8日、東京・後楽園ホールで行われたスーパーライト級4回戦で、キックボクシング無敗(12勝8KO)のREBELS60kg級元王者・鈴木宙樹(すずき・ひろき、25歳=FLARE山上)が、山口拓也(36歳=ワールド日立)に初回2分26秒KO勝ちした。写真_山口裕朗
第三者目線では“場慣れしている”落ち着きを感じたが、「前の試合がずっと早い回のKO決着で来ていたので、実はアップもできなかったんです」と、やや焦った状態でリングに上がったのだという。
変則スイングを持ち味とする山口を左でコントロール しかし、ゆったりとした足運びから丹念に左を突いて、変則的な動きが持ち味の山口をコントロール。そこから瞬間を切り裂くような切れ味鋭い右ショートをスパンと打ち下ろし、見るものをゾクッとさせた。
パンチは力ではなく、タイミングとスピードの変化で打つ。空手、キックと格闘技に専心してきたからこそ、その真理を理解しているのだろう。
1分30秒。スピーディな左ダブルから右ストレート、いわゆるワンワンツーから左フックを返す。右が効いたのだろう山口はキャンバスに腰を下ろす。立ち上がった山口を、ここでも力技で仕留めにいかない。獲物を悠然と追い込むように、ゆったりとプレスをかけていくと、左ボディブローからふたたび右で倒す。ここでも立ってきた山口だったが、ダメージを見て取ったレフェリーはテンカウントを数え上げた。
父がペルー人で母が日本とロシアのハーフ。弟はRIZINで活躍する千裕(ちひろ)で、この鈴木兄弟はなかなかの知名度だ。
「心はサムライ」と言う鈴木は、生粋の日本人で非常に美しい日本語をユーモアたっぷりに話す。「ボクシング界を華やかにしたい」という想いも持っており、軽妙な話しぶりでも人気を獲得しそうだ。
力任せではない右ストレートだからこそ、タイミングをつかめる 拳を捻り込んで打つ伸びのある右ストレートは、「ホルヘ・リナレスさんを研究して学んだもの」。そして「ゆくゆくは憧れのリナレスさんと戦いたい」と夢を語る。先日、そのリナレスとさる場所で遭遇した際に想いを伝えると、「じゃあ、いまやる?(笑)」と、憧れの人もファイティングポーズをとって、笑顔でノッてきてくれたのだという。
赤井祥彦会長によれば、「来年の新人王戦に出しますが、その前にもう1試合させたい」。だが、実績と戦いぶりから、対戦相手探しには苦労しそうだ。
思いきりのいい右を打ち込む鯉渕計4度のダウンを奪ってTKO勝ちした鯉渕 メインイベントとして行われたライト級8回戦は、鯉渕健(25歳=横浜光)が宮本知彰(みやもと・かずあき、28歳=一力)から初回に3度、2回に1度の計4度のダウンを奪って2回1分TKO勝ち。
立ち上がりはバランスを整えた丁寧なボクシングで、サウスポーの宮本と向かい合ったが、やや沈みながら放ったワンツーでダウンを奪うと、一気にヒートアップ。左右のスイングと、持ち前のフィジカルを前面に出し過ぎて、ダメージを引きずる宮本を一気に攻め落としてしまった。
鯉渕は13戦7勝(6KO)5敗1分。宮本は14戦7勝(6KO)7敗。
文_本間 暁