BBMカードの編集担当が担当アイテムについて思うところを記す当連載。
今回は「BBMルーキーエディションプレミアム2021」について語ります。今年は史上屈指のルーキー大豊作
2021年シーズンのプロ野球は、近年まれに見るルーキーの大豊作だった。昨年の佐々木朗希のような超大物こそいなかったが、即戦力組を中心に、例年なら新人王当確レベルの成績を残す選手が続々と現れたのは、ここ数年ではちょっと記憶にない。ひょっとすると、史上最高レベルではないか。校正作業でレギュラー裏面の成績をチェックしながら、そう感じた。
参考までに、一軍で印象的な活躍を見せたルーキーたちのシーズン最終成績を列挙してみよう。
<セ・リーグ>栗林良吏(広)53試合 0勝1敗37S 防0.86伊藤将司(神)23試合 10勝7敗0S 防2.44牧 秀悟(De)137試合 率.314 22本 71打点 2盗塁佐藤輝明(神)126試合 率.238 24本 64打点 6盗塁中野拓夢(神)135試合 率.273 1本 45打点 30盗塁
RP31 栗林良吏(C)
RP29 牧 秀悟(DB)<パ・リーグ>伊藤大海(日)23試合 10勝9敗0S 防御率2.90早川隆久(楽)24試合 9勝7敗0S 防御率3.86若林楽人(西)44試合 率.278 2本 10打点 20盗塁
RP10 早川隆久(E) 投手では伊藤将司と伊藤大海が2ケタ勝利を達成し、野手は佐藤輝明と牧秀悟が20本塁打をクリア。タイトルにも中野拓夢が盗塁王で輝いている。若林楽人も5月末に負傷で戦線離脱こそ余儀なくされたが、44試合で20盗塁だから、無事にシーズンを完走できていれば、盗塁王はほぼ確実だったろう。
高卒ルーキーに目を移しても、将来性豊かな逸材がそろう。オリックスはドラフト1位・山下舜平大、2位・元謙太、3位・来田涼斗がいずれも逸材と評価が高く、ヤクルト3位の内山壮真も高卒捕手ながら1年目から一軍デビューを果たし、イースタン・リーグでは山田哲人の1年目を超える8本塁打をマーク。さらにはフレッシュオールスターでも本塁打を放って、MVPを受賞した。中日1位の髙橋宏斗、3位の土田龍空も楽しみな存在だし、巨人には来季から背番号55に「昇格」する注目の超大型スラッガー・秋広優人がいる。
RP21 秋広優人(G) ドラフト制以降、ルーキー大豊作と言われたシーズンはいくつかあるが、その中でもこれほどの粒ぞろいはトップクラスではないだろうか。と、思って過去の成績を調べてみたら、とんでもない。さらに、上を行くシーズンがあった。
それらの中でも、まだ記憶に新しいのは1999年。20勝した巨人・上原浩治と16勝の西武・松坂大輔が両リーグの新人王に輝いたシーズンだ。2人以外のルーキーたちも多士済々で、主だった選手の成績は以下の通り。
<セ・リーグ>上原浩治(巨)25試合 20勝4敗0S 防2.09岩瀬仁紀(中)65試合 10勝2敗1S 防1.57福原 忍(神)54試合 10勝7敗9S 防4.09二岡智宏(巨)126試合 率.289 18本 51打点 8盗塁福留孝介(中)132試合 率.284 16本 52打点 4盗塁<パ・リーグ>松坂大輔(西)25試合 16勝5敗0S 防2.60川越秀隆(オ)26試合 11勝8敗0S 防2.68 さらに、ロッテは1位に小林雅英、2位に里崎智也がいたし、阪神1位は後に「火の玉ストレート」で名を馳せた藤川球児だった。下位指名にも横浜5位の金城龍彦、阪神6位の新井貴浩がいて、数年後には球界を代表する選手に成長していく原石が目白押しだった。
トルネード旋風の90年は圧巻のメンバー
