9日、東京・後楽園ホールで行われた54.5kg契約6回戦は、元Kー1世界王者・武居由樹(25歳=大橋)が、5戦5勝5KOの竹田梓(24歳=高崎)を初回2分57秒TKOに下し、3月のデビュー戦に続き、連続初回KO勝利を収めた。
文_本間 暁 写真_小河原友信
わずかな時間の中にも、スリリングな攻防がたっぷりと詰まっていた。
サウスポーで距離を遠く位置取る武居が、「前の手の使い方が上手くなった」と自認する右をゆったりと突き、続けて左ストレートを放つ。と、これに対し、どっしりと構えていた武田は左フックを狙う。ファーストコンタクトでタイミングを合わせてくる竹田の能力の高さが窺い知れた。
しかし、Kー1など格闘技キャリア満載の武居は、まったく臆する素振りを見せない。遠目から飛びかかるようにして放つ派手な右フックを見せておき、なおも左ストレート。竹田の左フックがタイミングよくヒットするが、やや顔面を逃がしていた武居はここで左ストレートをリターンする反応の鋭さを見せた。左フックを合わせた竹田も大したものだが、この反応、避け勘、そして度胸と、武居はレベルの違いを感じさせた。
独特のタイミングを持つ武居の右フック そして、右、左ボディストレートと見せておき、死角から巻き込むようにして打ち込む右フック──。これが左顔面を痛打すると、竹田は横倒しに。立ち上がったものの、足元は定まらず、レフェリーが試合を止めた。
試合を決めた右フックは、先のワンツーからの流れでいうと、0コンマ何秒か、タイミングが遅れてくるように感じた。それはナチュラルタイミングでもあるのだろうが、八重樫東トレーナーとの丹念なミット打ちで培ったタイミングでもあるはず。デビュー戦に続き、ポイントをハードヒットできる当て勘も優れている。それに加え、ワンツーで体の中心を意識させておき、竹田の意識と視野の外から打つ。竹田は、なにをもらって倒れたのかわからなかっただろう。
「まだまだボクシング仕様に変えないといけないところがある」と武居。だが、蹴りあり時代の遠い間合いや、独特のタイミングは武居にしか持ちえないもの。その利点を充分に把握している八重樫トレーナーがいるのだから、敢えて言うまでもないが、それらの特性は保ちつつ、さらに進化してほしい逸材だ。
安達の右アッパーがこの日はよく機能した セミファイナルは69.0kg契約8回戦。3月に日本ユース王座決定戦で小畑武尊(こばた・たける=ダッシュ東保)に初回TKO負けを喫した日本ウェルター級13位・安達陸虎(あだち・りくと、25歳=大橋)が、近藤哲哉(24歳=横田スポーツ)に78対74、76対76、77対75の2-0判定勝利。
KO負けショックが少なからずあったろう安達は、序盤は左ジャブを丁寧に打って、慎重に戦った。右の相打ちや左フックを豪快に狙う近藤の迫力にやや押された場面もあったが、徐々にリズムや柔軟さ、シャープさを取り戻すと、左ボディフックで意識を集めておいて、右アッパーを再三再四、ヒットした。
近藤はこれを食って何度もガクっと腰を落としかけたが、ダウンだけは拒否。最終回には猛然と攻めるシーンも見せたが、安達は落ち着いて防御し、反撃を見せた。
試合中にトラウマを払拭していき、本来のテンポの良い。シャープな攻撃を披露した安達は18戦15勝(11KO)3敗。敗れた近藤の戦績は10戦6勝(4KO)4敗となった。