close

2018-11-22

【JXBトーナメント準決勝展望】 強さの中核、DLは準備万端=オービックシーガルズ

社会人アメリカンフットボール・Xリーグは、11月25日にジャパンXボウル(JXB)トーナメントの準決勝がある。富士通スタジアム川崎では富士通フロンティアーズとオービックシーガルズが対戦する。6年連続でポストシーズンで顔を合わせている両チーム。まずはオービックシーガルズの今を直近のゲームから探ってみた。

【オービック vs ノジマ相模原】37歳の誕生日を迎えたオービックDLケビン・ジャクソンを祝う、ビーティー・ジュニア(左)、三井(右)らディフェンスのチームメートたち=2018年11月10日 撮影 Yosei Kozano

11月10日のJXBトーナメント準々決勝、ノジマ相模原ライズ戦。序盤に良い形で先制、追加点となるタッチダウンを決め、主導権を握ったオービックだが、ディフェンス的にはらしくない形が続いていた。ノジマ相模原のパスオフェンスを断ち切れないのだ。

筆者の私見だが、ノジマ相模原のQBジミー・ロックレイは、今季のXリーグでは、最もパスのうまいQBだ。コントロールがよく、クイックリリース、しかも肩がとても強く、生きたボールを投げる。この試合でもそれが存分に発揮されていた。

第1クオーター(Q)にはWR出島崇秀に74ヤードのロングパスを決め、第2Qにはブラインドサイドから激しいパスラッシュを受けながら右にロールして55ヤードの弾丸パスをエンドゾーン内のWR秋山光にヒットしTDを決めた。

極めつけは前半の2ミニッツオフェンス。残り1分30秒、自陣25ヤードをドライブ。長身TE伊津野文人に絶妙にコントロールされたパスでTDを奪うと、ポイントアフタータッチダウンでも、伊津野に2ポイントコンバージョンを決めた。

【オービック vs ノジマ相模原】ノジマ相模原QBロックレイにプレッシャーをかけるオービックDLケビンジャクソンと三井=2018年11月10日 撮影 Yosei Kozano

ロックレイのパスは前半だけで267ヤード2TD。成功率は55%と高くはなかったが、要所でロングパスを通された。前半の終わり方としても、ノジマ相模原としてはベストで、3点差は無いに等しかった。

しかし、オービックディフェンスの底はそんなに浅くはなかった。後半のノジマ相模原オフェンス、最初のパスをバイロン・ビーティー・ジュニアがジャンプしてカットした。このプレーをきっかけに、オービックのDLがアクセルを踏み込んだ。

【オービック vs ノジマ相模原】ノジマ相模原OLのパスプロテクトを破って、QBロックレイを狙うオービックDLビーティージュニア=2018年11月10日 撮影 Yosei Kozano

特別なディフェンスを仕掛けたわけでもなく、いつものような4DLの隊形だ。ただサードダウンでは、ビーティー・ジュニアやケビン・ジャクソン、ルーキー佐藤将貴らDEに加え、インサイドにも三井勇洋、江頭玲王、中田善博らがセットした。

オービックDLの強みは、パスラッシャータイプの選手でも、ランにも強いところだ。元々はLBのビーティー・ジュニアや三井が強いタックルでランを止めた。勢いが増したディフェンスに、ロックレイは前半と同じタイミングではパスが決めらなくなった。

ノジマ相模原オフェンスは後半4ドライブ連続で3&アウト、わずか6ヤードしか進めなかった。その中には味方ディフェンスがインターセプトでチャンスを作ってくれた2シリーズも含まれていた。

オービックは後半の喪失は84ヤードだったが、65ヤードは、勝負がついた24点差の残り1分5秒からのドライブで失ったもの。後半は事実上、完封に近かった。

【オービック vs ノジマ相模原】ノジマ相模原QBロックレイをタックルするオービックDL江頭=2018年11月10日 撮影 Yosei Kozano

古庄直樹ヘッドコーチは「一発のあるQBなので、ある程度はやられることは覚悟していた。ただ前半最後の8点が、良くない取られ方。そこからハーフタイムで立て直して、(前回負けた)リーグ戦とは違うところを見せられたのは良かった」と振り返った。

パスラッシュは、前半を抑え気味にして「我慢して、セカンダリーの部分でいろいろと動いて」守っていた。「ディフェンスには、この試合いろいろと考えさせる部分を多くしていた。後半はそこをシンプルにした」という。

試合後、この日が誕生日だったケビン・ジャクソンを、DLユニットを中心に皆で「ハッピー・バースデー・ツー・ユー」を歌って祝った。KJはQBサックこそなかったが、鋭いプレッシャーをかけて3タックル。37歳とは思えない動きでユニットをけん引した。古庄HCも「年齢を重ねると、確かに回復力は落ちたりはするが、ああやってやり続けている限り、パフォーマンスは上がっていく」と信頼を置く大黒柱だ。

この日2サックで18ヤードをロスさせた三井、ルーキーながら日本人離れしたパワーを見せる佐藤ら、今のオービックDLはベテラン、若手が噛み合ったとてもいい状態だ。大きな負傷者がなく、人材が豊富でローテーションできるため、30代の選手もフレッシュな状態をキープできている。この試合の後半で見せた、強くアグレッシブなディフェンスの中核は、やはり強力なDLだ。

【オービック vs ノジマ相模原】ノジマ相模原RB東松に、群がってタックルするオービックディフェンス陣=2018年11月10日 撮影 Yosei Kozano

準決勝の相手、富士通オフェンスは、今季記録破りの快走を見せたRBトラショーン・ニクソン、シーズンが深まるにつれパスの精度が上がってきたQBマイケル・バードソンの強力コンビを、リーグ随一の強力OLが守る。オービックDL陣にとっては最強の相手となる。

オービックは、オフェンスも、QBスカイラー・ハワードがパス成功率5割とまだ本調子ではないが、そんな状態でもパスで4本、ランで1本と、チャンスでTDを取り切る勝負強さは流石だ 。

富士通とは、6年連続でポストシーズンに激突する。古庄HCは「富士通戦は、我々だけじゃなく、ファンも含めいろいろな人たちが楽しみにしてくれるカード。今の我々のチームがどれくらいのものか、この戦いで全部出したい」。チームの仕上がりに手ごたえを感じている。

【写真・文:小座野容斉】

【オービック vs ノジマ相模原】ノジマ相模原QBロックレイをタックルするオービックLB寺田=2018年11月10日 撮影 Yosei Kozano

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事