この1999年すら凌駕していると思えるのが1990年だ。BBMカードが発行される前年のシーズンだが、この年は8球団競合の末、近鉄に入団した野茂英雄のトルネード旋風が吹き荒れたことで名高い。野茂の他にもキラ星のようなスター選手が続出しているので、こちらも比較のために主だったルーキーの1年目成績を掲載しておく。
<セ・リーグ>与田 剛(中)50試合 4勝5敗31S 防3.26佐々岡真司(広)44試合 13勝11敗17S 防3.15西村龍次(ヤ)31試合 10勝7敗1S 防4.06古田敦也(ヤ)106試合 率.250 3本 26打点 1盗塁<パ・リーグ>野茂英雄(近)29試合 18勝8敗0S 防御率2.91潮崎哲也(西)43試合 7勝4敗8S 防御率1.84酒井光次郎(日)27試合 10勝10敗0S 防御率3.46小宮山悟(ロ)30試合 6勝10敗2S 防御率3.27石井浩郎(近)86試合 率.300 22本 46打点 1盗塁 この9選手だけでも相当なメンバーだが、他にも大洋1位で、この年16試合に登板していた佐々木主浩や日本ハム2位には90年代後半のエース・岩本勉がいた。下位指名組では広島4位の前田智徳が出世頭で、来季から日本ハムの新監督に就任する“ビッグボス”新庄剛志が阪神5位で西日本短大付高から入団していたのも特筆に値する。
そして、今でもドラフト史上最高の大豊作と評価されているのが、1969年のルーキーたちだ。野手では山本浩二、福本豊、加藤秀司、有藤道世、大島康徳が2000安打を記録し、投手では山田久志、東尾修が200勝を達成した。実に7名の名球会メンバーを擁し、この他にも田淵幸一、星野仙一など球史に燦然と輝くスター選手を輩出している。
しかし、意外なことに、ルーキーイヤーの活躍度に限って見れば、90年や99年、そして今年の新人たちの方がはるかに優れているのだ。上記の選手を含む、69年の主な新人の成績は以下の通り。ちなみに、この年の新人王はセ・リーグが田淵幸一で、パ・リーグは有藤道世だった。
<セ・リーグ>星野仙一(中)49試合 8勝9敗 防3.12田淵幸一(神)117試合 率.226 22本 56打点 1盗塁山本浩二(広)120試合 率.240 12本 40打点 9盗塁大島康徳(中)試合出場なし<パ・リーグ>山田久志(急)7試合 0勝1敗 防5.40東尾 修(西)8試合 0勝2敗 防8.40金田留広(映)59試合 18勝13敗 防3.63有藤道世(ロ)108試合 率.285 21本 55打点 4盗塁大橋 穣(映)122試合 率.217 8本 31打点 7盗塁加藤秀司(急)9試合 率.125 0本 0打点 0盗塁福本 豊(急)38試合 率.282 2本 4打点 4盗塁 もし、この69年に「ルーキーエディションプレミアム」のようなカード商品があれば、直筆サインカードの人気は、東京六大学リーグで長嶋茂雄の通算本塁打記録を塗り替えた田淵幸一と、先発、リリーフにフル回転で18勝を挙げ、金田正一の実弟というバックボーンもあった金田留広に集中していたのではないだろうか。金田はオールスターにも出場し、打席に立った兄・正一と対戦するなど、話題性は抜群だった。
そこから敷衍して考えると、今年のルーキーたちにしても、このコラムで名前を挙げなかった選手たちの中に、数年後のスーパースターが潜んでいる可能性も十分にあるはずだ。カードファンの皆さんも、自分なりの視点でルーキーに注目し、その選手のカードを大切にコレクションしておいていただきたい。5年後、10年後に想像以上の選手に成長し、カードの価値が大きく上がっているかもしれないのだ。そして、それこそがルーキーカードの面白さであり、カードコレクションの醍醐味でもある。
この月末には、プロ野球史を彩ったルーキーたちを特集した「ルーキー伝説」も発売されるので、そちらもお楽しみに。