとつの戦術選択が、勝敗を色分けするキーポイントになったのは間違いない。

 5ラウンド、梶は決定的に近いチャンスを作ったように見えた。ボディに左ストレートを投げ込んだサウスポー、福永の打ち終わりに見事な右ストレートを狙い打ち。それも2度まで。いずれのときも福永はばたついた。それまで、間欠的にしか手を出していない梶が、一気に流れを変えるかに思えた。ところが、6ラウンドの大半、再び様子見に転じてしまう。福永がボディ中心の攻めを顔面へと軸を切り替えて目先を変えたのも確か。ただ、ここでもうひとつヤマ場を作れなかったことが、この後の採点に響くことになる。
不敗のチャレンジャーは善戦も攻め数が少なすぎた
不敗のチャレンジャーは善戦も攻め数が少なすぎた

 7ラウンド、梶は右ストレートでチャンスを作り、揺らぐ福永をコーナーからコーナーへと追った。8ラウンドは再び攻めよどんだが、最後の最後に右を打ちこみ、勢いをつなぐ。9、10ラウンドも、右に加えて左フックを好打して打ち勝った。だからこそ、6ラウンドの逡巡が惜しかった。ここで流れを一転させていれば、福永の闘志を根元近くから切り取るくらいの一方的な展開になっていたかもしれない。

 10ラウンドが終わってポイントはほぼ互角。勝負の行方はチャンピオンシップラウンドと言われる最後の2つのラウンドにゆだねられた。やや旗色が悪くても、しぶとく対応してきた福永に対し、8回戦までしか経験のない梶はここで後手に回ってしまう。チャンピオンにボディを攻められ、上下の打ち分けにさらされる。そして勝負は決した。

 採点は115対113で福永が2人と114対114のドローがひとりだった。

 16戦目(15勝9KO)で初黒星の梶にとってはあまりに惜しい戦いになったが、これもキャリアと考えたほうがいいのだろう。一方、これまでの14勝(4敗)すべてがKO勝ちだった福永も新たな経験を強調する。「強い梶選手に初めて12ラウンド、フルに戦って勝てたのだから、キャリアを踏めたと思っています」。そして、前日のオンライン会見で予告していたとおり、世界アタックを宣言した。「まだ、(世界王者の)背中は遠くにしか見えないけど、35歳だし、先を急ぎたいですね」。自ら認める2つの課題、ディフェンス力強化と攻撃に厚みを加えることができたなら、その強打は世界の舞台でも号砲を鳴らすかもしれない。
日本王座への挑戦権をかけた一戦、久我(左)が田村に判定勝ち
日本王座への挑戦権をかけた一戦、久我(左)が田村に判定勝ち

元チャンピオン同士の挑戦者決定戦は久我が完勝

 前座8回戦として行われた、元日本チャンピオン同士による日本スーパーバンタム級最強挑戦者決定戦は、久我勇作(30歳=ワタナベ)が田村亮一(34歳=JBスポーツ)に判定勝ちを収めた。

 両者は3度目の対戦。豪打の持ち主、久我が2勝しているが、この日は慎重だった。中間距離を守り、長い右クロスを打ち込んでいく。いずれのパンチもやや置きにいくような打法なのだが、着実にリードを奪った。3ラウンドにクロスレンジをつき、久我の強打に跳ね返された田村は、その後はなかなか踏み込めない。多くのパンチが届かないままでは、ポイント争いの分は悪い。7、8ラウンドには久我の右、左フックがようやく威力を増し、勝負を決定づけた。採点は1ジャッジが意外にもドローとしたが、ほかの2人は大差をつけている。

 久我はこの勝利で来年のチャンピオンカーニバルでチャンピオンの古橋岳也(川崎新田)と対戦する権利を手に入れた。古橋には今年1月にTKO負けで日本王座を奪われており、リベンジマッチとなる。「やられたらやり返す。次は圧倒して倒します」と久我は力強く復讐宣言している。

文◎宮崎正博 写真◎菊田義久

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