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2021-12-21

【箱根駅伝の一番星】祖父と親友との悲しい別れを乗り越え、日体大の盛本聖也は「往路で藤本に負けない走りを」

3年目に日体大のエース格に成長した盛本聖也

陸マガの箱根駅伝2022カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。3年目でようやく頭角を現し、エース格に成長した日本体育大の盛本聖也(3年)。充実した表情で箱根駅伝の準備を進めているが、いくつも困難の壁を乗り越えたからこそ今があるという。

「絶対に箱根を走る」の思いで今季復活

 入学当初は注目のルーキーとして迎えられ、1年目から箱根駅伝のメンバー入り。出走こそしなかったものの、将来を嘱望される存在だった。当然、2年目は大きな飛躍を期待されたものの、予期せぬ事態が重なり、調子を大きく崩してしまう。

 少年時代から陸上に情熱を注ぐ盛本を一番応援してくれていた大阪の祖父が他界。ショックに打ちひしがれていると、2年時の夏には地元の奈良で中学校3年間、一緒に陸上に打ち込んだ親友がバイクで事故死。さすがに精神が不安定な状態になってしまった。

「祖父のためにも、親友のためにも、走らなあかんと思って、自分を追い込みすぎてしまいました。それで、腰を痛めて……。治り切らないなかで焦って練習してまた故障です。もう悪循環でした。走ってもワーストタイムを出すし、どん底でした」

 2年目の箱根駅伝も補欠どまり。そして、迎えた21年の1月、新チームがスタートするときに心機一転。改めて覚悟を決めた。

「絶対に箱根駅伝を走る」

 考えて練習に取り組むようになり、質をとことん追い求めた。シーズン前半は思うようにタイムが出なかったものの、焦ることはなかった。夏合宿で地道に練習を積み、しっかり基盤を築いた。

 すると、秋以降は結果に結びつき始める。10月に5000mで初めて14分を切り、13分56秒42をマーク。10000mでも29分02秒98と自己ベストを更新し、自信をつかんだ。2年生までは山下りを希望し、6区で2年連続区間新を出したOBの秋山清仁(現・愛知製鋼)の走りも研究していたが、今年度は往路区間に意欲をのぞかせる。

「チームのために前半区間を走らないといけないと思っています。チーム目標のシード権を獲得するためにも、シード圏内の10位以内でタスキをつなぎます」

 冬風が吹く日体大の練習場でもメラメラと闘志を燃やしている。競り合いになれば、意地でも食らいつく。ライバルに負ける気は一切ない。

「『一番勝ちたい人は?』と聞かれれば、間違いなく同期の藤本珠輝と答えます。中学校の頃から同じ近畿地方で切磋琢磨してきました。いまは少し差をつけられていますが、勝ちたい思いは消えていません。負けたくないです」

 箱根路ではエース以上に大きなインパクトを残すつもりだ。


全日本大学駅伝では2区を任され、区間16位。学生三大駅伝で貴重な経験を積んだ

もりもと・せいや◎2000年11月4日、奈良県生まれ。170㎝・53kg、A型。橿原中(奈良)→洛南高(京都)。洛南高では3年連続都大路に出走し、3年時に2区4位。日体大入学後は不振に苦しんだが、3年生の今季、5000m13分56秒42、10000m29分02秒98、ハーフ1時間03分36秒(すべて2021年)と3種目で自己記録を更新。箱根予選会では藤本珠輝(3年生)に続いてチーム2番手に入った。全日本大学駅伝で学生三大駅伝にデビューし、2区16位。

文/杉園昌之 写真/桜井ひとし、中野英聡

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