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2021-11-30

【BBMカードコラム】#2021-26「2021BBMベースボールカード オリックス・バファローズヒストリー1936-2021」/ドラフト10位指名の本塁打王で思い出した、ドラフト9位指名の強打者のこと

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BBMカードの編集担当が担当アイテムについて思うところを記す当連載。
今回は「2021BBMベースボールカード オリックス・バファローズヒストリー1936-2021」について語ります。



指名拒否を繰り返した強打者が翻意した理由
 誰がこの戴冠を予想していたでしょうか。昨年まで5年間で9本しかホームランを打っていなかった杉本裕太郎が32発で本塁打王に輝いたのです。それにしても「ドラフト10位入団の選手が本塁打王」という字面はものすごいインパクトです。

No.90 杉本裕太郎
No.90 杉本裕太郎

 これまでのドラフト下位指名選手の本塁打王というと79、82、84年の掛布雅之(阪神=73年のドラフト6位)、05年の新井貴浩(広島=98年のドラフト6位)がありましたが、それらを上回る史上最も低い指名順位からの戴冠となったのです。

 他のタイトルを見渡しても、71年の新人王・関本四十四(巨人=67年のドラフト10位)、76年の首位打者・吉岡悟(太平洋=67年東京のドラフト10位)がある程度。

 また、杉本は今季オールスターにも初出場を果たし、第2戦でホームランを放ったのですが、これは77年のオールスター第3戦で本塁打した島谷金二(阪急=68年中日のドラフト9位)の記録を44年ぶりに塗り替える、史上最も低い指名順位の選手の球宴本塁打となったのでした。

 ここで名前が発掘された島谷の指名順位が9位だったのは決してその評価が低かったからではないのです。四国の名門・高松商から四国電力に進んだ島谷は社会人3年目の65年の第1回ドラフトでサンケイ(現・ヤクルト)から9位指名を受けながらもこれを拒否。続く66年は東映(現・日本ハム)の2位、67年は東京(現・ロッテ)の3位をこれまた拒否。

 プロからも、そこそこ高い評価を受けながら3年連続で指名拒否ということで、翌68年ドラフトでは他球団が指名を見送る中、中日が突如9位(全体104番目)で島谷を指名します。

 実は同年秋に巨人・東映で優勝9度の名将・水原茂が中日の監督に着任することになったのですが、この水原監督が高松商出身だったのです。さらに水原の腹心として東映時代にヘッドコーチを務めていた西村正夫がスカウトとして中日に加わりますが、これまた高松商出身。指名拒否を繰り替えす島谷でも、高校の大先輩である自分たちが声をかければ翻意するかもと考え“ダメ元”で指名したのが、この9位指名だったのではないでしょうか。そして、偶然にもこのタイミングで島谷がプロ入りに心変わりしていたようで、4度目の指名でついにプロ入りがなります。

2021BBMベースボールカード 中日ドラゴンズヒストリー1936-2021 No.15 島谷金二
2021BBMベースボールカード 中日ドラゴンズヒストリー1936-2021 No.15 島谷金二

 ここで、西村について詳述しておきますが、彼は高松商から関西大を経て阪急の契約第1号選手として入団。戦前・戦後の43~44、46~47、54~56年は監督を務め、監督退任後もコーチを務めていた、ある意味“ミスター阪急”とも呼ぶべき人物なのですが、60年オフに高松商の先輩・水原が巨人監督から東映監督に転じると、その誘いに乗って西村も東映に移籍します。阪急ひと筋でやって来た人物が同一リーグのライバル球団に移るというのは大変不思議な行動ですね…。

 水原監督は71年限りで退任しますが、その後西村は74年に二軍監督として阪急に復帰。80年までそれを続け、ユニフォームを脱いだ後はフロントに転じ、チームを支え続けます。

 一方、ドラフト9位で中日入りした島谷は水原監督の期待によく応え正三塁手となり、74年の優勝にも貢献。全130試合に出場した75年にはゴールデングラブに輝きます。ところが、76年オフに稲葉光雄・大隅正人・島谷と戸田善紀・大石弥太郎・森本潔・小松健二という3対4の大型トレードで島谷は阪急に転じます。このトレードに西村の関与はあったのでしょうか。

 翌77年の島谷はリーグ2位の打率.325をマークし、同年から3年連続のゴールデングラブ、78~79年から2年連続のベストナインと活躍を加速させたのです。かくして、島谷は「中日ドラゴンズヒストリー」にも「オリックス・バファローズヒストリー」にも登場するレジェンドプレーヤーとなったのでした。(しゅりんぷ池田)

No.30 島谷金二
No.30 島谷金二

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