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2021-12-12

【ボクシング】まさにフルコースのロマチェンコ劇場! 元王者コミーを完璧にシャットアウト

“気”を発さずに打つロマチェンコの右

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 11日(日本時間12日)、アメリカ・ニューヨークのマディソン・スクエアガーデンで行われたライト級12回戦は、元世界3階級制覇(ライト級統一)王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が、元IBF同級王者リチャード・コミー(ガーナ)から7回にダウンを奪う完勝。117対110、119対108、119対108の3-0判定を収めた。

写真_ゲッティイメージズ Photos_GettyImeges

 前に出す右腕を上下動したり、くるりと回したりしてリズムを取るのみだったロマチェンコは、開始1分を過ぎると、キャンバスを滑るようなステップから、元王者を攻めだした。わずか60秒、コミーに手を出させただけで、すべてをインプットできたということなのだろう。

 先ごろ統一王座を失ったテオフィモ・ロペス(アメリカ)に衝撃的なKO負けを食ったコミーは、その印象が強いものの、危険なハードパンチを備える。ロマチェンコの接近際に右ボディアッパーを差し込むなど、“ロマ対策”は万全だったよう。

 しかし“ハイテク”ロマチェンコの対応力とそのスピードは速い。得意の右サイドへの回り込みを多用して死角からの攻めを増やし、コミーにボディを打たせない。細かく、タイミングを変化させる連打を随所に決めて、ロマチェンコの打ち終わりに右や左フックをリターンするコミーの攻め手も奪った。

7回、コミーを痛烈に倒したロマチェンコ。だが、元王者は「母国と国民のために戦い続けた」
7回、コミーを痛烈に倒したロマチェンコ。だが、元王者は「母国と国民のために戦い続けた」

 7回が最大のハイライト・ラウンドだった。ボディブローから顔面への左ダブルでコミーを後退させたロマチェンコは、ロープを背負う元王者に右フック、そしてステップで空間を築いての左ショートフック一閃。コミーをキャンバスに倒す。
 カウント中、コミーのセコンドへ何かをアピールしたロマチェンコ。試合続行となり、コーナーに詰めて連打を仕掛けて、ふたたびコーナーに何かを叫んだ。
 試合後、アナウンサーに訊ねられたロマチェンコは、「彼にとって、この戦いはもう厳しいと思ったから、止めたらどうか?とアピールしたんだ」

 その後のラウンドは、コミーのダメージを考慮したかのように、顔面へは軽い連打を多様。ボディ攻めを増やし、必死に大逆転の一打を狙うコミーの攻撃を、鮮やかな防御技術でかわしきった。

コミーの右ストレートを、ダメージングポイントを外して受けるテクニック!
コミーの右ストレートを、ダメージングポイントを外して受けるテクニック!

 距離感、ヘッドスリップ、腕伸ばし、グローブでの弾き、インサイドでの頭の位置、前後左右に無駄なく動いてのポジショニング……。世界最高峰のディフェンス・テクニックは、何度見ても参考になる。

「このクラス(ライト級)でアンディスピューテッド(紛れもない)王者になりたいのか?」と訊ねられた“ハイテク”は、「もちろん!」と即答すると、「4本のベルトがほしいね」と笑顔で答えた。ロペスを番狂わせで破った統一王者ジョージ・カンボソス(オーストラリア)、WBA王者デビン・ヘイニー(アメリカ)との対戦が期待される。

 ロマチェンコの戦績は16勝(11KO)2敗。コミーの戦績は30勝(27KO)4敗。

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